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文献詳細

雑誌文献

臨床外科28巻3号

1973年03月発行

文献概要

症例

Traumatic Hepatic Sequestrationの1治験例

著者: 永末直文12 荒木貞夫3

所属機関: 1済生会八幡病院外科 2現在:Sweden,Lund大学外科 3福岡大学医学部外科

ページ範囲:P.419 - P.422

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はじめに
 Sequestrumという言葉は普通,骨質壊死部が周囲組織より遊離された場合に腐骨の意味で整形外科領域で用いられることが多い.外傷後の肝壊死(sequestration)の最初の記載はすでに17世紀前半にFabricius Hilda-nus12)により行なわれているが,hepatic sequestrationという言葉を用いたのはGraser, E.5)が初めてのようである.肝はその豊富な血行支配のため壊死になりにくいといわれているが,肝外傷あるいは肝動脈枝の損傷による限局性肝壊死(hepatic sequestration)については,今世紀の初めよりしばしば報告されている3)11)15)
 ここに報告する1例は,70年前に報告されたGraser, E.5)の症例と何ら本質的には異つたものではない.しかし現在では種々の新しい肝診断法を駆使することにより,正確な診断のもとで,適確な治療をすることができるようになつたことを考えると,雲泥の差があるように思われる.肝外傷後に横隔膜下あるいは肝下膿瘍がみられた場合,hepatic sequestrationを考えなかつたため,何度もドレナージのみをくりかえした症例はTurrill, F. L.15)らの報告するところである.本症は肝外傷後の合併症としては少ないが,常に心しておかねばならないものと考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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