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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科28巻1号

1973年01月発行

雑誌目次

特集 外科と大腸—癌とポリープを中心に

大腸ポリープについて

著者: 渡辺晃 ,   奈良坂俊樹 ,   上江洲ジユリオ ,   今井大

ページ範囲:P.19 - P.30

はじめに
 われわれの内科では,1958年以来,腸症状を訴えて訪れる患者のルーティン検査の1つとして直腸鏡検査を実施し,直腸鏡到達部位に意外に多くのポリープを発見している.また,結腸ファイバースコープ検査が実用に供せられるようになった1969年以来,この方法をも併用することにより,直腸鏡非到達部位においてもかなり多くのポリープを発見している.しかも,直腸鏡やファイバースコープ直視下に生検や細胞診を併用することにより,その肉眼的性状のほか,その組織学的所見についてもかなり正確な観察を行なつている.
 一般に,大腸に発生する有茎性球状または広基底性半球状の隆起物を大腸ポリープと称するが,そのなかには腺腫性ポリープ,絨毛腺腫または乳頭腺腫,過形成性ポリープ(Laneら)または化生性ポリープ(Morson),若年性ポリープ,炎症性ポリープまたは偽性ポリープなどがあり,また家族性大腸ポリポージス,Gardner症候群,Pe-utz-Jeghers症候群,Cronkhite-Canada症候群などの特殊な疾患に属するものも含まれている.しかもこれらのあいだには癌化についての差異が認められているので,大腸ポリープを発見したら,内視鏡直視下生検などによりまずポリープの種類を診断し,その後に,それぞれに応じて適切な治療方法を講ずることが必要と考えられる.

大腸のポリープおよびポリポージスと取扱い

著者: 北条慶一

ページ範囲:P.31 - P.38

はじめに
 近年,内視鏡やレントゲン検査による診断技術の進歩により,大腸のポリープ・ポリポージスが発見される機会がふえ,また大腸のいかなる部位でもファイバースコープ下で,生検による組織診断,さらにポリープ切除も可能となりつつある.
 また,従来からのポリープと癌との関連についての議論1)のほかに,とくに,大腸の家族性ポリポージスにおける結腸全剔と自然肛門の保存に関する是非がMoertelらの報告2)(1969)によつて再び医学上のコントラバシイの一つとなつてきた.
 ここに,大腸のポリープ・ポリポージスを癌化の問題や治療の面について,私どもの経験および,文献的な考察を述べてみたい.

Polypectomyか,腸切除か

著者: 山田栄吉 ,   花岡農夫

ページ範囲:P.39 - P.43

はじめに
 消化管ポリープの定義・分類およびその癌化については,いろいろの意見と議論があつて不明瞭の点が多いが,消化管ポリープは日常しばしば経験するばかりでなく,良性ポリープといえども,組織学的に単純な粘膜の増殖像からいろいろの段階を示す癌への移行像がみられ,しばしばその尖端に限局する小癌巣があるなど,臨床家にとつて簡単にポリープとして看過することはできない.
 従来大腸癌は欧米に比べ本邦では少ないが,最近とみに大腸癌の増加傾向がうかがわれ注目されていることは周知のところである.同時にまた大腸癌特に直腸癌早期例は,ポリープ癌の如き隆起性のものが大部分を占めていることも内外共通した事実として注目されていて,われわれ臨床家にとつて,その取り扱い方には一層の注意と慎重さが必要である。

大腸ポリポージス,その悪性化の問題と治療法の検討

著者: 瀬川安雄 ,   土屋和弘 ,   山本恵一 ,   卜部美代志

ページ範囲:P.47 - P.60

はじめに
 昭和29年(1954年)以降私どもの教室において切除された結腸・直腸のポリープの症例を総括し,これらの経験に徴して,結腸・直腸ポリープの癌化の問題に考察を加え,かつ,その治療方針に言及する.
 腸管のポリープとは,肉眼形態学的に,いわゆる,ポリープ状,きのこ状に腸管内腔に向つて凸出した腫瘤の総称である.この名称のうちには,腺腫,脂肪腫,筋腫,線維腫などの腫瘍性新生物や,炎症性機転による粘膜の過形成性腫瘤など多種類のものが含まれている.しかし,ここでは結腸・直腸に発生したポリープのうち,臨床的に遭遇することが最も多く,かつ,その癌化について問題を残している腺腫性ポリープのみをとり上げて論ずることにしたい.

家族性大腸ポリープ症—本邦最大の一家系と本症の概論

著者: 宇都宮譲二 ,   岩間毅夫 ,   鈴木宏文 ,   浜口栄祐

ページ範囲:P.61 - P.73

はじめに
 今日までに本邦において報告された家族性大腸ポリープ症(びまん性大腸ポリープ症)のうちで最も大きい家系を経験したので,その臨床所見ならびに家系分析の結果について報告すると共に,本症に関するいくつかの問題点について概説を試みた.

右半結腸の癌手術法

著者: 西島早見

ページ範囲:P.75 - P.82

はじめに
 結腸癌は欧米においては発生頻度も高く重要な癌性疾患であるが,本邦においては胃癌や直腸癌などに比し頻度が低いこともあつて従来医家の関心は少ない傾向にあつた.しかし,近時生活様式の欧米風化とともに結腸癌症例は増加傾向を示し,また内視鏡的診断法の進歩とあいまつて諸家の注目を集めてきた.
 元来,結腸癌は組織学的には比較的良性に属し限局性発育を営む傾向が強く,かつ結腸は腹腔内において比較的短かい結腸間膜をもつて被覆されてはいるが,血管やリンパ管系はおおむね分節状に配列されているので外科的治療に適している臓器と言えよう.

左半結腸の癌手術法

著者: 吉雄敏文 ,   蔵本新太郎

ページ範囲:P.83 - P.91

はじめに
 結腸癌は欧米に比較してわが国には少ないとされてきたが,最近の報告をみると胃癌頻度はほぼ平行線を保つているのに対して,結腸癌の頻度は上昇傾向を示している.さらに以前は,わが国においては左半結腸癌より右半結腸癌が多いとされた時期があるが,部位別頻度は欧米と同様に左半結腸とくにS状結腸に高いことが明らかにされてきた.臨床外科医が今後左半結腸癌に遭遇する機会は,さらに増加すると思われるので,手術成績を向上させるような手術法はいかに行なわれるべきかを文献的考察を加えながら,手術法の実際について述べてみたい.手術成績の向上といつても,現時点ですでにわが国の結腸癌手術成績は欧米に比肩するところまできており,今後の向上の可能性は数%にすぎないであろうが,たとえ1%でも向上に努力することが外科医の努めであろう.

大腸癌手術と合併療法

著者: 高橋孝 ,   山田粛 ,   西満正

ページ範囲:P.93 - P.100

はじめに
 大腸癌は消化器癌の中でも予後の良い癌であるが,肝臓転移,腹膜播種,局所再発,全身性転移なども少なくない.合併療法は好むと好まざるとにかかわらず,われわれの努力しなければならない分野である.
 はじめに,大腸癌治療法の歴史を述べ,合併療法の位置づけをし,合併療法の種類を説明したのちに,癌研外科の症例の検討を行なう.

カラーグラフ

大腸の内視鏡診断

著者: 田島強

ページ範囲:P.8 - P.9

 大腸の内視鏡検査は解剖学的制約が大きく,1957年松永らによりSigmoidocameraが開発されるまでは,StraussのRectoscope以来半世紀以上に亘つてほとんど進歩がみられなかつた.このSigmoidocameraによりS状結腸上部とそれを越えた深部の内視鏡的観察が可能となり,さらにColonofiberscopeの実用化により長大な大腸はもちろん回腸末端部までの観察が容易に行なえるようになり,大腸疾患の診断は飛躍的に向上した.
 第1図はColonofiberscope本体であり,第2図はその検査光景である.検査の方法は省略するが,前方の管腔を観察しながら挿入をすすめるという簡単な原則さえ守れば,誰にでも容易にかつ安全に行なえる検査である.

グラフ

大腸のX線診断—癌とポリープを中心に

著者: 矢沢知海 ,   永井公大 ,   鈴木重孝

ページ範囲:P.11 - P.17

はじめに
 食生活が欧米なみになつたことが原因かと思われるが,最近,大腸疾患は本邦に於いても増加の傾向にある.この必要に応じて診断部門も,注腸二重造影法の改良,Fibercolonoscopeの開発,さらに生検検査法などその進歩は目をみはらせるものがある.そしてこれらの検査法は一連の診断経過であるが,患者をみた際,最初は問診により症候学的に大腸疾患を予想し,直腸指診で到達できる所はこれで確診を得るが,検査としての第一歩は何といつてもX線検査より始まる訳である.
 ただ,大腸は胃などに比して非常に長く複雑な走行を示す臓器であり,大腸のX線像といつても個々の症例に於て色々の型を示すとともに,重なりあつて,正常像とは何かという事さえ判断に苦しむ場合も少なくない.その上,前処置の良否がこの検査法の成否に大きく影響を及ぼしており,胃の検査に比して手間も要し,必ずしも容易なものではない.

クリニカル・カンファレンス

大腸ポリープをどうするか

著者: 牧野永城 ,   米沢健 ,   宇都宮譲二 ,   北条慶一 ,   吉雄敏文

ページ範囲:P.104 - P.123

≪症例≫
 患者:32歳,主婦.
 主訴:テネスムス.

論説

胸腺腫瘍の診断,治療上の問題点

著者: 片岡一朗 ,   林保 ,   三樹勝 ,   寺岡資郎 ,   矢島権八 ,   沖野光彦

ページ範囲:P.125 - P.133

はじめに
 胸腺については,その機能的意義について長く不明の点が多かつたが,移植免疫や組織免疫などの分野からの研究と相俟つて,胸腺異常と各種疾患との関連の解明が行なわれつつある.
 従来,胸腺が臨床的に問題とされた主な点は胸腺リンパ体質と胸腺腫についてである.前者については既に副腎皮質不全との関連から否定的であるが,後者,すなわち胸腺腫については,悪性度の高率なこと,ことにその病理の複雑性により分類方法にも統一性を欠き,病理組織学的所見と臨床経過が必ずしも平行でないこと,などから日常の診断治療上からも,縦隔腫瘍の1つとして忘れることのできない疾患である.

幼小児の直腸・結腸にみられる若年性ポリープ

著者: 戸谷拓二 ,   中川潤 ,   田淵勝輔 ,   岡島邦雄

ページ範囲:P.135 - P.143

はじめに
 近年幼小児の結腸ポリープの大半は,若年性ポリープjuvenile polypであり,血便を主訴とする小児疾患の比較的重要な位置を占め,悪性化のないこと,自然脱落のあることなどが指摘されるようになつてきた1-9)
 ふつう小児の結腸ポリープに関してはnon neoplasticと考えられる若年性ポリープとneoplasticである1)2)腺腫性ポリープ,家族性ポリポージス,Peutz-Jehger症候群,Gardner症候群などに区別されるようであるが,若年性ポリープ以外は悪性化の問題やその他の理由で,かなり積極的な治療方針がとられている2)3)4)

症例

若年者結腸癌の1例

著者: 田村欣一 ,   登政和 ,   本名敏郎 ,   村上不二哉 ,   水野克己

ページ範囲:P.145 - P.147

はじめに
 今日では,消化器癌のうちでは食道癌や胃癌については早期発見・早期手術が次第に徹底されつつあり,従つて良い成績をあげつつある.結腸癌についてはその存在部位が広範囲であること,症状が多様性であり一定しないこと,年齢層が幅広いことなどから十分な成績が得られない現況である.若年者の結腸癌それも10歳台の症例はきわめて少なく,その性質上不幸な転帰をとる場合が多い.われわれは最近17歳男子の横行結腸癌症例を経験したので報告し参考に供したい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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