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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科28巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

特集 麻酔—外科医のために

救急麻酔

著者: 恩地裕

ページ範囲:P.773 - P.776

 Ⅰ.緊急手術における気管内挿管法 緊急手術を要する患者では胃内容が空になつていないことがあり,特に吐血などに対して手術をするとき,外傷患者の緊急手術のときには,胃内容の逆流防止が重要な問題となる.外傷患者の腹部単純レ線像をみると胃内に空気が充満していることがよくわかる.したがつて,導入時に胃内容逆流の危険がさらに高くなるわけである.
 これに対しては次の方法がある.

Spinal麻酔の限界

著者: 山中郁男 ,   茅稽二

ページ範囲:P.777 - P.783

はじめに
 Spinal麻酔とは,くも膜下腔に局所麻酔剤を注入して脊髄神経(知覚,運動,自律神経線維)をblockすることによつて得られる局所麻酔法の1つであると考えると,患者の年齢,全身状態,疾患,手術術式などの因子から,おのずと限界が定められる.
 しかしさらに大切なことは,麻酔を行なう医師のspinal麻酔に関する知識,技術,経験などの限界である.見よう見まねで安易に行なうべきものではなく,薬理,解剖,生理学的知識をわきまえた上で正しい手技をマスターし,さらに自分の限界を知らなければならない.

吸入麻酔以外の全身麻酔

著者: 富永健 ,   牛尾邦男

ページ範囲:P.785 - P.791

はじめに
 吸入麻酔剤以外のものによる全身麻酔法は,原則的に経静脈的に行なわれ従来はバルビタール系のものがその主座を占めていたが,最近は新しい麻酔剤が登場しわが国においても広く使用されるようになつている.そのうちでわが国においてあまりpopularでないものを除き,比較的よく用いられるものについて本項に述べることにする.

最近の麻酔薬

著者: 大村昭人

ページ範囲:P.793 - P.801

 はじめに
 Ⅰ ケタラールの合併症
 Ⅱ ペントレン腎毒性—最近の評価
 Ⅲ 麻薬拮抗剤Naloxone
 Ⅳ 静脈麻酔剤Althesin(CT 1341)
 Ⅴ ガス麻酔剤Forane,Ethrane
 今回新しい麻酔剤として上の5題を解説したい.しかしⅠ,Ⅱに関しては既に広く臨床で使用されており,"新しい"という言葉が陳腐に響くがその合併症は新しい知見であり注意を喚起する意味で敢て記載した.Ⅲ以下はまだ日本では全く使用されていないか,試験的使用が行なわれている薬だが,今後導入される可能性が大きいので紹介したい.

Poor Riskの麻酔

重症肺疾患患者の麻酔

著者: 水口公信 ,   矢吹敏子

ページ範囲:P.743 - P.750

はじめに
 医学の進歩およびそれに伴う平均寿命の延長により,原疾患以外に病的条件を持ちながら手術を行なわなければならない場合が多くなつた.術前より呼吸器系に種々の病気を伴つているいわゆるpoor risk例に手術を行なわねばならない場合である.例えば切徐不能の肺癌患者が脳転移を起こし減圧開頭術を施行せねばならない場合,喘息患者に開腹術を行なわねばならない場合などである.これらの症例の麻酔管理は麻酔医にとつてむずかしいものである.しかし呼吸器系に病的条件があるといつても特別な麻酔方法があるわけでなく,原則的には疾患の種類,重症度および疾患の病熊生理を知悉して,術前に十分な処置,治療を施した上で,より注意深い管理を行なう以外に方法は見当らない.著者らは自験例を混えながら以下論じてみた.

肝機能障害の麻酔

著者: 國友桂一

ページ範囲:P.751 - P.755

はじめに
 肝機能障害の麻酔を行なう場合に重要な点は,肝機能障害に関する正確な術前評価,外科的侵襲の種類,部位,時間ならびに救急手術か選択的手術であるか,麻酔方法ならびに麻酔剤の選択などである.
 周知のごとく肝臓は生体内最大の実質臓器であり,その機能も複雑で糖質代謝,蛋白質代謝をはじめ解毒,胆汁生成排泄,異物排泄,造血,酵素機能などを有し,かつ,代償機能がすぐれている.そのため病歴,現症ならびに肝機能検査成績により肝障害の診断は可能であるが,重症度の判定はまだきわめて困難な問題である.

腎機能障害の麻酔

著者: 加藤浩子 ,   森健次郎

ページ範囲:P.757 - P.760

Ⅰ.腎不全の病態生理
 急性腎不全とは,臨床上急激に乏尿,無尿,尿毒症状をきたすものをいい,成因として,腎前性,腎性,腎後性のものがある.尿路閉塞による腎後性のものを除いては,一般に,外科手術後の合併症としてみられることが多い.術中の出血性低血圧による腎の乏血,胆道手術後にみられる肝腎症候群,異型輸血による急性尿細管壊死などが,その例である.近年妊娠中毒症などの産科領域の急性腎不全は減少しつつあるが,反面,交通外傷による外傷性急性腎不全は増加の傾向を示している.急性不全は,病態生理学的には,1)腎血流の減少による糸球体濾過の減少,2) aldosteroneを介しての尿細管再吸収の増加,あるいは,腎乏血により生じる尿細管細胞へのback diffusion,3)尿路閉塞による腎盂内圧の上昇が考えられる.
 急性腎不全が術後性のものとして遭遇されるのが多いのに対して,術前に腎障害を有している患者の多くは,慢性腎不全を呈している.

心・血管障害の麻酔

著者: 岩淵汲

ページ範囲:P.761 - P.765

はじめに
 心血管障害を伴つた症例の手術危険率は高く,著者らが1965年に取扱つた心疾患を伴う症例38例中18例,47%に術中血圧下降,不整脈,心停止などの合併症をみており1),西村ら2)は冠動脈性心疾患患者の外科手術による死亡率は正常者の2〜3倍に及ぶとしている.これらの症例の麻酔管理は困難なものの1つであり,麻酔中の状態を把握するためのモニターとして,心電図,動脈圧,静脈圧,血中ガスの測定などが必要であり,また除細動器,Pace-maker,人工心肺など,直ちに重篤な循環系の合併症に対処するための器機および薬品の準備,さらに重症例で外科的治療が可能な例では,心臓手術を行ないうる準備が必要な場合もある.

内分泌障害の麻酔

著者: 青野一哉 ,   原野清

ページ範囲:P.767 - P.772

はじめに
 内分泌障害を伴うpoor risk症例の頻度はそれほど多いものではないが,内分泌障害の存在に全く気付かないで麻酔を安易に行なうと,思わぬ障害に遭遇することがある.特に救急手術の場合にその危険性が大きい.したがつて内分泌障害を疑わせる症状があれば,検査を追加して異常を発見し,可及的良い状態で麻酔が行なえる様努力すべきである.また麻酔剤や麻酔法の選択もさることながら,麻酔中に発生した異常に対していかに迅速に対処するかが,この分野に共通して重要といえる.以下,内分泌障害のうち麻酔上問題となるもののみを取り上げ,それぞれの場合の注意点について概説した.

座談会

ハリ麻酔の問題点

著者: 谷美智士 ,   神山守人 ,   許瑞光 ,   山村秀夫

ページ範囲:P.802 - P.816

 復交以来,日中交流が民間段階で頻々と往き交つている現在,医療面においてもその情報交換は中華医学雑誌の復刊に見られるように積極的に進められています.中でも一時,新聞などで国民的関心の対象となつたハリ麻酔も,今や実際的な医療技術としての見方が定着したかに思われます.
 今回,早くからハリ麻酔を研究され,実際の手術に多数の成功例をお持ちの先生方にお集りいただき,その実際面における問題点を中心にお話しいただきました.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・16 胃疾患の肉眼診断・8

Ⅳ.巨大すう襞症の鑑別

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.740 - P.741

1.肥大性胃炎hypertrophic gastritis
 本症の定義については多くの議論があるが,筆者はこれを体部腺の単純肥大(simple hypertrophy)に限定して使用しており,それはSchindlerの腺性肥大性胃炎(glandular hypertrophic gastritis)と同義語である.臨床的にメネトリエ病または巨大すう襞症とよばれるものには病理学的にかなり異なつた病変が含まれている.肥大性胃炎には,症例42のようにびまん性に体部粘膜が肥厚しそのすう襞は脳回転のような外見を呈するものと,症例43のように限局性(localized hypertrophic gastritis)に生ずる場合がある.症例44はびまん性肥大性胃炎の大彎部粘膜がさらに限局性に腫瘤状に隆起した例である.症例45は胃体上部の著明な巨大すう襞性変化をきたしているが,さらにこの例では胃角部前壁にレリーフ集中を伴うⅡcの所見がみられる.この症例はたまたま良性の肥大性胃炎にⅡc型の早期癌が合併したもので,このような症例ははなはだまれであるがボルマンⅣ型癌との鑑別が必要である.

対談

中国医学をめぐつて—ハリ麻酔を中心に

著者: 中島健蔵 ,   長谷川泉

ページ範囲:P.817 - P.821

ハリ麻酔の実際
 長谷川 先生は,日本中国文化交流協会の理事長として画期的な意義を持つた実践活動をされているわけですが,戦後に中国へは何度くらい行かれましたか.
 中島 57年以降で12回.戦前は行つたことがありません.

世界の手術室・2

アメリカとスウェーデンのしゃれた病院

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.822 - P.824

 アメリカとスウェーデンのおしやれな病院の手術室をのぞいてみる.ロスアンゼルスのカイザー財団病院とストックホルムのダンデリード病院である.

学会印象記

第73回日本外科学会総会から

著者: 片岡一朗 ,   庄司佑 ,   有森正樹 ,   北条慶一

ページ範囲:P.825 - P.828

 今年度は会長陣内伝之助教授によつて,4月1日から3日間,国立京都国際会館において開催された.
 今学会における特異とするところは,外科との関連ある各科との合同シンポジウムでこれに関しての経過をみると,昭和44年度,第70回本学会総会(槇会長)時に「あり方検討に関する委員会」が発足され,評議員選任法が改められた.次いで昭和45年度,斉藤淏会長時には「総合調整特別委員会」と発展的に改称された.これは近時,外科学の進歩に伴い,専門外科に細分されて多くの専門学会ができ,各専門分野で討議されるようになつてきたため,各分科会の横の連合がとだえがちになつたため,これを連合するという意味で,それぞれの外科系学会に所属する方々の参加を求め,教育,訴訟など,その他種々の問題について検討するために本会が発足され,さきに本委員会(斉藤委員長)から"連合"に関する答申書が陣内会長に提出された.

第58回アメリカ外科学会

著者: 松尾泰伸

ページ範囲:P.829 - P.830

 1972年10月2日から6日に亘りサンフランシスコでアメリカ外科学会第58回大会が開催され,幸いにしてそれに参加する機会をえたのでその印象を記してみたい.
 本学会はFranklin H.Martinの主唱により1910年に始まり,その意図するところは"inviting every man in the United States and Canada who is interested in surgery to observe the principalclinics in one of the large medi-cal centers"であつた.今回は,予備的な報告によれば,北米以外の全世界で49ヵ国以上から500人以上の外科医が学会出席を登録しているとされ,フィリッピン,フランス,スイスからは専用チャーター機で集団参加があると報じられていた.

論説

胃切除後の縫合不全における病態生理—特に血中尿素窒素(BUN)測定値とその診断的価値について

著者: 佐藤薫隆 ,   松林冨士男

ページ範囲:P.839 - P.846

はじめに
 近年,胃切除後の縫合不全発生率は2%前後1-2)に低下しているが,その死亡率はいまだに約40%の高率を示している.したがつて死亡率の改善には,縫合不全に対する早期診断が望まれる.
 縫合不全の診断については,従来から「発熱,腹痛,デファンス,白血球増多」,「X線造影剤の漏出」などの所見があげられているが,縫合不全は胃切除後の早い時期に発生することが多いので,前者の所見は合併症のない胃切除症例との鑑別に困難であることが多い.また「造影剤の漏出」所見についても,縫合不全はわれわれの経験(第1表)からもBillroth—Ⅱ法(B—Ⅱ法と略す)胃切除後に発生するので,発生部位が十二指腸断端部であれば漏出所見を得ることはできない.

縦隔結核腫の臨床的検討

著者: 富田正雄 ,   中村譲 ,   窪田芙佐雄 ,   本多静也 ,   白石満州男 ,   矢島健 ,   武富勝郎 ,   綾部公懿 ,   調亟治 ,   内田雄三 ,   辻泰邦 ,   原耕平 ,   中野正心 ,   吉村康

ページ範囲:P.847 - P.852

はじめに
 胸部外科の進歩に伴い,胸腔内手術が安全に施行されるようになつたため,胸部レ線像上,縦隔異常陰影を呈する症例に手術が施行されるようになつた.
 縦隔疾患中,もつとも手術の適応として考えられている疾患は,悪性腫瘍を含めて良性腫瘍が対象となる.これら縦隔腫瘍の診断技術の向上とともに,術前の診断確定は必ずしも困難ではないが,縦隔が重要臓器を有しているため,圧迫症状は重篤であり,たとえ,良性腫瘍であつても,悪性化が憂慮されるため,積極的に手術が施行されているのが現状である.しかし,縦隔異常陰影象に対して,術前の診断確定ができない場合や術前診断が誤まられる場合も少なくない.

症例

巨大な虫垂粘液嚢腫の1治験例

著者: 溝手博義 ,   橋本憲三 ,   石井健一 ,   矢野博道

ページ範囲:P.857 - P.860

はじめに
 虫垂粘液嚢腫はRokitansky(1842年)によつてHy-drops processus vermiformisとし報告されて以来,それと類似の報告が内外文献に散見せられるようになつた.
 最近,私共は右下腹部腫瘤を主訴としてきた57歳の男性で,腸間膜嚢腫の診断のもとに開腹したところ,虫垂粘液嚢腫であつた1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

開腹創瘢痕内の異所性骨形成

著者: 遠藤尚孝 ,   土田博 ,   津島恵輔 ,   山形尚正 ,   三上俊郎 ,   木村正方

ページ範囲:P.861 - P.866

 はじめに
 開腹創瘢痕内の異所性骨形成は報告例も少なくまれな疾患とされているが,その大部分は無症状に経過するため,再手術の時に偶然に発見されたり,また硬結が生じることにより癌の腹壁転移として処理されることが多く,気づかぬままに見逃されている症例も少なくないのではないかと老えられる.われわれは最近,上腹部正中切開後の開腹創瘢痕内に生じた異所性骨形成の3例を相次いで経験したが,うち2例は術前に予め本症と診断し得た.また,摘出した2例について組織学的に検討を加えたところ若干の知見を得たので,自験例の報告とともに本邦報告例を蒐集し,あわせて本症の発生機転について考察した.

Cholecysto-duodeno-colic bandによる十二指腸狭窄の2例

著者: 村田悦男 ,   横山育三 ,   内田満国 ,   中川逸男 ,   山本勝 ,   相良勝郎 ,   迫田八潮

ページ範囲:P.867 - P.872

はじめに
 Cholecysto-duodeno-colic bandは,1世紀以前からHuschke(1845)1),Virchow(1853)2)らの解剖学者により古くから知られていた腹腔内の先天性異常靭帯の1つである.このbandにより種々の障害を引き起こすことがあるが,比較的まれとされている.その臨床報告は,Harris(1943)3)により6例の症例について初めて詳細に記載された.
 われわれは最近,このbandによる十二指腸狭窄に環状膵を合併した症例と,bandにより十二指腸の走向異常をきたした症例とを経験し,いずれも開腹によりbandを確認し,bandの切除により症状の緩解をみた.

薬剤

Craniopharyngiomaに対するBleomycinの局所投与—Bioassayによる嚢胞内容液濃度

著者: 柴田尚武 ,   森和夫

ページ範囲:P.873 - P.875

はじめに
 Craniopharyngiomaは良性腫瘍でありながら,その発生部位が視床下部,下垂体に密接に関連していることなどのため,予後調査をみると意外に成績は良くない.近年Microscopeが本腫瘍の手術にも用いられ,腫瘍全摘への努力がなされているが,なおしばしば再発をおこすものである.その他,Co60,リニアック等による外照射療法や,P32,Au198等の嚢胞内注入による内照射療法も試みられ,さらに最近はBleomycinの効果が報告されている.
 著者は成人で数度にわたる再発に難渋した例に,Om-maya's tubeを利用してBleomycinの嚢胞内注入を行ない,Bioassayにより濃度を測定することができたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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