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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科28巻4号

1973年04月発行

雑誌目次

特集 術後ドレナージの実際

術後ドレナージについて

著者: 槇哲夫

ページ範囲:P.455 - P.456

 このたび,編集子が「術後ドレナージの実際」についての特集号を企画したことは誠に時宜に適したものと思う,外科領域全般についてみても,日常の診療に際し,ドレナージを心にとめないですむ日は1日もなかろう.それほどドレナージは手術や創傷治療と密接な関係にあるわけである.しかし,ドレナージそのものは簡単な操作であるだけに,聞きずてに,あるいは惰性的にこれを用いている人が存外多いものと思う.この辺で,それぞれの領域の専門大家に,ドレナージの意義や実際についての記述をお願いし,それと対比しつつ,もう一度自分のやり方,考え方を反省してみることは,初心者はもとより,経験ある実地医家の方々にとつても是非必要と思うわけである.

開頭術後のドレナージ—その適応と運用について

著者: 坪川孝志

ページ範囲:P.457 - P.462

はじめに
 開頭術にさいしては,それが単純な骨形成性開頭術(Osteoplastic Craniotomy)であれば,pe-ricranial areaにドレーンを設置することはあつても,脳内はもちろん,硬膜下,硬膜外のいずれにもドレーンを設置しないのが原則である.その理由は頭皮,頭蓋,硬膜,脳の解剖学的位置関係が,他の体腔臓器と異なつていることに求められる.まず頭蓋と硬膜,硬膜と脳との間に解剖学的空間がほとんど認められず,手術後の硬膜上の間隙や出血に対して,硬膜吊り縫合が極めて有効であるのが第1の特徴として挙げられる.第2に,手術後脳腫脹が存在すること,髄液を満した髄液腔を開放することなどが,無用の硬膜下ドレーンが髄液漏の発生や脳組織への圧迫壊死を招来することがある.第3の特徴は,頭蓋腔が天幕により2つの腔に分離されているので,ドレーンによる頭蓋内圧の変動により,天幕裂孔に脳陥頓(uncal herniation or upward herniation)を誘発する可能性がある点である.第4に,頭皮は血管が豊富であるために,手術後帽状腱膜下血腫の形成をみることがあるので,帽状腱膜下にドレーンを設置することは少なくない.

甲状腺疾患手術後のドレナージ

著者: 野口秋人 ,   村上信夫

ページ範囲:P.463 - P.465

はじめに
 われわれは頸部,特に甲状腺疾患を主として診療しているが,手術創が外部から見える場所にあり,女性の患者が多いため手術創は一次的にきれいに治癒することが望ましい.このような観点からいえばドレーンは使用しない方が良いと思われる.しかし頸部には腹腔の如き大きな空間がないため少量の出血でも手術創にたまり創の治癒を妨げるし,大量出血であれば呼吸困難から手術死に至る可能性もある.手術創にドレーンを使用するのは賛否両論ある所であろうがわれわれはビニールフィルムドレーンを使用し比較的良い結果を得ている.ここでは主として甲状腺疾患手術後の出血やドレナージについて述べてみたいと思う.

乳腺疾患手術における排液の実際

著者: 妹尾亘明

ページ範囲:P.467 - P.471

はじめに
 乳腺疾患の手術にさいしてのドレナージは疾患が急性化膿炎症による膿瘍切開ではもちろんであるが,非化膿性疾患の術後にも使用される.すなわち膿瘍に対しては排膿を主役とするのに対し,後者では術後のリンパ液貯溜,血腫の防止などの目的がある.排液管,吸引器など近代科学の進歩とともに種々改善されて,多くの商品が市販されつつある.ここでは日常遭遇する2,3の疾患について,排液法を概説する.

食道癌手術後の胸腔内ドレナージ

著者: 佐藤博 ,   磯野可一 ,   曾野文豊

ページ範囲:P.473 - P.476

はじめに
 今日,胸腔内手術を施行した後,ドレナージをすることは全くの常識である.これは術後出血および滲出液の排出ならびに排気を迅速かつできるだけ完全に行なうのが目的であり,多量に潴溜することにより呼吸困難および循環障害などが起こり,また,潴溜液が長い間たまることは,容易に感染をまねき膿胸となり患者は重篤となる.特に,食道癌患者は一般に高齢者であり,一般状態が不良の患者が多いため胸腔内の合併症は致命的となる.
 現在なお,食道癌手術後の死亡原因の第1が,肺合併症であることをみても,いかにこのことが重要なことであるかが伺える.

心臓手術後のドレナージ

著者: 杉江三郎

ページ範囲:P.477 - P.480

はじめに
 誘導(ドレナージ)の目的は,もとより手術創あるいは腹腔や胸腔などの体腔に貯留する血液,滲出液,漏出液,またときには膿汁などの体外排出をはかり,炎症や感染の進展を防止するとともに,ことに体腔にあつては,貯留液による体腔内臓器の圧迫症状を解除するところにも大きな目的のひとつがある.
 本誌特集の「術後ドレナージの実際」となると,手術治療の一環としての誘導法がとりあげられるわけであるが,ことに命題の心臓手術後のドレナージについては,それに伴う特徴的な実際論とともに,他の分野の誘導法との共通部分ももちろん少なくないのである.

縦隔手術後のドレナージ

著者: 吉村敬三

ページ範囲:P.481 - P.486

はじめに
 最近の麻酔ならびに手術手技等の進歩に伴つて,従来容易に到達しえなかつた縦隔領域にまで,手術侵襲が可能となり,しかも安全に行ないうるようになつた事は周知の通りである。たとえば,縦隔疾患をとり扱つた本邦各施設の集計をみると,腫瘍のみであるが,1955年に72例,1964年932例,1971年3,952例とその症例数が飛躍的に増加しており5)8),すでに縦隔手術は臨床の日常化している傾向がつよい.一方疾患の内容もかなりその種類が殖え,かつ複雑多様化している点で,手術術式ならびに術後管理が重要なpointとなりつつある.
 本稿の主題は術後のドレナージという事であるので,著者は縦隔手術後の主としてドレナージを中心にした術後管理について述べてみたい.なお本問題を理解するためには当然縦隔の外科的局所解剖と手術術式ならびに適応について知悉する必要があるのでまず簡単にふれることとする.

肺手術後のドレナージ

著者: 辻泰邦 ,   富田正雄

ページ範囲:P.487 - P.491

はじめに
 肺手術後のドレナージの目的は,胸腔内貯溜血液ないし滲出液の排除および陰圧保持による残存肺再膨張の促進にあり,肺手術後には不可欠の操作であることはいうまでもない.
 日常,肺手術後に行なわれる胸腔ドレナージが適正である否かによって術後の予後は左右され,残存肺の再膨張の良否,術後血胸・膿胸などの合併発現に密接な関連性があることを認識する必要がある.胸腔ドレナージとは胸部外科手術後,外傷に起因した気血胸および膿胸などに排気あるいは排液の目的で用いられる方法であるが,ここでは,肺切除肺剥皮術を含めて開胸術後のドレナージを対象とした.

胃・十二指腸手術後のドレナージ

著者: 長尾房大 ,   池内準次 ,   猪又義光

ページ範囲:P.493 - P.497

はじめに
 ドレナージは,排膿,または,排液の方法として,古くから使用されているところの外科的治療法の1方法である.その有用なる効果面においては,ドレーン1本の存在の有無によつて,患者の生死を決定する場合も決して少なくないことも周知の事実であり,また,外科医であれば,基本的な知識としては十分に承知している筈のものである.しかし,実際には,ドレーンを置くか否かの正しい判断となると,全く勘に頼つているといわれても過言ではあるまい.このように,ドレナージは外科的手技としてしては初歩,基本的にあるわけだが,一方,case by caseという,便利だが実際には不親切な言葉で説明されているので,手術手技そのものよりも重要な立場になることがある.
 近年,外科学は進歩したといわれている.事実そうであろう.しかし,その進歩の大きな原因となつているのは,手術手技そのものは当然として,積極的,かつ拡大的に手術を行ないうる状態を管理する麻酔学が進歩したためであり,さらに,その手術に見合う術前術後の管理ならびに抗生物質の発達が基本となつているからである,とくに,抗生物質の発見以来,外科治療の成績は異常に向上したが,これと併行して,ドレナージの考え方,使用方法も昔と比較すると,きわめて大きい変化を伴つてきたことは当然であろう.

小腸・大腸手術後のドレナージ

著者: 大内清太 ,   今充 ,   阿保優

ページ範囲:P.499 - P.503

はじめに
 小腸・大腸の手術に限らず,腹腔内手術後にドレーンを設置することは,これによつて起こる種々の障害を考慮するとき,できるだけドレーンを必要としないような術式を選び,その挿入を避けたいものと思うのはわれわれ外科医の願望であろう.しかし実際上はドレーン挿入がきわめて有効的な場合もあるのであつて,例えば後出血の早期発見,血腫や膿瘍形成の防止,縫合不全などによる汎発性腹膜炎への進展防止など,害あるべきドレーンが却つて術後経過をスムースとし,よく救命への手段ともなることは事実である.
 そこで小腸・大腸手術に際して,ドレーンの実際につきわれわれが日常行なつている方法など具体的に述べ参考に資したいと思う.

虫垂炎手術後のドレナージ

著者: 中村卓次 ,   原田哲夫

ページ範囲:P.505 - P.509

はじめに
 急性虫垂炎に対する早期手術が一般に認められ広く普及するにいたつてから長期間を経過したが,現在でもなお虫垂が穿孔して膿瘍を形成したり,汎発性腹膜炎を起こしてから病院を訪れる症例が少数ながら後をたたない。大槻(1938)12)は穿孔性虫垂炎による急性化膿性腹膜炎の治療としてドレナージよりも一次閉鎖の方が治療日数を短縮し,術後合併症も減少せしめると主張し,その一派で現在でもなるべくドレーンを入れないで一次閉鎖法によつて治療する方針をとつている外科医者が少なくない.しかし,いかなる急性化膿性腹膜炎においてもドレーンなしに一次的に閉鎖していいというわけではない.そこで本稿では急性虫垂炎手術における限局性ないしは汎発性化膿性腹膜炎の頻度やそれに対する治療方法などにつき欧米ならびに本邦における文献的考察を行なうとともに原町日赤病院における虫垂炎の治療方針ならびに治療成績を統計的に観察し,ドレーンの適用ないしはその挿入,誘導方法等につき考察を加える.

肝・胆道系手術後のドレナージ

著者: 梅園明 ,   尾形佳郎

ページ範囲:P.511 - P.515

はじめに
 術後に行なわれるドナレージの目的が,生体の治癒過程において不利益である貯溜液の排出であり,ドナレージはその目的が終了次第,異物であるドレーンは早急に除去すべきであるという原則は,胆道系の術後においても同じである,肝・胆道系の術後ドナレージにつき特に注意すべき点,特異な点もあるので,われわれの実際に行なつている日常の経験を記述してみたい.

急性膵炎手術後のドレナージ

著者: 広野禎介 ,   村田勇

ページ範囲:P.517 - P.521

はじめに
 急性膵炎の治療として,古くは,膵全剔,または部分切除,膵壊死巣の掻爬,sphincterotomyなど,積極的手術療法が行なわれてきたが12)14)18),本症の病態生理が解明されるにつれ,あるいは手術による死亡率が高いことなどの理由により,現在では,内科的保存療法を可とするものが圧倒的に多い16)20).しかし,最近になり,ふたたび急性膵炎に対する外科的手術療法の意義が再検討されつつある.すなわち,本症の診断は,現在もつとも信頼すべき臨床検査法であるアミラーゼ値の測定をもつてしても,しばしば困難なる場合が多い上に,急性膵炎ともつとも鑑別を要する胃・十二指腸潰穿孔など緊急手術を必要とする上腹部急性腹症との誤診を防ぎ,確定診断をうるために早期開腹の必要性を強調する報告も散見される6)9)15)
 とくに,最近における麻酔,および外科手術の進歩と,トラジロールなど強力なる薬物療法の開発により,本症の手術による死亡率は著しく低下しており11),Zimbergは,術前後の管理と治療を慎重に行なえば,激症膵炎においても,早期開腹による死亡率はわずか5%にすぎないと述べている21)

直腸手術とドレナージ

著者: 北条慶一

ページ範囲:P.523 - P.527

はじめに
 ドレナージの目的は,術後の創部の滲出液,"oozing"などの出血等の貯留を排除して,手術創の治癒が妨げられないようにすることである.さらにまた,術後起こりうるかも知れない縫合不全,局所感染に備えて,汚染を体外へ誘導し,周辺への拡散を防ぐための予防的安全弁として行なわれる.とくに,汚染の可能性の大きく,また骨盤腔という解剖学的特性から,創傷の1次的治癒を失すると会陰部の創の治癒は一段と長期間を要する直腸の手術においては適切なドレナージは必須である.
 しかし,また反対にドレナージが意図した如くに機能をみず,少なくなからぬ困難に遭遇することもしばしばといえよう.このような失敗の原因はいろいろ反省される.ドレーンのおく場所と,その方法,たとえば適切な位置におかれてもその取扱い使用方法によつて十分機能を得ないためである.ドレーンの方法に関して,近年いろいろ工夫がなされているが,成書での記載は乏しく,各術者の経験に基づいて各流儀で行なわれているのが現況といえよう.

泌尿器系手術後のドレナージ

著者: 堀内誠三

ページ範囲:P.529 - P.533

はじめに
 泌尿器科手術後のドレナージについては,他の外科手術と原則的に異なることはない.しかしその多くの手術は尿が絶えず流れている臓器に行なわれるので,この点に注意を必要とするわけであり,例えば尿管結石などの切石術後に尿が全く漏出しないように十分に創口を縫合することは,後に尿管の狭窄をきたし水腎症になる危険も少なくない.むしろ手術直後に尿が創口より流出する程度に縫合し,後腹膜腔の尿をドレーンにより体外に排出するほうが予後がよい場合が多い.このような点が一般外科手術と異なり,ドレーンの必要性も強く,また抜去の時期を考えねばならない点である.
 泌尿器科手術とドレーンについて臓器別にのべてみる.

産婦人科手術後のドレナージ

著者: 山口龍二

ページ範囲:P.535 - P.538

Ⅰ.産婦人科手術の特徴
 婦人の性器の特徴として,内性器は腹腔内に納まつているが,常時細菌の存在する腟を介して外界に通じており,したがつて自然の状態においても上行感染の機会も多い.さらにこの条件を悪化させるものとして肛門が腟および尿道と近接していることがあげられる.これらのことは,産科的,婦人科的手術にさいして,また術後にしばしば何らかの形の感染を生ぜしめることになる.
 第2の特徴は,小骨盤腔は解剖学的に腹壁から非常に深い位置にあることによつてもたらされるもので,それ自体手術の困難さと直結する.また,利害双方をともなうことであるが,小骨盤腔の深いことは創液が骨盤底に溜ることによつて通常の腹壁からのドレーンが余り有効でないという欠点,しかしその反面,仰臥位においても創液や膿が溜りやすい骨盤底やダグラス窩に直接ドレーンを挿置しやすいという利点をも有する.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・14 胃疾患の肉眼診断・6

Ⅱ.疣状胃炎

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.452 - P.453

 びらん性胃炎(erosive gastritis)のうちで周辺が隆起し,中央が浅く陥凹したのものをWalkはvarioliform,Palmerはchronic erosionと呼び,本邦では"たこいぼ"胃炎として知られている.しかしその病理学的な詳しい研究はほとんどなかった.ところがAbelはこのような周堤を有するびらん性胃炎をレ線学的に経過を追究し2〜3カ月間の短期間で消失するものと,数年以上の長期間にわたり存続するものの2種類を区別して後者の病変をgastritis verrucosaと名づけた.筆者らはAbelの指摘した状胃炎に興味をもちその成り立ちや組織学的特徴について発表してきた.結論として疣状胃炎はびらん後の再生として生ずる腺上皮の過形成(hyperregeneration)にもとづく永続的な病変で,それは胃炎や水腫によつて生ずる一過性の粘膜隆起,すなわち消失型のびらん性胃炎と本質的に区別すべきものであることを主張してきた.
 疣状胃炎は肉眼形態より第1図のようにこれを4種に分けることができる.

座談会

卒後外科教育に何を望むか

著者: 関惇 ,   青木克彦 ,   別府倫兄 ,   高興弼 ,   横山勲 ,   樋上駿 ,   出月康夫 ,   牧野永城

ページ範囲:P.540 - P.559

 激動の時代と言われた70年代も,はや3年目の春を迎えました,かつて医学部に端を発し日本全国を席捲した学園紛争も,収拾と模索のステップから,新たなワンステップを踏み出したかに見えます.これまで,本誌誌上はもとより様々な形で,当時なされた問いかけを基に,医学教育,就中インターン制度を核とした卒後教育の問題が論じられてきました.今回,それらいわば教育する側からの論議とは趣きを変え,教育される側一現在研修中の若い方々にお集りいただき,紛争後の現在,卒後教育がかかえている問題点を中心に話しあつていただきました.

外科医の工夫

ドレナージの管内閉塞除去

著者: 横山正義

ページ範囲:P.565 - P.565

 外科医にとつてドレナージのやり方はもつとも大切な知識の1つであり,ドレナージ法の良否が手術効果を左右することもしばしばである.小生は心臓外科にたずさわつているが,心臓手術後は必ず,胸腔内ドレーン,心嚢内ドレーン,縦隔内ドレーンのいずれかを留置する.心嚢をひらいたあとは心嚢内にドレーンを留置することが多いが,もしこのドレーン管が血栓などで閉塞して,心嚢内に貯留した血液や滲出液を吸引できなければ,いわゆる心タンポナーデとなり患者は死亡してしまう.また胸腔内に留置したドレーン管が血栓などで閉塞してしまうと,胸腔内に貯留した血液などで肺が圧迫され患者は呼吸不全となつてしまう.心臓外科後のドレーン管の閉塞はこのように重篤な術後合併症につながつている.
 ドレーン管がつまつているか否かをみきわめる方法として,ドレーン管内の液が呼吸または心拍に一致して多少でも移動するかどうかをしらべることが一般に行なわれている.もし,ドレーン管内の液が呼吸や心拍とは無関係にまつたく移動しなかつたとしたら,ドレーン管が血栓などでつまつていることを意味する.

症例

異型大動脈縮窄症を合併せる腎血管性高血圧症

著者: 窪田倭 ,   初音嘉一郎

ページ範囲:P.569 - P.574

はじめに
 近年血管外科の進歩と共に外科的に治癒しうる高血圧症として,腎血管性高血圧症が注目され,本邦でも多くの報告がみられるようになってきた1)−9).特に本邦においては腎血管性高血圧症に異型大動脈縮狭症を合併することが多く20%と報告されている10)11).しかしその手術成績は悪く8)19),多くは腎剔出術が行なわれている.
 最近われわれは2例の異型大動脈縮狭症を合併した腎血管性高血圧症を経験したのでここに文献学的考察を加えて報告する.

外傷性耳下腺管瘻の1治験例

著者: 田中祐尾 ,   鎌谷正博 ,   畑間博 ,   梅山馨

ページ範囲:P.575 - P.578

はじめに
 耳下腺あるいは耳下腺管瘻の損傷は,従来,耳下腺あるいは歯科領域での炎症,膿瘍等の切開によつて起こることが多く1-5),戦時中の戦傷は別としても,最近は種々の外傷が原因となる報告が多くなつてきており6)7),損傷後は難治性の耳下腺瘻,あるいは耳下腺管瘻を残すものである.これら耳下腺瘻や管瘻に対しては種々の保存的,外科的治療が行なわれてきたが,最近では耳下腺管の端々吻合術によつて修復されるようになつてきている4)7)
 われわれも,外傷後に起こった耳下腺管瘻の1例に対して,ポリエチレンチューブを用いて耳下腺管の端々吻合を行ない治癒せしめえたので,ここに若干の考察を加えて報告する.

乳腺Paget病の4例

著者: 小堀鷗一郎 ,   武藤徹一郎 ,   富山次郎 ,   土地邦和 ,   草間悟 ,   石川浩一 ,   喜納勇

ページ範囲:P.579 - P.584

はじめに
 1874年James Pagetが乳頭および乳輪の慢性湿疹様の皮膚変化につづいて,これら病変部と離れた乳腺組織内に癌腫の発生をみる症例を報告(文献2)より引用して以来,乳腺Paget病は1つの特異な病型としてみとめられており,その本態についても,今日ではほぼ一定の結論に達しているものと考えられる.しかしながら,その定義および治療方針については研究者によつて考え方の違いがあり,また臨床的にはその診断が容易でなく単なる皮膚疾患としてとりあつかわれることが多いなどいくつかの問題がある.わが国では,組織学的に管外浸潤の著しいもの,すなわち臨床的に乳腺腫瘤を伴うものを乳腺Paget病から除き別個に扱うことが提唱されているが13),外国文献ではこのような区別が行なわれていないことが多く,ここでは外国文献と対比して検討する立場から,乳腺腫瘤を伴う型も乳腺Paget病に含めて論ずることとした.
 今回われわれは教室において経験した乳腺Paget病の4症例を報告するとともに,主として臨床的な立場から以上に述べた問題点について若干の考察を加えて見たい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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