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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科29巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

特集 老人外科—老年者胆道系疾患の外科

老年者胆石症の特徴

著者: 志村秀彦

ページ範囲:P.585 - P.590

はじめに
 人間齢を重ねる毎に体力の滅退をおぼえ,若い頃には経験もしなかつた種々の異常を訴えたり,放置しても2,3日で癒つた軽い病気が変にこじれたり,治癒が長びいたりしがちである.特に高齢となると,疾患に対する生体の反応が減退するため,医学常識とされているような特有な症状が表面に現われないのが普通である.従つて早期診断が困難となり,治るべき疾患も最悪の状態にまで追いやる結果ともなりかねない.胆石症を例にとつても,通常,発熱,上腹部疝痛などの特有な症状によつて診断のきつかけが得られるが,高齢者ではむしろかかる定型的症状を欠くことが多い.これが老人外科のむずかしい処であり,診断はもちろんのこと,手術適応を決める上に大きな障壁となつている.高齢者とて早期に,しかも適切な手術適応下に手術を行なえば,ほとんど手術による危険性はなく,むしろ病勢の判断を誤つたり,経過を傍観する方が危険である.筆者は高齢者胆石症の病態およびその臨床的特徴について概説したい.

老齢者胆石症の処置

著者: 松代隆 ,   中村雍志 ,   小林信之 ,   井上進

ページ範囲:P.591 - P.597

はじめに
 老齢者の胆石症は他の疾患ではみられない,いくつかの胆石自体による重篤な合併症を生じることがある.これが老齢者に特有な種々の基礎疾患とあいまつて,その予後を不良ならしめる大きな原因となつている.事実,最近における胆石症の手術死亡率は通常は1%以下であるにもかかわらず,老齢者ではいまだに10%前後の報告も稀ではない.したがつて老齢者の胆石症の治療に際しては若年者と異なる対策が必要である.ここでは自験例における手術成績を基として老齢者胆石症の特徴をのべ,これらに対する著者らの治療面における考え方をのべてみたいと思う.なお,何歳以上を老齢者と定義するかについては定説がないので,この論文では一応70歳以上を老齢者とし,49歳以下,50歳台,60歳台と比較検討した.

老年者無症状胆石症

著者: 大藤正雄

ページ範囲:P.599 - P.606

はじめに
 腹痛,発熱,黄疸などの臨床症状を持つ胆石症が手術適応とされることは,内科外科を問わず,ほぼ一致した見解である.しかしながら,ほとんど症状のみられない症例,とくに過去および現在ともに胆石症の臨床症状を経験していない無症状胆石症については将来の発症や胆嚢癌の合併を考慮して,予防的に手術すべきであるとの意見が主として外科側から主張されており,胆石症としての発症によつて手術適応とすべきであるとの意見が内科側では受け入れられている.この問題について,なおはつきりと一致した見解は得られていない.
 一方,外来,人間ドックあるいは剖検などにより胆石保有者を観察する機会が最近著しく増大しており,しかも無症状胆石症の少なくないことが認識されてきている.

老年者における胆道癌の臨床

著者: 小坂進 ,   中川正

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに
 近年,外科的療法ならびに患者管理技術の進歩によつて,老年者に対してもかなりの手術が青・壮年者層とさほど変わることなく,順調に実施されているが,胆道系の悪性腫瘍については,早期診断が困難で,その多くが閉塞性黄疸を伴つているため,術前の全身状態がわるく,老若を問わず,手術成績が他の疾患に比べて不良である.
 このように,若・壮年層においても,容易ではない手術療法を,老年者を対象に如何にして成功させてゆくかということは,老人外科における重要な課題であると考えられる.私共は胆道癌の治療方針として,腫瘍による胆管閉塞部の積極的な切除と有効確実な胆道再建の実施に努めているが,その老年症例の手術成績を解析し,肝門部胆管癌の切除など私共の行なつている試みを紹介して諸賢のご参考に供したい.

膵内胆管癌および膨大部癌の病態生理—特に肝外閉塞性黄疸時の肝機能および微細構造の機能からの考察

著者: 菅原克彦 ,   柏井昭良 ,   三谷進 ,   河野信博

ページ範囲:P.615 - P.623

はじめに
 膵内胆管癌および膨大部癌の共通した症状は肝外閉塞性黄疸であるほか,これら疾患は比較的高齢者に多い.したがつて治療対策は単なる病巣部の切除,biliary diversionのほか黄疸の病態生理を理解した患者管理が必要となり,しかも高齢者であることを念頭におかねばならない.早期の病態でこれらの癌が発見されるのはなお少ない現状であり,根治的切除術が行なわれる例は少ない.早期の癌とは切除可能な例を意味せざるを得ないが,この際はもちろん合併症も稀であり,他の管腔臓器癌の術後管理と大差ない.現状では進行癌が多く,したがつて老齢,黄疸のため重篤な合併症をきたし易く,外科臨床上複雑な問題点がある.本稿では肝外閉塞性黄疸症例の肝機能および肝細胞内微細器官特に生体の主要エネルギー産生分画であるミトコンドリアの機能面から肝外閉塞性黄疸時の肝の病態生理を再検討した.

老人の胆道系手術への安全な道—胆石症を中心にして

著者: 林四郎 ,   志賀知之 ,   苅部徳郎

ページ範囲:P.625 - P.631

はじめに
 1973年10月28日に山口市において開催された日本臨床外科医学会総会の席上,「老年者胆道系疾患の外科」と題されたシンポジウムのなかで「老年者胆道系手術への安全なる道」という副題のもとで胆石症,悪性腫瘍による閉塞性黄疸に対する筆者の見解を述べた.本特集においてその概要を述べるが,誌面の制約もあるので,ここでは胆石症にだけ触れることにし,閉塞性黄疸に関する問題は近日発行される「手術」誌上の拙稿を参考にされれば幸甚である.
 さて老人の胆道系手術をより安全なものとする方法として,われわれは如何なる点に留意したらよいのであろうか?老人にかぎらず,安全な手術への道を開くためには適確な手術適応の決定,確実な手術手技,きめこまかい術前から術後にかけての管理の3者を満足させるような努力が何よりも必要なことであろうと常々考えており,これに関する記載もしたことがあるが,老人の胆石症患者に対してはとくにこの点が強調されすぎても過言とはいえまい.

EDITORIAL—あとがきに代えて

老年者胆道系疾患の外科

著者: 卜部美代志

ページ範囲:P.583 - P.584

 近年,老年医学に関する研究が進み,外科学においても老人外科という分野が生まれている.ただ,老人外科では,新生児外科,ないし,小児外科におけると異なり,とりあつかう疾患にも,老人外科として別格視するだけの特殊性に乏しい.それでもなお,本問題のとりあげられる理由は,老化現象という特別の条件下に外科が行なわれるという重要性があるためであろう.
 老化現象として,捉え得る変化は,まず体水分量と基礎代謝とが一致して低下していることである.それから細胞機能の低下と,組織の線維化とである.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・22

急性虫垂炎の術中肉眼所見と病理組織像(Ⅰ)

著者: 松峯敬夫 ,   白川洋一 ,   浮島仁也 ,   青木幹雄

ページ範囲:P.560 - P.561

はじめに
 術中に病巣を見出した際に,的確にその病理組織像を予測することは外科医の基本的技術として不可欠であり,このような「術中診断の目」を養うことが,適切な外科治療にも役立つことは当然である.急性虫垂炎の場合もまた例外ではない.
 ①は当院外科で最近急性虫垂炎の診断のもとに切除した100例の虫垂について,術中の病型診断と病理組織学的診断とを対比させたものであるが,両者は比較的良く一致しているようにみえる.虫垂炎の術中診断は漿膜面の所見から肉眼的に下されるものであるが,これが粘膜に初発する急性虫垂炎の病理組織像と一致することは一見奇異な感じがする.

手術手技

Microvascular Surgeryの組織移植への応用—Free Groin Flapを中心として

著者: 波利井清紀 ,   大森喜太郎 ,   村上不二哉

ページ範囲:P.635 - P.640

はじめに
 1959年Jacobson,Suarezが,はじめてDissecting microscopeを用い直径3mm以下の細小血管の吻合に好成績を収め,Microsurgeryを血管外科の領域へ導入して以来,Microvascular surgeryは外科各分野において画期的な発展をとげつつある.
 われわれは,本法を利用して細小血管の吻合による遊離綜合組織移植(Microvascular free composite tissue transfers)の研究を重ねてきたが,昨年以来多数の臨床例において,その成功をみるにいたつた.今回は皮膚および皮下脂肪の血管柄付遊離皮弁(Free skin flap)の移植という観点より,Microvascular surgeryを利用した組織移植の手術手技の一端を紹介する.

臨床研究

経腹的食道粘膜離断術—肝硬変性食道静脈瘤出血の直達手術法の開発

著者: 平嶋毅 ,   原輝彦 ,   佐藤博

ページ範囲:P.641 - P.645

はじめに
 肝硬変性食道静脈瘤出血に対する外科的治療法は,本邦においては主として選択的減圧手術1,2)と直達手術3,4)が行なわれており,とくに最近においては後者の報告が多くみられる傾向である.直達手術のうちで食道離断術も広く行なわれるようになつてきた.
 1960年Walker5)は過去15年間の食道静脈瘤出血の症例を報告し,そのさい食道離断術は1950年9月に2回の大量出血症例に初めて行なつたとしている.経胸的な食道離断術は2種類の方法に従つて行なわれている.すなわち一つはcomplete transectionとして食道前壁筋および粘膜管の横切離であり,他の一つはmucosal transectionとして食道粘膜外筋縦切開,粘膜管横切離を行なつている.しかしながらこの単純食道離断術は再発が多いとされ,欧米ではほとんど行なわれておらず,本邦において杉浦ら6)によつて経胸的にcomplete tra-nsectionにdevascularizationを加えた改良法として広く行なわれるようになりまた好成績でもある.

胃切除術後の牛乳不耐症と血清Ca濃度について

著者: 小山真 ,   佐藤厳 ,   福田稔 ,   畠山勝義 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.647 - P.650

はじめに
 1914年のSarasin1)による胃切除後の骨軟化症例の報告以来同様な症例の記載は多く,Thompsonら2)は最近,欧米における骨軟化症の原因の第1位は胃切除であるとまで極言しているほどである.
 一方,わが国では1957年池田ら3)が胃全剔後の骨変化につき述べているが,われわれの教室の堺4),庭山5)の広範胃切除後の骨軟化症の第1例の報告までほとんどその方面の報告はみられない.

経中心静脈栄養法の臨床経験と問題点

著者: 真島吉也 ,   樋口道雄 ,   宮司勝 ,   青木靖雄 ,   足立英雄 ,   田代亜彦 ,   滝沢淳 ,   大野一英 ,   山森秀夫 ,   綿貫重雄

ページ範囲:P.651 - P.657

はじめに
 経消化管栄養投与不能例の術前後の管理にあたつて,経中心静脈栄養法(Intravenous Hyperalimentation1))の治療的意義は大きい.1971年以来当科においては主として重症外科患者を対象にDudrickらの方法に準じた経中心静脈栄養法2)を施行し,1973年10月までに当科内で66例,他関連病院34例の合計100例に達した.このうちには小児例7例を含むが,今回は成人例に対してわれわれの経験に基づいた経中心静脈栄養法の実際,臨床成績,施行上の問題点について検討を加えたので報告する.

転移性乳腺腫瘍の臨床経験

著者: 富田正雄 ,   羅向喜 ,   北里精司 ,   田中耕三 ,   綾部公懿 ,   古賀保範 ,   釘宮敏定 ,   調亟治 ,   辻泰邦 ,   中山巌

ページ範囲:P.659 - P.663

はじめに
 転移性乳腺腫瘍は,きわめて稀な疾患であるとされている.第18回乳癌研究会の席上,宮地1)により,本邦での本症36例の報告がされている.原発巣としては悪性リンパ腫が乳腺にみとめられる頻度が高く,36例中13例が含まれている.その他の症例としては白血病6例についで,胃癌5例となつている.前二者については,いずれも全身疾患として乳腺に腫瘍形成をみとめる頻度が高いことを示している.Hajdu2)の報告でも,悪性リンパ腫,悪性メラノーマの乳腺への転移頻度は高い.
 転移性乳腺腫瘍として,全身的疾患としての悪性リンパ腫,白血病の乳腺腫瘍形成症例をのぞけば,一般に悪性腫瘍が乳腺に転移することはきわめて稀であるといえる.

小児リンパ節腫脹の臨床病理

著者: 武藤良弘 ,   脇慎治 ,   鮫島恭彦 ,   内村正幸 ,   石垣実弘 ,   室久敏三郎 ,   土山秀夫

ページ範囲:P.665 - P.671

はじめに
 人のリンパ系は,リンパ管系と補助器官のリンパ装置とに分類される.リンパ管系は,リンパ本幹(lmyphatic trunks),リンパ管(lymphatic vessels),毛細リンパ管(lymph capillaries),リンパ洞(lymph sinus)に区別ができ,リンパ装置(リンパ組織系)は形態的に,リンパ節(lymph node),リンパ小節(lymph nodule)およびリンパ浸潤(lymph infiltration)とに分類される16)
 発生学的に,リンパ節原基は胎生2カ月後期より出現し,胎生4カ月後期にすべて出揃うとされ,これら胎生期リンパ節がリンパ節としてほぼ完成したものになる時期は胎生8カ月より10カ月とされている.リンパ節は末梢より中心方向に向つて走行分布するリンパ道の経過中に一定の揚所に現われ,この部位はリンパ中枢(H. Baum,1926)と呼ばれている.これら中枢は一般解剖学書に記載されているものでも約50カ所あるとされている.このリンパ中枢とは一般に知られたリンパ節(cervical lymph nodes,axillary lymph nodes,in-guinal lymph nodes等)を指し,この中枢に現われるリンパ節の数もほぼ一定している.人体のリンパ節総数は500〜1,000個といわれ,小児,成人を問わずリンパ節数は同じといわれる6)

臨床報告

食道性嚢腫の1治験例

著者: 勝部宥二 ,   一宮源太 ,   中道登 ,   浦伸三 ,   谷口勝俊 ,   和田信弘 ,   江本正直

ページ範囲:P.673 - P.676

はじめに
 近年食道レ線,内視鏡の進歩により食道疾患の診断が著しく向上し,従来稀とされていた疾患に遭遇する機会も増している.
 最近われわれは下部食道の粘膜下腫瘍の診断のもとに手術を行ない,食道性嚢腫と考えられる腫瘤を摘出したので報告する.

肝硬変併存胃癌例に対する胃全摘について

著者: 古賀成昌 ,   古沢元之助 ,   増田英隆

ページ範囲:P.677 - P.680

はじめに
 肝は生体の代謝の中心として,生命維持に重要かつ複雑な機能を有する臓器のため,これが障害されている場合に,外科的侵襲が加えられると,術後肝不全,肝腎症候群など重篤な合併症発現の危険性がある.この肝障害と手術侵襲との関連性は古くから論じられてはいるものの,肝のもつ複雑な機能のため,肝障害時におけるsurgical riskについてはなお明らかでないのが現状である.
 近時,肝硬変を合併した消化器疾患に対する手術の機会が増加しているが,消化器疾患が胃癌の場合胃全摘を施行せざるを得ない場合にも遭遇する.このような場合,手術侵襲はもちろん,胃全摘後には胃切除後とは異なつて,いろいろの術後代謝障害が加わつてくるため,術後の肝に与える影響は大きく,従つてその適応,術後管理には検討すべき多くの問題があると考えられる.

慢性透析患者に発生した胃・十二指腸出血の手術経験

著者: 藤田秀春 ,   渋谷明夫 ,   向仁一 ,   尾内善五郎 ,   斉藤靖人 ,   神野正一

ページ範囲:P.681 - P.684

はじめに
 最近の人工腎臓の普及にはめざましいものがあり,現在多数の患者がその恩恵に浴している.私共の施設では12名の患者に透析療法を行なつているが,その内3名に胃・十二指腸潰瘍の発生と大量の出血をきたし,いずれも手術的に治癒せしめ得た.これらの患者は原疾患である腎機能不全による障害はもとより,長期透析療法に起因する種々の合併症を伴つていることが多く1,2),その術前,術後の管理には特別の配慮が必要である.自験例を報告し,若干の考察を加えてみたい.

小腸腫瘍について—第2報 小腸良性腫瘍(十二指腸良性腫瘍除く)について

著者: 杉山譲 ,   村上哲之 ,   宍戸善郎 ,   田中隆夫

ページ範囲:P.685 - P.688

はじめに
 すでに第1報1)で報告したごとく,教室ではこれまで15例の小腸腫瘍(第1表)を経験したが,今回はこれらのうち第2報として小腸良性腫瘍の2例(十二指腸良性腫瘍除く)について報告する.

DICにて比較的明瞭に造影された胆嚢腺窩症の1例

著者: 大城隆 ,   林宏一 ,   西田清一 ,   中野孚 ,   名和肇 ,   中地徹 ,   上甲泰弘 ,   原乙郎 ,   青木哲哉 ,   古畑正 ,   湯本克彦 ,   金沢築 ,   佐藤正経 ,   石谷直昌 ,   片場嘉明 ,   中村智

ページ範囲:P.689 - P.694

はじめに
 われわれはDICにて比較的明瞭に造影された胆嚢腺窩症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

腹部大動脈瘤下大静脈破裂の1手術治験例

著者: 石倉義弥 ,   小出司郎策 ,   福田豊紀

ページ範囲:P.695 - P.698

はじめに
 腹部大動脈瘤に対する手術は今日では広く,かつかなり安全に行なわれるようになつてきている.しかしながら一旦それが破裂した場合の手術成績はなお不良である.腹部大動脈瘤が破裂すると,後腹膜血腫または,周囲組織への瘻孔を形成することもある.下大静脈瘻を形成するものは,その数も少なく,かつ手術成績もきわめて不良である.われわれは最近腹部大動脈瘤の破裂により下大静脈への瘻孔形成を生じた症例に対し,手術により治癒せしめたので報告する.

肺内異物の2症例

著者: 藪田宗彦 ,   伊藤三則 ,   山口陽 ,   柳沢正弘 ,   蔵本新太郎 ,   加藤治

ページ範囲:P.699 - P.702

はじめに
 肺内異物の症例は文献的に報告例の見られる場合もあるが,針金,縫針等による報告例は少ないように思われる.われわれは最近,異物刺入の記憶にとぼしく,胸痛,血痰,咳嗽等が出現し,その原因が肺内異物によるものであることが判明した2症例について,外科的に異物を摘出し,治癒せしめたので報告するとともに若干の文献的な考察を行なつた.

胃サルコイドーシスの1例

著者: 山際裕史 ,   大西長昇 ,   大西信行 ,   寺田紀彦 ,   篠田勝利 ,   大西長久 ,   福原徹

ページ範囲:P.703 - P.705

はじめに
 胃に生ずる,類上皮結節を生ずる病変には稀ではあるが結核,サルコイドーシスが代表的なものである.従来報告されているsarcoidosisとされる症例が,確実に結核ではないという証拠は実のところ乏しいのである.
 本稿では結核と区別し難いが,類上皮結節に乾酪変性のないこと,粘膜リンパ濾胞から漿膜まで散見されること,肺に異常なく,既往歴にも結核のないこと等から,サルコイドーシスと考えられた胃潰瘍を形成した1例を報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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