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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科28巻9号

1973年09月発行

雑誌目次

カラーグラフ

Gardner症候群の典型例

著者: 大塚壽

ページ範囲:P.1188 - P.1194

 Colon polyposis,osteomatosis,epidermal cyst,fibrous tissue tumorをそなえた疾患はGardner's syndromeといわれ,最近では種々のdental anomalyも含まれるようになつてきた.以下に多発性の皮膚腫瘤をそなえた典型的な例を供覧する.

臨床研究

術後逆流性食道炎に対する外科的療法

著者: 塩崎梓 ,   和田信弘 ,   大野徹 ,   殿田重彦 ,   浦伸三 ,   勝見正治

ページ範囲:P.1199 - P.1202

はじめに
 胃全摘あるいは噴門側胃切除術後には,噴門機能の欠除に伴う消化液の逆流が避け難い場合も多く,この為に生じる術後逆流性食道炎が大きな術後愁訴の1つとなつている.それ故,術後逆流性食道炎の予防を目的とした再建法も数多く報告されているが,患者の状態,原疾患殊に胃癌の進行状態,その他種々の条件により再建法が制約を受けることもあり,後に消化液の逆流を惹起し,頑固な胸やけ,嚥下時疼痛などのいわゆる逆流性食道炎症状に患者,医師共に悩まされる場合がある.これに対する治療は上体を挙上した体位での就寝1),薬物療法2),食餌療法などの保存的手段に頼られる場合が多く,消化液の逆流を手術的に改善する根本的治療は再手術という点から消極的になり易く,かかる再手術の報告は少ない3)4)5).私等は種々の保存的療法にも拘らず愁訴の改善を見ず,遂に再手術を行ない,極めて満足すべき結果を得た4例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

胃癌における姑息手術の意義とその適応

著者: 坂本啓介 ,   豊島範夫

ページ範囲:P.1203 - P.1208

はじめに
 胃疾患の診断技術の急速な進歩によつて,早期胃癌が多数発見されるようになつてきたが,それでも,なお外科医の扱う胃癌の大半は進行胃癌であり,すでに治癒の見込みのない末期の癌も少なくない.教室の胃癌症例についてみても,第1図のように,1956〜1970年の15年間の入院胃癌患者1293例中,治癒切除を行ない得たものは,552例で,治癒切除率は入院胃癌例の42.7%,手術例の44.9%に過ぎない.最近の諸家の報告をみても,胃癌手術例に対する治癒切除率は,佐藤1)68%,井口2)38.2%,梶谷3)51.6%,槙4)53.9%,堺5)51.3%で,手術例の半数前後が切除不能か非治癒切除(姑息切除)に終つている.
 これら進行胃癌に対する姑息手術は,主腫瘍のみを切除するいわゆる姑息切除(非治癒切除)と胃空腸吻合,胃および腸瘻造設などの非切除手術にわけられるが,これらの術式は,いずれも古くからあるもので,この一世紀足らずの間,ほとんど変つていない.そして,われわれは,実際に治癒切除不能の胃癌手術に際して,その患者に姑息切除を行なうべきか否か,あるいは,胃空腸吻合や胃瘻,腸瘻をおくべきか否か,その術式の選択,適応の決定に迷う場合が少なくない.従来は,外科医が自己の経験による"かん"によつて手術の場で術式を選ぶことが多かつた.

重複胃癌の検討

著者: 岩佐善二 ,   東弘 ,   広瀬俊太 ,   伊藤英太郎 ,   森武貞 ,   野口貞夫 ,   星野嘉明 ,   藤本二郎 ,   山岡勝彦 ,   広瀬昌成

ページ範囲:P.1209 - P.1214

はじめに
 重複胃癌にはそれぞれが独立して多発した癌であるのか,あるいは1つの癌巣の転移によつて形成されたものであるかというきわめて興味ある問題が含まれている.この点に関しては多くの議論がなされているが,いまだに決定的な解決の方法はえられていない.われわれはこの問題を解決する手掛りをえるために大阪大学第2外科において過去9年間に経験した同時性重複胃癌21例について病理組織学的に癌巣の占居部位の位置的関係,肉眼的形態,組織像を比較し,さらにわれわれの開発した固定組織からの細胞分離法4)5)を応用した顕微分光測光法による核DNA量測定によつて多中心性発癌あるいは管内撒種性転移を検討した.

重篤疾患,外科手術などに続発した胃・十二指腸の急性潰瘍性病変

著者: 島津久明 ,   木下智治 ,   額田克海 ,   宮田道夫 ,   小西富夫 ,   山岸健男 ,   玉熊正悦 ,   金山知新

ページ範囲:P.1215 - P.1221

はじめに
 熱傷7)20),外傷8),各種疾患9)19),外科手術2)8)9)14)18)などにひき続いて,主として上部消化管に急性潰瘍あるいはびらんが発生することはきわめて古くから知られている事実である.これらの病変は通常stress潰瘍と総称され,無症状に経過する場合もあるが,しばしば出血,穿孔などの重篤な合併症を起こし,その成因,治療方針をめぐつて様々な議論がある.しかし,この病態には多彩な要因が複雑に関与するために,これらの問題に関してはなお統一した見解に達していない現状である.
 著者らは過去9年間に重篤疾患,外科手術などに続発した胃・十二指腸の急性潰瘍性病変を62例経験したので,本稿ではこれらの症例について検討した成績を報告するとともに,若干の文献的考察を加えてみたい.

十二指腸潰瘍に対する迷走神経切離兼ドレナージ手術の遠隔成績について

著者: 平島毅 ,   塩田彰郎 ,   原輝彦 ,   竹島徹 ,   川村功 ,   斉藤弘司 ,   武藤護彦 ,   佐藤博

ページ範囲:P.1223 - P.1227

はじめに
 現今欧米ならびに本邦で主として行なわれている十二指腸潰瘍に対する外科的治療法は大別して3通りである。すなわち胃広範囲切除術,迷走神経切離(以下迷切とする)兼幽門洞切除術および迷切兼ドレナージ術である.
 欧米では広く3者の術式が行なわれているが最近の10数年間に胃広範囲切除術にかわつて迷切術が確固たる位置を占めるようになつている.

吻合病とBlind loop syndrome

著者: 後藤明彦 ,   村瀬恭一 ,   林淳治 ,   鈴木貞夫 ,   安永政輝 ,   佐野彰 ,   岡部一誠

ページ範囲:P.1229 - P.1235

はじめに
 消化管手術のさいに行なわれる側々吻合または端側吻合の術後に,消化管の短絡を形成したり,または盲端を生じ,その結果種々の術後障害をきたすことは古くから知られており,これらの状態を吻合病,Anastomosen Krankheitまたは盲嚢症候群,Blind loop syndromeなどの名称で呼んでいる.われわれの教室ではすでに渡辺1)が本症の5例について報告しているが,最近さらに6例を経験したので,これらの症例について検討を加えた.

虫垂炎,とくにリンパ濾胞腫大型と腸間膜リンパ節症の関連について

著者: 田中忠良 ,   下井利重 ,   木附一人 ,   浅野宏 ,   浅野幾子

ページ範囲:P.1237 - P.1242

はじめに
 虫垂炎の治療に関してはその方法が確立されているが,成因はまだ不明で,病理組織学的分類も一定していない.戸部ら1)が指摘しているように,虫垂炎には多くの問題点が残されているが,われわれは虫垂炎として手術した切除虫垂の病理組織学的検索によつて興味ある知見を得たので,特にリンパ濾胞増殖型と腸間膜リンパ節症との関連について考察を加えてみた.

大腸直腸ポリープの治療方針に関する一考察

著者: 武藤徹一郎

ページ範囲:P.1243 - P.1250

はじめに
 大腸直腸ポリープは頻度の多い疾患であり,原1)によれば成人の剖検例の約30%にポリープが認められたという.いたずらにポリープの癌化を恐れればover-sur-geryに片寄り,経過観察が長きに過ぎれば治療時期を誤ることになりかねないであろう.したがつて,ポリープの取り扱いに関する一定の方針の確立が望まれるところである.
 著者は約20ヵ月間ロンドンのSt.Mark's病院においてDr.Morsonのもとで大腸直腸ポリープの病理組織学的研究を行なうかたわら,それらが臨床的にどのように取り扱われているかを見聞してきた.この紙上を借りてSt.Mark's病院での大腸直腸ポリープの取り扱い方を紹介しつつ,私の卒直な考えも述べさせていただいてご批判をあおぎたいと思う.

膵癌の早期診断

著者: 土屋凉一

ページ範囲:P.1251 - P.1254

はじめに
 膵癌は,消化管癌の中で今なお外科的治療成績の悪いものの1つである.この成績を向上せしめる手段としては,手術手技の改良,根治性のより高い術式の開発等,技術的な面で残された問題が若干あるにしても,根本的には一に早期診断,早期手術にあると考えられる.
 約20年前,胃癌の手術成績は甚だ劣悪なものであつた.にも拘らず外科医は時に長期生存例を経験するので,孜々として拡大根治手術を行ない治療成績の向上に努力してきた.しかしレ線検査技術の進歩,内視鏡の開発は早期胃癌の概念を確立し,これら検査法の普及および集団検診への応用は,早期胃癌の発見を可能とし,早期手術により多数の胃癌永久治癒例を得るという飛躍的な治療成績の向上をもたらしたのである.

座談会

胃・十二指腸潰瘍の手術適応

著者: 岡部治弥 ,   武藤輝一 ,   大久保高明 ,   長尾房大 ,   芦沢真六 ,   石川浩一

ページ範囲:P.1258 - P.1271

 石川(司会) 胃・十二指腸潰瘍の手術適応という問題は,消化器病学会でも外科学会でもたびたび論じられておりますし,きょうご出席の方もそれぞれ何回もお話になつていただいたことです.しかし,時の移りとともに皆さんのお考えも少しずつ変わつていくかもしれないと思いますので,本日の段階で,手術の適応ということについてお話を願うことに致します.
 いろいろな点から論ずべきだと思いますが,まず潰瘍の実態,その経過,どういう治療を従来やつていたかというようなところからはじめて,最後に振りかえつて手術適応という経過でやつていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします.

外科医の工夫

拡大直腸切断手術後の会陰創の安全な一次治癒

著者: 北条慶一

ページ範囲:P.1277 - P.1277

 近年,進行癌の外科治療として拡大郭清が1つの方向となつているが,骨盤内臓癌においても然りである.
 骨盤内での領域リンパ節拡大郭清のみならず,とくに下部直腸の進行癌(Dukes C,B.)では,fascia pelvis,m.levator aui,ishiorectal fatty tissueなどのen block dis-sectionが必要である.

手術手技

Intestinal Splinting法—癒着性イレウスに対する簡便な手術法

著者: 山本修三 ,   関淳 ,   松土昭彦 ,   丸谷巌 ,   水口芳春 ,   宮川健 ,   菅家透

ページ範囲:P.1281 - P.1287

はじめに
 一般外科医にとつて腸管癒着の問題は,誰もが日常経験する不愉快な問題である.手術に成功しても癒着による障害を残したり,術後早期に癒着性イレウスのために再開腹を要する場合もある.術後早期の癒着性イレウスの手術は時に困難であり,その結果,吻合病またはPolysurgeryの患者をつくることにもつながる.従来より腸管癒着の機序の解明,これに対する防止法の研究1)2)など種々行なわれているが,いずれも癒着を皆無にすることには成功していない.したがつて開腹術後の癒着性イレウスの発生はある程度不可抗力と考えられる.一方結核性腹膜炎の如く全小腸に癒着があつても,臨床的に全く通過障害を伴わない場合もあり,癒着性イレウスの発生は癒着の量よりも,腸管の閉塞または狭窄をきたすような形の癒着が問題となる.したがつて癒着の発生を皆無にすることが不可能な現在,腸管の閉塞,狭窄を生じないように癒着または腸管の配列をコントロールして,癒着性イレウスの発生を防止できないか,という考え方も成り立つであろう.従来よりこのような考え方による癒着性イレウスの防止手術として,NobleのPli-cation手術3)があり,その有用性も認められている4)5)が,操作に時間がかかること,合併症6)7)等種々問題も多い.

臨床報告

食道癌に対する術前療法の意義

著者: 竹中正治 ,   谷田秀 ,   宗像雅丈 ,   竹内隆 ,   谷田理 ,   阿部重郎 ,   綾部正大

ページ範囲:P.1289 - P.1295

はじめに
 食道癌に対する外科的治療は,新しい手術法の考案,術前の照射療法,化学療法の併用などによつて,かなり良好な成績がえられるようになつてきた.しかしまだ満足できる遠隔成績といえるものではない.その原因としては,食道癌の早期発見の困難性,年齢的因子,長期の摂食制限による栄養状態の低下,過大な手術侵襲などが挙げられる.現在,癌の根治は早期発見,早期治療が遠隔成績を向上させるのに欠くべからざる条件であるが,実際には早期発見は困難で,外科的療法の適応の限界に近いような進行癌が多い.そのような症例には外科的療法の補助的手段として,照射療法をはじめ化学療法がさかんにおこなわれている.ことに遠隔転移病巣に対しては,主として化学療法が期待されるが,症例によつては副作用だけが強調されて,所期の効果をあげえないものが多い.
 Bleomycinは1962年に梅沢ら19)によつて発見されたStreptomyces verticillusから製成され,市川ら5)によつて皮膚癌ことに陰茎癌に著効を示すことがあげられている.最近では,これが食道癌の術前化学療法,または切除不能例に対する化学療法として,有効であるとする報告が多数みられる.

胃サルコイドの1例

著者: 江本正直 ,   日比紀一郎 ,   永井清和 ,   竹中徹 ,   宇多弘次 ,   半羽健二 ,   奥勝次 ,   戸田慶五郎

ページ範囲:P.1297 - P.1300

はじめに
 サルコイドージスは全身性疾患とされ,病変部位は胸廓内が圧倒的に多く,眼,皮膚,その他(表在リンパ腺,神経,骨,筋肉)の順に頻度が低くなる1).胃のサルコイド病変は稀であり,本邦では長村ら(19603))の報告以来およそ11例を数え,3例を除く8例は胃にサルコイド病変を認めるのみである.またサルコイドージスの病因については,古くから諸説がみられるがまだ解決のつかない問題であり,最近免疫学の立場から,リンパ球の機能異常を伴う免疫不全状態との関連が注目されている.
 著者らは心窩部痛,吐血,下血にて切除された胃および所属リンパ節にサルコイド病変を認め,術後施行したKveim testは陰性であるが,ツ反応は陰性,PHAに対するリンパ球の芽球化率の著しい低下を示す症例を経験したので報告する.

胃切除術後に発生した食物による閉塞性イレウスの1治験例

著者: 大橋尚 ,   小林茂樹 ,   津金綏俊 ,   長浜徴

ページ範囲:P.1301 - P.1303

はじめに
 イレウスは外科医にとつて非常に重要で,日常よく遭遇する疾患である.この原因としてはいろいろなものがあるが,その中でも閉塞によつて起こるイレウスの発生頻度は,全イレウスの約3.9%とされている1).閉塞の原因としての異物は種々のものがあげられているが,食物に起因する症例についての報告もなかには散見されている.しかしながら胃切除術後の食物によつて起こるイレウスは本邦では少なく,現在まで11例の報告があるのみで非常にめずらしいものである.
 最近われわれは胃切除術後の患者が,一度に多量の糸コンニャクを摂取したために発生したイレウスの1治験例を経験したので,これに文献的考察を加えて報告する.

Crohn氏病に腸石嵌頓を伴つた腸閉塞症の1例

著者: 内田道男 ,   岩佐裕 ,   根本浩介

ページ範囲:P.1305 - P.1309

はじめに
 消化器管内結石は比較的まれなものであるが,今日まで多くの報告例がある.しかし腸石により腸閉塞症を併発した例は文献上まれなものとされている.最近私達は狭窄型のCrohn氏病の口側に腸石が形成され,この結石の嵌頓によつて急性腸閉塞症を起こした興味ある1例を経験したので報告する.

胃,回腸,盲腸の消化管重複症の3治験例

著者: 笠井敏雄 ,   松岡潔 ,   島津栄一 ,   伊藤保憲 ,   溝淵正行

ページ範囲:P.1311 - P.1315

はじめに
 消化管重複症は舌根より直腸にいたる全消化管に発生する比較的稀な先天性奇形で,1507年Benevieniにより腸管嚢腫として報告されたのが最初であり,本邦では1923年田村10)が同じく腸管嚢腫として第1例を報告している.多数の集計例としては,欧米ではGross1)(68例),Dohn2)(315例),本邦では若林10)(37例,1964年),河野11)(49例,1966年),石田12)(64例,1967年),池田13)(74例,1970年)等の詳細な報告がある.
 われわれは,腸閉塞症状を呈した生後6ヵ月の女児,腹部腫瘤の診断により開腹術を行なつた61歳の女性,胃粘膜下腫瘍,早期胃癌の診断により開腹術を行なつた64歳男性,計3例の消化管重複症を経験したので,いささかの文献的考察を加え報告する.

消化性潰瘍穿孔をきたした腸管重複症の1例

著者: 新井政幸 ,   藤間弘行 ,   武田文和 ,   斉藤脩司 ,   町谷肇彦 ,   角田洋三

ページ範囲:P.1317 - P.1319

はじめに
 重複腸管が,異所性胃粘膜を有することは必ずしもまれではないが,これに消化性潰瘍を合併して穿孔をきたすことは,外国文献でも極めてまれであり,わが国では,われわれの知り得た限りではその報告をみない.
 われわれは,回腸に付着した重複腸管が異所性胃粘膜を有し,消化性潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎をおこした1例を経験したので,ここに報告する.

脂肪腫による空腸重積症の1例

著者: 吉原太郎 ,   吉成元希 ,   永松久尚 ,   猪口嚞三

ページ範囲:P.1321 - P.1324

はじめに
 腸重積症は臨床上しばしば遭遇する疾患でその多くは小児に発生し,しかも全体の約70〜80%は2歳以下の乳幼児の回盲部に見られる.これに反し,成人における腸重積症は決して多いものではない.
 最近,腹痛を主訴として来院し,開腹術により粘膜下腫瘍に起因した老齢者の空腸重積症を経験したので若干の考察を加え報告する.

腸管嚢腫様気腫の1例

著者: 竹中正治 ,   谷田秀 ,   村上敏

ページ範囲:P.1325 - P.1328

はじめに
 腸管嚢胞様気腫(Pneumatosis cystoides intestinalis)は,1825年にMeyerによつて初めて報告され,本邦においては三輪によつて紹介されている.文献的には本症の報告は150余例で,非常にまれな疾患と考えられる.最近,私共は術前に大腸ポリーポージスと診断し,手術をおこなつた症例のなかに,回腸および下行結腸にそれぞれ不連続性に,広範囲に拡がつた嚢胞様気腫を経験した.このような疾患の存在を認識し,典型的な所見を呈する場合には,術前診断は決して困難でないと考えられる.注腸透視などの場合には,大腸ポリポージスとの鑑別に注意を要するものである.

潰瘍性大腸炎にみられたtoxic megacolonについて

著者: 豊島宏 ,   内木詢一 ,   石井宏 ,   小川威示 ,   板東隆文 ,   山本英一

ページ範囲:P.1329 - P.1333

はじめに
 重症潰瘍性大腸炎の経過中に結腸の拡張をみとめる症例が注目されはじめたのは,比較的最近で1950年代のことである.Bockus,Roth一派は2)26),これを"toxic dilatation of the colon","toxic aganglionic mega-colon"と呼んだ.その後Marshak16),McInerney18),Norland22)らによつて多数の自験例にもとづいた貴重な論文が次々と発表されている.本邦では井上8),久保田13),槙15),名尾20)らの報告があるが典型的な症例は極めて少ない.
 Marshak16)が"striking colonic distention with ex-treme toxicity"と表現しているように本症は潰瘍性大腸炎のもつとも劇的な合併症の1つであるが,その成因や治療法については未解決の点が多い.われわれはrelapsing-remitting type3)の急性増悪期に発症した症例を経験したのでこれをもとにして問題点を検討した.

直腸悪性黒色腫の1例

著者: 加藤金吾 ,   宮崎泰弘 ,   原田憲久 ,   山田公雄

ページ範囲:P.1335 - P.1338

はじめに
 悪性黒色腫は皮膚および眼球に原発することが多く,消化管系に発生することはまれだとされている.われわれは直腸肛門部に原発した悪性黒色腫の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

胆のう平滑筋肉腫の1例

著者: 黒柳弥寿雄 ,   安江満悟 ,   加藤久 ,   桜井邦輝 ,   日比野清康 ,   佐藤秩子

ページ範囲:P.1339 - P.1341

はじめに
 原発性胆のう肉腫はまれな疾患であり,なかでも平滑筋肉腫は更にまれなものに属する.愛知県がんセンターにおいて,1965〜1970年に経験した胆のう癌38例に対して肉腫は1例のみであつた.本邦では第5例目にあたると考えられるので報告する.

きわめてまれな先天性総胆管奇形の1例

著者: 亀山仁一 ,   内海範夫

ページ範囲:P.1343 - P.1347

はじめに
 胆道系は教科書的,典型的な走行,形態を呈さない場合が非常に多いので,胆道系の手術に際しては十分注意する必要がある.
 最近著者らも,62歳の男性で背部への放散痛を伴う右季肋部痛,発熱,黄疽,悪寒戦慄,間歇的な右季肋部腫瘤のある患者の手術を行なつたところ,きわめてまれと思われる先天性総胆管奇形の1例に遭遇したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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