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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科28巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

特集 今日の救急

救急手術を要する脳疾患

著者: 赤木功人 ,   最上平太郎

ページ範囲:P.171 - P.177

はじめに
 救急手術を要する脳疾患は,大抵の場合に診断がはつきりつかないまま各科を転々とし,また誤診の結果等により,かなり進行した状況下ではじめて脳神経疾患であることがわかつて,専門医にまわされてくるためのものが多い.ことに小児では十分検査がやりにくいこともあつて,脳腫瘍を胃腸障害と誤まられる場合が多く,また髄膜炎が他の熱性疾患として治療されていることがよくある.
 疾患がある程度進行した状況下では,誰でも一見してほぼどんな疾患かの判定はつくが,確定診断をつけるのは極めて難しい.すでに進行している状況下では十分な検査ができないこと,時間的に余裕がないこと等がその大きい理由になつてくる.

心蘇生法

著者: 黒沢博身 ,   今野草二

ページ範囲:P.179 - P.185

はじめに
 心停止cardiac arrestは臨床医が遭遇するもつとも緊急な処置を要する事態である.多くの場合,cardiogenic shock,hemorrhagic shock,endotoxin shock等のshock状態が先行するが,時にvagal reflex等による全く突然の心停止,あるいは呼吸不全にひき続いておこる心停止等がある.
 心停止cardiac arrestは心電図上は心室細動ventricular fibrillationと心停止standstillに分けられるが,実際にはA-V block等による著明な徐脈bradycardyのことも多く,臨床的には血圧測定不能,脈拍触知不能,心音聴取不能の状態をさす.

気道熱傷

著者: 大矢英次郎

ページ範囲:P.187 - P.195

はじめに
 気道熱傷は他の部位における熱傷患者の治療以上に,いろいろの全身処理上の多くの余病に対する処置の必要が生じてくる.従つてその死亡率は非常に高率であることは,Phillipsを始めとし,多くの学者が指摘している.例えば最近の発表をみてもStone & Martinは47.7%の高率を示したと発表している.さらに剖検例からみるとなお高率に気道障害の認められていることは,Sockor & Mallory(68%),Zikriaら(74%),Stoneら(88.9%)も示している.
 この気道熱傷については,1942年9月28日491名の生命を奪つたナイトクラブCocoanut Groveの大惨事の際の治療状況が,O. Copeによって報告されたのを始とし,さらにこの事件に関しては臨床所見,レントゲン所見,病理解剖所見はそれぞれAubら,Schatzki,Malloyらによつて報告されている.英国のBull & Fisher,米国のArtzらも1954年気道熱傷の重大性に言及して居り,ボストンの大火の惨事はPhillipsらにより(1960)気道熱傷の重要性を発表させるように至らしめた.その後ますます気道熱傷に対する関心が深まり数多くの発表がなされるようになつてきた.

腹部劇痛と開腹手術の判定基準

著者: 古味信彦

ページ範囲:P.197 - P.204

はじめに
 腹部劇痛を主訴とする疾患は通常急性腹症と総称されるが,疾患の種類は極めて雑多であり,緊急に開腹手術を行なう必要があるかどうかを決定しなければならない.もし開腹手術はどのようなときにするのかについて,その判定基準があれば誠に有用ではある.しかし結論からいつてその様に雑多な疾患に画一的に適用できる開腹手術の判定基準はない.もしそれらを列挙しても常識的な概念的なものにならざるをえない.これがまた急性腹症つまり腹部劇痛を主訴とする疾患の特徴であり,症例毎に検討して臨機応変の処置をする必要があり,有能な外科医とそうでない者との判断の良し悪しが判然と結果に現われるものである.
 さて急性腹症とは一体どのような疾患であるかについて考えてみたい.例えば胃・十二指腸潰瘍が穿孔して腹部劇痛のある場合は,緊急開腹手術の対象となる.このような例では既往歴,現病歴,過去の愁訴のある度毎に行なわれたであろう検査成績,現在の症状,知りえた現在行なわれた緊急検査成績例えば気腹像などから消化性潰瘍の穿孔と術前に診断がつく.

困難な消化管出血の止血—救急病院における上部消化管出血例を中心として

著者: 的場直矢 ,   桜井潔 ,   佐野進

ページ範囲:P.205 - P.212

はじめに
 吐血または下血を主訴として,ショック状態に陥り搬入されてくる消化管出血の患者は第一線救急病院では最も重要な疾患の一つである.これらの患者は来院と同時に治療と診断がほとんど併行して開始されなければならないが,まず内科的に管理され待機的に治療されるのが原則であろう.しかし時として大量の出血が持続し,あるいは短時間内に再出血が反復して十分な血圧の保持が困難で,緊急に手術室へ移されるものも少なくない.もとよりこれらの患者は手術により救命できるものが多いが,緊急手術の行なわれる患者はショックにもとづいて一般状態は不良のため術前検査も不十分で術中,術後の管理面にも意外な困難さや陥し穴がひそんでいて外科医に細心の注意と最大の努力が要求される.ここではわれわれが緊急手術を要した上部消化管出血の2〜3の具体例をあげて反省し,患者の手術前に考えるべき問題に触れ,さらに実地的な臨床面より一般の概要について述べてみたいと思う.

骨盤骨折の診断と処置

著者: 星野孝 ,   山田尚武

ページ範囲:P.213 - P.218

はじめに
 骨盤骨折はそれ自体で致命的(5%〜15%,菅13),中島17)Paal18),Räf20))な外傷であることもあるが,尿路系その他の骨盤内臓器組織への重大な副損傷をともなつていることがあり,この骨折の診療者は常にこの副損傷を念頭にいれておく必要がある.

形成外科からみた顔面外傷の救急処置

著者: 平山峻

ページ範囲:P.221 - P.227

はじめに
 救患室に顔面血だらけの患者が運び込まれたとする(第1図).読者は顔面外傷の診断,処置の1つ1つについてはすでに成書で述べられているので熟知のことと思われるが,このような救急患者の総合的判断,救急治療をどのように取り扱い,診断し,治療を進めていくべきかということを,著者の経験をもとにして詳述していくことにする.
 今回は顔面外傷でもとくに交通災害による顔面外傷について述べることとし,熱傷その他の原因による外傷例については他の機会にゆずることにしよう.
 交通戦争という言葉はすでに使い古された感もあるが,最近では自動車排気ガスによる公害は勿論のこと,自動車事故による顔面外傷はとくに増加の傾向をたどり,それらの外傷例は顔面の軟部組織から始まり,眼,鼻部およびそれらの付属器の損傷,顔面骨折に至るまでの幅広い範囲にまで波及している.

重症熱傷の処置

著者: 村松正久 ,   寺島浩然 ,   関口忠男 ,   甲田義和 ,   大瀬良雄 ,   扇谷一郎 ,   武藤邦彦

ページ範囲:P.229 - P.234

はじめに
 最近10年間,日本での年間熱傷死亡者数は平均して4,000〜5,000人位であるといわれるが,徐々にその数は増加しつつあるのが現状である.この事実を考えるに,熱傷一般に対する治療も進歩しているが,反面重症熱傷患者数も年々増加している事が挙げられる.そしてこれらの多くは救急車にて適当なる病院に運ばれ入院することになる.この入院した重症熱傷患者に対する治療が,われわれ外科医にとつて最もやりがいのある仕事である.
 そこで重症熱傷患者に対処するに当たり,皮膚の変化の他に全身のあらゆる異常やアンバランスが生ずる事を念頭に置き,その救命,そして全身管理,局所的処置を中心に述べたいと思う.

救急手術を要する小児外科疾患—新生児腸閉塞症状を示す疾患について

著者: 秋山洋 ,   小平義彦 ,   佐伯守洋 ,   遠藤昌夫 ,   監物久夫

ページ範囲:P.235 - P.244

はじめに
 小児外科領域において救急的に手術を必要とする疾患はきわめて多く,しかも小児の年齢層によつて疾患の種類にも差がみられる,小児外科で取扱う救急手術を必要とする疾患についてすべてを限られた頁数で述べることはできない.
 最近では小児外科の普及もいちじるしく.新生児を手術する施設も増加しているし,新生児に救急的に手術を行なわなければならない外科医も増加の傾向を示している.そこで今回は,新生児のなかでも救急的に手術を行なわなければならない疾患で比較的遭遇する頻度の高い,胆汁性嘔吐,腹満,排便障害をともない腸閉塞症状を示す疾患をとりあげ,それらの疾患の診断,治療面での要点について,われわれの経験にもとづいて述べてみたいと思う.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・12 胃疾患の肉眼診断

Ⅰ.早期胃癌の内眼形態とその鑑別—4.Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.168 - P.169

 Ⅱa+Ⅱc型早期癌はⅡa(隆起)またはⅡc(陥凹)の大小に関係なく,その外見が環状であるという特徴に重点を置き他の型の癌より独立させている.筆者らはⅡa+Ⅱc型の癌を付表の如く1)ポリープ型,2)びらん型,3)深部浸潤型に区別している.

クリニカル・カンファレンス

小児の腸重積症をどうするか

著者: 飯島勝一 ,   勝俣慶三 ,   秋山洋 ,   岡部郁夫 ,   土井修 ,   牧野永城

ページ範囲:P.248 - P.261

《症例》
患者 4カ月,男児
現病歴 主訴:嘔吐と血便

外科医の工夫

直腸肛門手術後出血の止血について

著者: 三輪徳定

ページ範囲:P.265 - P.265

 外科医の工夫といつてもいろいろあるが,今回私は外科医がしばしば遭遇する直腸肛門の手術後におこる出血について述べようと思う.直腸肛門手術後の出血には,術後短時間におこるものと,術後10日前後におこるものとが多い.術後短時間しておこる出血は術者の処置不手際によることが比較的多い.また複雑痔瘻を手術して創面を開放創としておく時,第1回目の包帯交換をする際,挿入してあつた「ガーゼ」を一気に除去するのは危険であるから毎日上層の「ガーゼ」から少しずつ除去し,約一週間位で底面の「ガーゼ」を除去するのが安全である.私も常に若い医師にはこの点を強調しているのであるが,時々手術翌日に全部の「ガーゼ」を除去し,大出血をおこした苦い経験がある.また痔の治療として,いまだに日本では高濃度の腐蝕液を注射や塗布療法に使用して,術後間もなくか,あるいは2,3日して大出血をおこす症例が跡をたたないのははなはだ遺憾である.

論説

下肢動脈慢性閉塞性疾患に対するデキストラン硫酸の動脈内注入療法

著者: 福満東馬 ,   草場昭 ,   清瀬隆 ,   朔元則 ,   古山正人

ページ範囲:P.269 - P.274

はじめに
 末梢動脈慢性閉塞性疾患に対する血行再建術は合成血管移植術,自家静脈移植術,あるいは血栓内膜剥離術など,それぞれの適応においてほぼ標準化されてきているが,下肢動脈血行再建術では膝窩動脈までが,適応の安全限界と考えられている.しかしながら,本邦における下肢動脈閉塞症は膝窩動脈以下の閉塞,あるいは大腿動脈以下広汎閉塞などの症例が少なくなく,その治療には困難をきわめる.
 われわれは大腿動脈以下広汎閉塞例に対しては,いわゆるA-V shunt術式1),膝窩動脈以下の閉塞例に対してはhydrostatic pressure dilation techniqueなどを考案し,かなりの症例に効果を得ているが,末梢の閉塞病変が高度でこれらの術式の適応外と考えられる例,あるいは血行再建術後の再閉塞例など,血行再建術を断念せざるを得ない症例も少なくない.このように血行再建が行なえず,しかも潰瘍,安静時疼痛などの阻血性症状の著しい症例に対しては,各種薬剤の配域動脈内注入法2)3)4)5)(以後「動注」と略記する)を行なつている.「動注」にはH2O2,低分子デキストラン,デキストラン硫酸などの投与を試みたが,デキストラン硫酸(以後D.S.と略記する)3000mg〜6000mgの大量投与で良好な成績を得,また「動注」前後の血液凝固学的検査において興味ある結果を得たので報告する.

外傷患者の重症度とその判定

著者: 小川道雄

ページ範囲:P.275 - P.278

はじめに
 外傷患者の重症度を判定しこれを分類することは単に外傷患者に日常遭遇する医療従事者やそれを研究するものにとつてのみならず,広く行政,司法面からも重要な意味をもつている.そしてもし診断治療を行なう医師に共通してその重篤さを表現しうる尺度が与えられているなら,統計的な処理によつて外傷の疫学や予防のための極めて有用な情報が得られるであろうことは疑うべくもない.
 本稿では外傷患者の重症度に関する私どもの考えをまず示し,さらに救急医療の場へもちこもうと私どもが試みているvital signを重視した「外傷指数」を紹介し1)-3),あわせてその応用について言及したいと思う.

当教室における胆道系疾患の手術術式の検討

著者: 細野英之 ,   岡林義弘 ,   伊藤敬之 ,   井ノ口健也 ,   久瀬弘 ,   中村卓

ページ範囲:P.279 - P.282

はじめに
 近年わが国に於ける胆道系の手術,とりわけ胆石症の手術成績は向上してきたが,反面術後愁訴および後遺症を残すものも稀ではない.われわれは教室における過去5年間の胆道系疾患の手術症例のうち,悪性腫瘍,先天性疾患を除く116例の胆石症および胆嚢炎の手術症例について検討し,教室において行なつている経十二指腸乳頭括約筋成形術1)2)3)(以下乳頭成形術と記載する)を中心に,その術式並びに術後愁訴につき報告する.

症例

まれな転移をきたした肺癌の2例

著者: 中津喬義 ,   津村整 ,   佐藤次良 ,   牛島康栄 ,   松岡宏彰

ページ範囲:P.285 - P.289

はじめに
 肺癌の骨格筋または腸への転移はきわめてまれであるが1),われわれの経験した2剖検例について報告する.

真性膵嚢胞の1例

著者: 山本武常 ,   田崎睦夫 ,   黒田清 ,   西川正光 ,   佐藤方則

ページ範囲:P.291 - P.295

はじめに
 膵嚢胞は比較的まれな疾患とされていたが,近年その頻度は増加している傾向にあり数多くの報告がみられる.膵嚢胞は嚢胞内壁が上皮細胞でおおわれている真性嚢胞と上皮を欠き線維性結合組織からなる仮性嚢胞とに大別される.最近われわれは真性嚢胞の一つである貯溜嚢胞の症例を経験したので,多少の考察を加えその臨床像を報告する.

骨折固定後に発生せる膝窩動脈瘤治験例

著者: 高橋秀禎 ,   大内博 ,   大原到

ページ範囲:P.297 - P.301

はじめに
 われわれは最近,大腿骨骨折のプレート固定により生じた仮性動脈瘤を摘出し,自家静脈を移植し良好な結果を得た症例を経験したのでこれを報告し,あわせて現在までの骨折固定後に発生せる動脈瘤の内外の報告例につき文献的考察をおこなつた.

胃のGranular Cell Myoblastomaの1症例

著者: 野村英樹 ,   加藤良隆 ,   徳永彰 ,   草刈一友 ,   杉山喜一郎 ,   池田義治

ページ範囲:P.303 - P.306

はじめに
 われわれは最近granular cell myoblastomaの1例を経験したので症例報告とともに若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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