文献詳細
症例
乳腺Paget病の4例
著者: 小堀鷗一郎1 武藤徹一郎1 富山次郎1 土地邦和1 草間悟1 石川浩一1 喜納勇2
所属機関: 1東京大学医学部第1外科 2東京大学医学部病理
ページ範囲:P.579 - P.584
文献概要
1874年James Pagetが乳頭および乳輪の慢性湿疹様の皮膚変化につづいて,これら病変部と離れた乳腺組織内に癌腫の発生をみる症例を報告(文献2)より引用して以来,乳腺Paget病は1つの特異な病型としてみとめられており,その本態についても,今日ではほぼ一定の結論に達しているものと考えられる.しかしながら,その定義および治療方針については研究者によつて考え方の違いがあり,また臨床的にはその診断が容易でなく単なる皮膚疾患としてとりあつかわれることが多いなどいくつかの問題がある.わが国では,組織学的に管外浸潤の著しいもの,すなわち臨床的に乳腺腫瘤を伴うものを乳腺Paget病から除き別個に扱うことが提唱されているが13),外国文献ではこのような区別が行なわれていないことが多く,ここでは外国文献と対比して検討する立場から,乳腺腫瘤を伴う型も乳腺Paget病に含めて論ずることとした.
今回われわれは教室において経験した乳腺Paget病の4症例を報告するとともに,主として臨床的な立場から以上に述べた問題点について若干の考察を加えて見たい.
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