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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科29巻2号

1974年02月発行

雑誌目次

特集 消化管手術と内視鏡

十二指腸・胆・膵の内視鏡診断—手術症例を中心に

著者: 神律忠彦 ,   丸山正隆 ,   大井至 ,   竹本忠良 ,   早川国彦 ,   浜野恭一 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.195 - P.200

はじめに
 消化器外科の領域で内視鏡の果たす役割の主なものは,やはり病変の診断と手術適応の決定につきる.十二指腸,胆,膵におけるその現状と問題点を以下にまとめてみた.枚数に制限があるので,臨床的に頻度が高く,手術的療法の対象となるものを重点的にとりあげた.すでに豊富な経験を有する胃内視鏡検査を基礎にして,十二指腸や胆,膵の内視鏡検査にたずさわる方々が急激に増えている現状に鑑み,これからはじめようとする方々のお役に立てばと思い,多少の技術的なポイントも加え,われわれのグループの経験例を中心にまとめた.書き足りない部分は,この分野の指導的な研究者による文献が多数世に出ているので,それを参照されたい.

下部消化管疾患と内視鏡検査

著者: 蔵本新太郎 ,   吉雄敏文

ページ範囲:P.201 - P.206

はじめに
 下部消化管は上部消化管に比べ従来疾患が少ないとされていたこともあつて,その検査にあたつて苦手意識が先立つことがある.しかし下部消化管の疾患が増加しつつある現状において,検査法および技術の向上と共に上部消化管と同様に精密に検査されねばならない.下部消化管は範囲が長く,かつ検査自体に長時間を要し,また1回のみの検査で十分というより,むしろ2〜3回を要する場合もある.これらのことより苦手意識の中には煩らわしいという感覚が先に立つのは,あるいはやむをえないかも知れない.だがこの感覚が下部消化管検査の最大の難点だと思われる.これを克服するには習熟すること以外にない.内視鏡の進歩はX線読影の進歩を生み,これはさらに撮影技術の進歩,すなわちジャイロスコープのごとき開発につながつてくる.この双方は消化管診断の主役をなすものである.消化管における内視鏡の到達点はさながらトンネル工事のごとく上下から進み,一般的には十二指腸の一部と空腸および回腸の一部を残すのみとなつており,やがて貫通される日も近いものと期待される.

食道

食道癌に対する内視鏡診断

著者: 遠藤光夫

ページ範囲:P.165 - P.172

はじめに
 食道の内視鏡として食道ファイバースコープが開発されてほぼ10年になるが,その間,器械の進歩はめざましく,現在日常の臨床に全く支障なく用いられるようになつた.硬性食道鏡が治療面を主に発達してきたのに比べ,食道ファイバースコープは,診断面を中心に発達してきたので,器械が柔軟で患者への苦痛が少ない,挿入技術が容易である,などの一般的事項のほかに,食道内に観察盲点のないこと,生検および細胞診を併用できること,さらに種々補助診断をおこなえることなど,診断面における機能を十分に果たせることが特徴である.

食道静脈瘤に対する内視鏡診断

著者: 三戸康郎 ,   小林迪夫 ,   井口潔

ページ範囲:P.173 - P.179

はじめに
 従来,食道静脈瘤に対する内視鏡検査は静脈瘤破裂の誘因になるとの考えから,禁忌とされていたが,食道ファイバースコープの開発にともない,その安全性が確認され,現在では,救急出血時の出血源の診断法として,あるいは食道静脈瘤の出血を予知する有力な手段として評価される気運にある.
 とくに,食道静脈瘤出血に対する外科治療の立場からみると,救急手術の成績は現在なお不良であり,予防的手術をできるだけ施行することが望まれるが,この点,食道静脈瘤出血をあらかじめ予知し,予防的外科治療の適応を決定する手段としての内視鏡診断の意義ははなはだ大きいと考えてよい.しかしながら,現在まで報告されている食道静脈瘤の内視鏡分類は2)6)7)8),静脈瘤出血の予知,ひいては外科治療効果の判定など,実地臨床において,真に要求される分類としては,なお不満足な点が多いように思われる.

胃良性疾患診断における内視鏡の価値

著者: 春日井達造

ページ範囲:P.181 - P.187

はじめに
 胃の良性疾患にはいろいろあるが,その頻度からみると日本人では慢性胃炎がもつとも多く,私どもの調査では外来胃愁訴患者の約70%を占めていたが1),外科的処置の対象となることはきわめてまれであるので本稿では言及しない.
 慢性胃炎についでしばしばみられる胃疾患は胃潰瘍である.本症は一般に内科的治療の対象であるが,難治性潰瘍や再発潰瘍,穿孔や出血をきたした潰瘍などは外科的処置にゆだねられる.その他胃の良性腫瘍も普通外科的処置の対象とはなりにくいが時に手術的処置を要することがある.

胃悪性疾患診断における内視鏡の価値—外科の立場から

著者: 城所仂 ,   池口祥一

ページ範囲:P.189 - P.194

はじめに
 現在われわれ外科医が,胃手術を行なう場合常に問題となるのは,手術の適応性と手術術式,切除範囲の決定である.
 良,悪性の術前診断が確定しないと,また病変部位,拡がりの範囲,数等がはつきりしないと,手術方針が決定できない.過去になされてきたような開腹をし,臓器をふれてから,はじめて診断を下し,手術方針を決定していた時とちがい,現在は種々の診断技術が開発され,進歩し,術前に胃内腔をほとんどくまなく観察できるようになり,生検組織診,細胞診を行なうことにより,正確な術前診断を下し得る時代となつた.外科医として,内視鏡診断の目をやしなうことは,優れた手術適応の判断をなしえることにつながる.

座談会

消化器外科と内視鏡

著者: 安井昭 ,   高木国夫 ,   古沢元之助 ,   竹本忠良 ,   武藤徹一郎 ,   相馬智 ,   村上忠重

ページ範囲:P.214 - P.232

 手術適応の判定,手術術式の選択を中心として,消化器外科における内視鏡の役割はますます重要になつてきました.それと共に,従来の内視鏡診断学をもう一歩前進させるにはどうすべきか,また生検など関連検査にまつわる実際上の問題をどう解決すべきか,など数々の課題も指摘されています.今回は,第一線の先生方の貴重な経験をもとに,内科側からの意見もまじえ,現時点での外科からみた内視鏡の問題点を話し合つていただきました.

カラーグラフ

胃癌の切除範囲決定に対する内視鏡的色素着色法の応用

著者: 鈴木茂 ,   小野邦良 ,   山田明義 ,   鈴木博孝 ,   遠藤光夫 ,   竹本忠良 ,   中山恒明

ページ範囲:P.156 - P.163

 胃癌の切除範囲決定にはしばしば迷うものである.このような症例に対し,内視鏡的色素着色法を応用することにより,その癌浸潤範囲を明確にすることができる.以下に示す症例は,この着色法によつてきわめて明瞭に癌浸潤範囲が描出され,切除範囲決定も容易となつたものである.

手術手技

Z-plastyの手の外科における応用

著者: 三浦隆行 ,   中村蓼吾 ,   前田敬三 ,   木野義武

ページ範囲:P.235 - P.240

はじめに
 1856年Denonvilliersの最初の報告以来すでに1世紀余にわたり形成外科の基本手技としてその手技の簡単なにもかかわらず主要な地位を占め続けているZ-plas—tyは,Davisの臨床的応用に関する一連の報告により広く普及されたといわれている.Z-plastyの基礎理論に関しては,Limberg4)5)によりつとに幾何学的な解明がおこなわれており,その平面幾何学的解析のみでなく,立体幾何学的な認識も近年Limberg5)6),Furnas1)らにより確立せられた.さらにこれら数学的期待値と生体における臨床効果との差異についてもFurnas2)らの研究がみられる.本邦においても倉田3),添田10),田島11),難波7)8)ら多くの発表がみられているのでZ-plastyの基礎理論に関しては簡単に触れるのにとどめ,本法の手の外科における応用を中心として述べてみたい.
 Z-plastyの臨床的応用を考える場合,如何なる効果を期待して計画,立案をおこなうかがまず大切である.Z—plastyの臨床効果としてはいろいろのことが考えられているが,手の外科における機能を中心として考えれば, 1.距離延長の効果 2.縫合線の方向をかえることによる拘縮予防の効果 3.webをcleftにかえる立体的な効果 4.組織移動の効果を期待して手術計画をおこなつている,以下その各々について検討をおこなう.

臨床研究

四肢動脈閉塞症における色素希釈法と臨床的意義について

著者: 西島早見 ,   三木久嗣

ページ範囲:P.241 - P.247

はじめに
 近時血管外科的手技は著しく進歩普及し,各領域に応用されて優れた成果があげられている.しかし,四肢動脈の閉塞性疾患は,本邦においては欧米と異なり,主として細少動脈の閉塞性病変を呈するBuerger氏病に由来するものが多く,その治療成績はいまだ満足すべき段階には達していない.
 私ども従来から各種治療法について検討を重ねてきたが,治療に当たつては罹患肢の循環状態を明らかにすることが重要であると痛感してきた.罹患肢の循環状態は,現在一般には主として動脈造影法や指(趾)先脈波記録法などによつて観察されているが,これらは循環状態を機能的に把握観察する意味においては必ずしも満足できる方法とはいえない.そこで私どもは,色素希釈法による循環状態の観察を試み,興味ある成績を得たので報告し諸賢のご批判を仰ぎたいと思う.

臨床報告

後腹膜脂肪肉腫の1例

著者: 藤田道夫 ,   田村欣一 ,   村上信乃 ,   登政和 ,   木下裕信 ,   木村泰三

ページ範囲:P.251 - P.254

はじめに
 後腹膜腫瘍とは従来横隔膜から骨盤無名線までに存在し,腎,副腎,膵等と無関係の腫瘍と規定されており,最近になつて骨盤部に腫瘍が拡大している場合にも同様の意義が認められている.元来,後腹膜腫瘍はまれなものであり,腫瘍全体の0.2%をしめるにすぎない.そのなかでも後腹膜脂肪肉腫はきわめてまれである.われわれは下腹部腫瘤を主訴として来院し,検査の結果,後腹膜腫瘍と診断し剔出術を施行,病理組織学的に脂肪肉腫であつた1例を経験したので,これを報告し若干の文献的考察を加えてみた.

甲状腺結核—その1症例と本邦報告例の統計的観察

著者: 大黒博 ,   田中清雅 ,   西田進 ,   北島修哉 ,   沼田俊三

ページ範囲:P.255 - P.259

はじめに
 甲状腺結核はもともとまれな疾患であるが,結核症そのもののいちじるしい減少に伴つて,近年ではその報告もほとんどみられなくなつている.
 最近われわれは本症の1例を経験したので本邦報告例とあわせ検討し,若干の文献的考察を加え報告する.

悪性葉状嚢胞肉腫の1例

著者: 吉岡照樹 ,   加藤正雄 ,   大野秀雄 ,   二村利一郎

ページ範囲:P.261 - P.265

はじめに
 乳房の葉状嚢胞肉腫は,1838年Johannes Müllerによつて,はじめて詳しく記載された.その後,臨床的にまた病理組織学的に特異な面が注目され,乳腺腫瘍のなかでも比較的まれな,興味ある疾患とされている.この腫瘍はかなり巨大になるにもかかわらず,本来は良性腫瘍であるとされ予後も良好であるが,まれには悪性のものも報告されている.われわれは左乳房の腫瘤を主訴として来院した患者に試験切除を行ない,組織学的に悪性の葉状嚢胞肉腫と診断し,単純乳房切断術を施行した症例を経験したので報告する.

血尿を主訴とした腎動静脈瘻の1例

著者: 宮下厚 ,   星野嘉伸 ,   北川竜一 ,   鈴木博夫

ページ範囲:P.267 - P.271

はじめに
 動静脈瘻の生体における分布範囲は非常に広いことが知られている.その中で,腎実質内のものはめずらしいとされてきたが,最近,血管撮影の普及とともに報告例はふえている.
 動静脈瘻が臨床的に問題になるのは,一般に血行動態に対する影響であるが,腎の場合は血尿も重要な治療目標である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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