icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科29巻6号

1974年06月発行

雑誌目次

特集 胸部食道癌の外科

頸胸境界部食道癌の外科治療

著者: 掛川暉夫 ,   宮川健 ,   酒井忠昭 ,   丸谷巌 ,   松土昭彦 ,   水口芳春 ,   中山隆市

ページ範囲:P.739 - P.742

はじめに
 頸部食道癌の再建術に関してはCrerny以来種種の術式が行なわれているが,現在なお普遍的な再建術式が確立されておらず,したがつて治療成績も期待すべきものがない.特に癌腫が頸部食道より胸部食道に及んでいるような症例は,手術に際し必然的に開胸が要求され,手術侵襲が大となり従つて手術適応の決定が極めて重大となる.また具体的な問題として,この部の癌腫に対しての喉頭全剔の是非,リンパ節廓清の範囲,再建臓器の選択等に関しても幾多の問題を有している.私はこれら両域にまたがる癌腫に対し,頸胸境界部癌なる名称のもとに,これらの外科的治療に関し第70回日本外科学会に発表以来しばしば報告してきた.このような症例は食道癌の中で決して多いものではないが,食道外科に従事するものにとつては未開拓の領域であり,今後の課題の1つと思われる.従つて今回は自験例の成績をもとに問題点について述べて見たい.

食道癌に対する手術療法・放射線療法・化学療法の成績と比較

手術療法の立場から

著者: 佐藤博 ,   磯野可一 ,   佐藤裕俊 ,   小池良夫 ,   小野田昌一 ,   石川達雄 ,   山本義一

ページ範囲:P.725 - P.728

はじめに
 食道癌で最初に手術に成功したのは頸部食道癌であり,1886年Mikuliczによる.
 次いで,1908年Voelckerが腹腔内で食道胃吻合術に成功している.今回のテーマである胸部食道癌手術に成功したのは,1913年Torekであることは,あまりにも有名である.

食道癌と放射線治療

著者: 池田道雄

ページ範囲:P.729 - P.732

はじめに
 食道癌の治療成績を挙げ放射線療法の立場から手術療法,化学療法と比較検討するようにとの要請であるが,とてもよくするところではないので放射線治療の立場とこれに関連する2,3の問題について述べてみたい.

化学療法の立場から

著者: 小泉博義 ,   和田達雄

ページ範囲:P.733 - P.737

はじめに
 食道癌の治療別成績の比較という命題について,自験例を中心に,手術療法(切除群)放射線単独治療(放射線群),化学療法単独治療(ブレオマイシン群)の3群を,遠隔成績の面より比較検討した.
 併せて,ブレオマイシン投与例のうち,長期生存せる2例を供覧し,現在までの化学療法の成績をまとめてみた.

食道癌手術における再建術式とその選び方

胃を用いる胸骨後食道再建術

著者: 秋山洋 ,   檜山護 ,   宮薗光 ,   橋本千暉

ページ範囲:P.743 - P.747

はじめに
 胸部食道癌切除後の食道再建法については,再建に用いる臓器,挙上経路,吻合部位,吻合方法などの組合わせにより,極めて多数の手術方法があるように考えられている1).種類としては多いわけであるが,実際には食道癌の占居部位,進行程度,全身状態,できれば癌の類型をも斟酌したうえでほぼ妥当な食通再建術式が定まつてくるのではないかと思う.
 現在までは,食道の再建術式の種類が非常に多いとの理由から各施設において再建食道に用いる臓器や,その挙上経路についておのずから特色をもたせ,各施設間でその優劣が論じられてきたようである.しかし,そのような時期はほぼ終りつつあり,今後は「このような臨床的条件下ではこの術式が良いと思われる」というようなある程度の術式の基準ができてもよさそうである.

胸壁前食道胃吻合術

著者: 羽生富士夫 ,   遠藤光夫 ,   御子柴幸男 ,   井手博子 ,   中山恒明

ページ範囲:P.749 - P.752

はじめに
 胸部食道癌の根治手術は,癌腫はもちろん,転移廓清を伴う胸部食道の切除と,切除後の食道再建とあいまつてはじめて完成したものといえる.
 食道再建術は,これを一期的に行なうか,分割するかの問題,代用食道として,胃,小腸,大腸いずれの臓器を用いるか,さらに,胸腔内(後縦隔),胸骨下および胸壁前といつた3種の経路の選択という問題がある.

胃による食道再建術

著者: 井口潔 ,   中村輝久 ,   杉町圭蔵 ,   平野雅士

ページ範囲:P.753 - P.756

はじめに
 現在,食道再建において最も多く用いられるのは胃であろう.胃を用いる方法にも色々あるが,安全な食道再建の術式は確定しているとはいいがたい.われわれは1)大彎側胃管を用い,しかも簡単な手技でこれを通常の手技による場合よりも長くつくることを工夫し,また,吻合部のviable border lineを決定する方法を考案した.さらに,万一,吻合不全をおこすおそれのある場合に備えて,遊離腹膜パッチ移植が吻合部の保護に有用なことも明らかにすることができた.これらは,食道再建術を安全に行なうために役立つこと大であると考え,ここに報告する.

有茎結腸による食道再建について

著者: 藤巻雅夫 ,   川口正樹 ,   前田政克 ,   佐々木公一 ,   田中乙雄 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.757 - P.760

はじめに
 食道癌切除後の食道再建術式については従来から多数の報告がなされている.このことは食道再建に使用する臓器,および挙上経路などの組合わせが多岐多様にわたつているためとも考えられる.これらの食道再建術式のうちで,有茎結腸を使用する適応としては色々の問題が含まれているが,有茎結腸を利用する食道再建の利点としては,
 ① 胃液の消化作用に対して結腸は食道や空腸よりも強い11)15)

小腸による食道癌切除後再建術

著者: 葛西森夫 ,   森昌造

ページ範囲:P.761 - P.764

はじめに
 従来手術直接死亡が高率であつた胸部食道癌手術も,近年その安全性が高まり,各施設での直接死亡率も10%以下におさえられるようになつた.それに伴い,耐術者の遠隔成績,特に術後愁訴,社会復帰に対する配慮を必要とする段階に至つている.教室では桂,石川が術後逆流性食道炎予防術式として,1956年に,部分切除によつて生じた胸部食道欠損部を,有茎空腸移植によつて再建する術式を行なつたが1)2),その後,葛西は頸部食道再建へと適応を拡大すると共に3,4),従来の方法に改良を加え現在に至つている.
 1956年以降1973年7月までの,胸部食道癌に対して施行した有茎空腸による食道再建例は134例であり(第1表),食道噴門間有茎空腸移植79例,一期的食道残胃間有茎空腸移植11例,分割手術の二次手術に際し,胸骨後経路で頸部食道胃間有茎空腸移植を行なつたもの28例,また切除不能例に対しての,胸骨後経路による頸部食道・胃間有茎空腸移植によるバイパス手術16例である.
 今回はこのうち,噴門を温存する食道噴門間有茎空腸移植術を中心に,その手術手技,手術成績,特徴などについて,他術式との比較を加え説明したい.

再建臓器には何を選ぶか,再建経路にはどこを選ぶか

著者: 陣内傳之助 ,   岡川和弘 ,   安積奎三 ,   城戸良弘

ページ範囲:P.765 - P.769

はじめに
 食道再建術を行なう際には,再建臓器に何を選ぶか,また再建経路としてどこを選ぶかが問題となる.この問題を解明するためには,臓器別に,また経路別に,次の3つの観点から検討が加わえられなければならない.
 1.手術の安全性および手技上の難易度

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・23

急性虫垂炎の術中肉眼所見と病理組織像(Ⅱ)

著者: 松峯敬夫 ,   白川洋一 ,   浮島仁也 ,   青木幹雄

ページ範囲:P.716 - P.717

 症例3 穿孔性蜂窩織炎性虫垂炎 術中肉眼的所見:虫垂は太く,強直し,やや粗い表面は紅潮が著しく,血管拡張も著明である.また根部に穿孔がみられるほか,虫垂表面に多数の小結節状隆起が散在している(第8図).
 組織像:虫垂のほぼ全長にわたりびまん性に好中球浸潤があるが,その程度はあまり強くない.内腔は拡張しておらず,粘膜は2,3ヵ所に小さな潰瘍を示すのみで,全般によく保たれている(第9図).以上のように,全体的な変化は比較的軽度であるにも拘らず,根部で,虫垂間膜付着部の反対側に穿孔がみられる.たまたまここにできた虫垂壁内膿瘍が,虫垂の内外に同時に破れて生じたものと考えられる.また漿膜面に多数みられた小結節は,好中球の集簇巣である(第10図).

クリニカル・カンファレンス

食道癌をどうするか

著者: 遠藤光夫 ,   秋山洋 ,   飯塚紀文 ,   中山隆市 ,   佐藤博

ページ範囲:P.770 - P.785

《症例》
患者 63歳,男
主訴 嚥下障害

術前術後

食道外科・術前術後の病室管理(1)

著者: 岡川和弘 ,   多田正安 ,   水谷澄夫 ,   川崎勝弘 ,   堀川章博 ,   城戸良弘 ,   高塚雄一 ,   小川嘉誉 ,   田野迪樹 ,   藤山武雄 ,   安積奎三 ,   高橋貞雅 ,   塩崎均 ,   陣内傳之助

ページ範囲:P.786 - P.792

はじめに
 最近の消化器外科手術においては手術手技,麻酔,化学療法の進歩と相俟つてますます適応が拡大せられるようになつてきたため手術侵襲も大となり,術前術後の管理にも高度の知識と経験が要求されるようになつた.とくに食道外科においては術前からpoor riskの患者が多く,また手術侵襲も大きいので,他臓器の外科に比して病室管理の占める役割ははるかに大きい.今回これから食道外科を学ぼうとする若い研修医の人達を対象として,食道外科の病室管理の基礎的なものを,現在われわれが行なつている方法を中心にまとめてみた.

学会印象記

第74回日本外科学会総会から

著者: 藤巻雅夫 ,   相馬智 ,   島津久明 ,   桜井健司

ページ範囲:P.794 - P.800

 第74回日本外科学会総会は,東大,石川浩一会長の下に3月25日から27日の3日間にわたつて,国立教育会館虎の門ホールを中心に7会場において行なわれた.
 編集部から本学会についての印象記を求められた時には,すでに学会も始まつていたし,7会場で同時に行なわれているので筆者が聴講できた範囲内での感想をのべてその責を果したいと思う.

臨床研究

頭蓋内感染症の外科治療

著者: 喜種善典 ,   川上伸 ,   野島丈夫 ,   斉藤義一

ページ範囲:P.801 - P.808

はじめに
 脳神経外科治療対象の中枢神経系感染症は,急性化膿性髄膜炎,硬膜外および硬膜下膿瘍,脳膿瘍などである.抗生物質の使用以来これら感染症は激減したが反面不完全な治療を招き,病像も修飾され診断を困難にしている.耐性菌出現も治療の障害となる.
 著者らは過去数年間に化膿性髄膜炎,硬膜下膿瘍,脳膿瘍の治療を経験したので(第1表),症例を検討し考察をこころみる.

腸アニサキス症6例の臨床的検討—とくにskip lesionを伴つた2例

著者: 井上淳 ,   清水法男 ,   吉田恭弘 ,   藤井卓 ,   安達秀雄

ページ範囲:P.809 - P.814

はじめに
 最近諸家の注目をあびるようになつた急性腹症の1つに腸アニサキス症があげられる.本症は刺身として生食する機会の多いある種の海産魚類,ことにイカ,イワシ,サバ,ヒラメなどに中間寄生しているアニサキス幼虫の経口感染で発症することが知られている.私どもはイレウスの診断のもとに開腹した6症例の切除回腸より,アニサキス幼虫を見出した.このうち2例には回腸の2カ所に非連続性に蜂窩織炎性病変の存在する,いわゆるskip lesionといわれる所見が見られた.
 これら6症例の臨床的検討とskip lesionの2例を紹介し,さらに文献的考察を加え報告する.

臨床報告

巨大な後腹膜Lipomyxomaの1例

著者: 加辺純雄 ,   大森幸夫 ,   中野喜久男 ,   西村明 ,   藤田昌宏 ,   道上淳二 ,   本田一郎 ,   篠塚忠 ,   荻原奉祐

ページ範囲:P.815 - P.819

はじめに
 原発性後腹膜腫瘍は1761年Morgagniの最初の報告以来,比較的まれな疾患とされてきたが,最近は多数の報告をみるに至つた.しかしながらその発生頻度は本来他の腹部腫瘍にくらべて低く,殊に混合腫瘍の発生頻度は比較的少ないとされている.
 最近,著者らは原発性後腹膜腫瘍を経験したが,特にその発生母地に関して興味ある症例とみなされるため,若干の文献的考察を加えて報告する.

小腸腫瘍について—第3報 小腸癌(十二指腸癌を除く)について

著者: 杉山譲 ,   宍戸善郎 ,   村上哲之 ,   田中隆夫

ページ範囲:P.821 - P.824

はじめに
 既に第1報1),第2報2)で報告したごとく教室ではこれまで15例の小腸腫瘍(第1表)を経験したが,今回はこれらのうち第3報として小腸癌(十二指腸癌を除く)の3例(症例No.2,3,4)について報告する.

薬剤

末梢血行再建術後の血栓溶解酵素(UK)療法の治療成績に関する検討

著者: 伴一郎

ページ範囲:P.825 - P.832

はじめに
 末梢閉塞性血管疾患にたいする血行再建術後の治療成績の向上のために従来抗凝血薬療法1)2)としてHeparin(Heparin Sodium)を主とし,それに内服の抗凝血薬としてWarfarin(Warfarin Kalium)の併用,それに低分子デキストラン(以下LMD)の点滴静注の併用などの方法により治療を行なつてきたが,Heparinのみによる抗凝血薬療法3)ではどうしても,Heparin量が過量になり過ぎそのために出血の副作用も多い.血行再建術後の抗凝血薬療法では102例の中20例(19.6%)に出血症状が認められている.
 血行再建術後の治療成績の向上と,副作用としての出血症状をできるだけ少なくするためにHeparin量をできるだけ少なくし,それに線維素溶解酵素であるUroki-nase(UK)—(MochidaのUronase,1 vial,5000Ploug単位を使用)—を点滴静注にて投与し,LMD,Heparin,Warfarinをそれに併用する方法を試みたが,副作用としての出血症状はみられず,また臨床成績の改善を見ることができた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?