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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科29巻12号

1974年12月発行

雑誌目次

特集 一般外科医のための小児外科

腸重積症

著者: 秋山洋

ページ範囲:P.1379 - P.1384

はじめに
 小児外科領域で腸重積症は古くから知られている疾患であり,しかもそけいヘルニアに次いで症例の多い疾患で,外科医であれば本症を経験しない人はほとんどないといえる.しかし,最近の小児外科の進歩にともなつて他の重症小児外科疾患に比べ比較的軽視される傾向にありがちであるが,症例が多い関係上,小児外科的疾患のなかでも重要な疾患であることはいうまでもない.事実,本症の治療も一般小児外科の重症患児の患者管理の進歩にともなつて著しく向上されてきている.
 小児の腸重積症は特発性回盲部腸重積症,憩室,ポリープ等腸管の器質的疾患に起因する腸重積症,開腹術後における腸重積症などがみられるが,その大多数は原因不明の特発性回盲部腸重積症であり,今回はこの回盲部腸重積症について,われわれの経験した症例にもとづいて特に診断面,治療面について述べたいと思う.

先天性幽門狭窄症

著者: 植田隆

ページ範囲:P.1385 - P.1388

はじめに
 先天性肥厚性幽門狭窄症というのは,小児外科では,数も多いし,手術が簡単容易で,初心者でもやれるので,そけいヘルニアと同じような極めて普遍的な手術となつている.しかし昔は,特にわが国では小児外科が遅れて出発した故,この疾患が恰好の外科手術の対象とは知られず,小児内科医がアトロピン療法など保存的治療で頑張つていた.一方一般外科医は,本症の特異な体液アンバランスに気付かず無知な輸液を実施し,また,手術術式も胃腸吻合を実施するという無茶苦茶な外科医がいた.

急性虫垂炎

著者: 織畑秀夫 ,   島本悦次 ,   藤本栄四郎 ,   橋本文教

ページ範囲:P.1389 - P.1393

はじめに
 急性虫垂炎に対する虫垂切除術は外科医として最初のメス下しの手術であり,いわゆる開腹手術としても最初に行なう手術である.手術としては最も初期の外科医の手術ではあるが,反面虫垂炎の炎症の進行した時期には,多種多様の形態を示すために時には非常に難しい手術でもある.すなわち虫垂炎の手術は非常に古いが,また常に新しい,難しい手術といえる.特に幼少児および高齢者においては診断が難しいために手おくれになる場合が少なくなく,この意味からも難しい手術といえる.

鎖肛—病型に対する国際分類案の紹介

著者: 森田建 ,   石原通臣 ,   斉藤浩 ,   金子十郎

ページ範囲:P.1395 - P.1402

はじめに
 鎖肛という言葉は,肛門直腸の奇形を総括した意味に用いられており,約5,000の出生に1例の割合で発生するとされ,消化管奇形のなかでは最も多いものである.
 鎖肛の多くは新生児期にイレウス症状をきたし救急手術を要するが,外科的治療の究極の目的は正常な排便機能を有する肛門を手術的に再建することにある.したがつて本奇形に含まれる種々な病型を的確に診断し,それに適した治療方針,手術術式を選択することが要求される.

臍帯ヘルニア

著者: 池田恵一

ページ範囲:P.1403 - P.1407

Ⅰ.一見して診断可能である.しかしいろいろの型がある
 ここ10年来,新生児外科がさかんになり,今まで放置されていた新生児が救命されるようになつた.これらの救急手術を必要とする新生児は,生後48時間以内に発見して処置すれば予後が良好なことから,小児外科では生後48時間以内をgolden hourと称しているが,その診断法が普及していない為か,生後3〜4日を経過して来院するものも少なくない.これらのなかにあつて,視診だけで診断可能な疾患として,鎖肛と臍帯ヘルニアが挙げられる.しかし鎖肛は一見して外肛門括約筋が正常位に存在するものが多いためによく肛門部位を精査する必要があり,見誤つて生後3〜4日目に嘔吐が始まつて来院することが多い.これに比べ,臍帯ヘルニアは,腹壁中央部の極めて目立つた奇形であるため,出産直後あるいは出産中でも判明しうる疾患である.すなわち,一見して診断可能な唯一の疾患といえる.しかし,本症は新生児外科の進歩した今日でも30〜40%の死亡率があり,出産直後からの正しい治療法によつて初めて救命しうるものである.
 内臓が薄い膜(主に腹膜と羊膜)に被われて臍部から突出したものが臍帯ヘルニア(omphalocele)であるが,これにはいろいろの諸類があり発生原因も異なつている.

先天性横隔膜ヘルニア—特に新生児期Bochdalek型ヘルニアの治療上注意を要する点について

著者: 駿河敬次郎 ,   倉繁徹昭

ページ範囲:P.1409 - P.1413

はじめに
 小児期に外科的治療の対象となる先天性横隔膜ヘルニアには色々の病型があり,"Bochdalek型ヘルニア",食道裂孔ヘルニア,後胸骨ヘルニア等があるが,その中Bochdalek型ヘルニアは新生児外科領域では最も重要である(付図).
 Bochdalek型ヘルニアはBochdalek2)が1848年にBochdalek孔についてその胎生ならびに異常を記載しているが,今日ではpleuroperitoneal herniaあるいはposterolateal herniaまたは胸腹裂孔ヘルニア等とよばれており,Bochdalekの指摘したものとは多少異つた病型を取り扱つている.

小児救急手術と外科医の心得

著者: 西寿治 ,   角田昭夫

ページ範囲:P.1415 - P.1422

はじめに
 小児外科の対象となる疾患には,救急手術を要するものが少なからずある.Firor1)は,新生児・乳児の救急外科的疾患を,手術の緊急度と治療方法にしたがつて,次の5群に分けて論じている.
 1.必要最小限の術前準備で,緊急手術を要するもの消化管穿孔・先天性胸腹膜裂孔ヘルニア・破裂性臍帯ヘルニア・先天性腹壁破裂症・腸管回転異常による中腸軸捻転

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・28

先天性巨大結腸症の診断

著者: 佐伯守洋 ,   秋山洋 ,   清水興一 ,   森川康英

ページ範囲:P.1376 - P.1377

 先天性巨大結腸症(Hirschsprung病,aganglionosis)は,腸管に分布する壁在神経節細胞の欠如が病変の本態であり,診断の確定は病理組織学的検索によつてなされるものである.術前診断法としては,近年,従来より行なわれてきたレ線学的検査および直腸生検に加え,肛門内圧測定或はアセチルコリンエステラーゼ(Ach E)等の酵素活性を検する組織化学的検索がとり上げられるようになり,極めて有用な検査法として認識されてきている.
 胎便の排泄遅延,腹満,嘔吐等を主訴とする患児には,まず腹部単純レ線撮影を行ない,第1図の如く腸管全体のビマン性ガス像,拡張結腸像,直腸内ガスの欠如,等の所見が認められれば本症を疑い注腸造影を行なう.

クリニカル・カンファレンス

鎖肛治療をどうするか

著者: 佐伯守洋 ,   永原暹 ,   宮野武 ,   飯島勝一

ページ範囲:P.1426 - P.1436

《症例》
 患児 生後2日,男児
 母29歳,妊娠歴に異常なく,第2子として満期(40週)正常分娩にて出生,生下時体重3,300g.生後1日腹部膨満,2日目より嘔吐出現,胎便の排泄なく,肛門がないことを発見され,産科医より転送された.この間尿中に緑色の胎便様のものが混ずるのを認む.

私の意見

沖繩県立中部病院における外科研修

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.1437 - P.1439

はじめに
 沖繩県立中部病院における研修制度は,極めて特殊なように思われる.それは,実際に医師として,第一線の診療を行ないながら研修するからであり,指導医の下で,研修医1人1人に,その分に応じた診療の責任が負わされている.現在の形の研修制度が,いかに発足し,発展してきたか,より優れた研修制度の確立をはばんでいるものが何であるか,を述べていきたい.

術前術後

手指消毒法の研究(Ⅱ)—特にHibiscrub,Hyamine-T,Isodine,pHisoHexの連続洗浄法による効力検定

著者: 古橋正吉 ,   宮前卓之 ,   上田伊佐雄

ページ範囲:P.1443 - P.1450

Ⅱ.臨床的検討
 5.各消毒薬の手洗い効果の比較
 検討方法は前述した実験2と同じである.ただし手洗い時間は3分,3分計6分間とし手指から肘までとした.手洗い後ゴム手袋着用前に各消毒薬原液2mlをとり両手から肘までの皮膚全体にぬりつけ消毒持続効果をみた.
 1)ヒビスクラブ 素洗い時の脱落菌数は18,000〜1,410,000で個人差,季節差(これについては別に述べる)がある.最初の3分間手洗い後には2,100〜176,000で約90%の減菌率を示し,次の3分間の手洗い後は菌数0〜15,800で減菌率97〜99.9%である.時間経過後の脱落菌数は1例を除きほぼ手洗い終了時と同じで著しい増菌の傾向はみられない(第4図).

臨床報告

Saint's Triadの1症例

著者: 宮城伸二 ,   石橋干昭 ,   横田広夫 ,   城所仂

ページ範囲:P.1451 - P.1454

はじめに
 従来,わが国では比較的まれといわれていた結腸憩室の報告が診断学の進歩につれ多数見られるようになり,もはやそう珍らしい疾患ではなくなつた.今回われわれは結腸憩室,胆石症,食道裂孔ヘルニアの3者を合併したSaint's triadの1例を経験したので報告する.

胃切後十二指腸閉塞をきたした柿胃石症例

著者: 秋本龍一 ,   中川原儀三 ,   正司政夫 ,   小山文誉 ,   矢ヶ崎英樹

ページ範囲:P.1455 - P.1458

はじめに
 胃石は,生体内で生ずる他の結石と異なつて体外から摂取した食物や異物がある条件の下に形成されたもので,本邦においては,諸外国に比して植物胃石が大部分を占めるとされる.とくに本邦は,中国,朝鮮と並んで柿多産国で,世界のどの国よりも好んで柿を賞味する風習がからんでおり,植物胃石の中でも柿胃石の報告例が圧倒的に多い.
 最近われわれは,胃潰瘍のため胃切除を受けてから15年を経て,柿食後残胃で発生したと思われる柿石により高位イレウスをきたした1例を経験したのでこれを報告するとともに若干の考察を加えた.

癌を併存せるS字状結腸憩室穿孔の1例

著者: 内山元昭 ,   梅崎輝雄 ,   後藤庸嘉 ,   前原史明

ページ範囲:P.1459 - P.1462

はじめに
 消化管憩室は本邦においては十二指腸に高頻度にみられ多くは無症状に経過するため,従来あまり重視されていない.しかし結腸憩室は他部の憩室と異なり炎症その他の合併症を併発する頻度がたかく治療上問題とされねばならない.最近われわれは癌を伴うS字状結腸憩室が自由穿孔し汎発性腹膜炎を起こした症例を経験したので報告し,文献的考察を加えたい.

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「臨床外科」第29巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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