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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻1号

1948年01月発行

雑誌目次

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胃癌に對する胃切除の遠隔成績

著者: 友田正信 ,   朝長溶

ページ範囲:P.1 - P.8

第1章 緒言
 外科醫により處置せられる癌患者中,大多數を占むるものは胃癌であり,本病は其の惡性なること諸種癌中隨一とせられ,諸家早期胃切除に對して努力を傾倒してゐるが,未だ所望の域に達しない現況である。
 扨て友田外科教室の前身である後藤外科教室に於て,大正8年より昭和16年末に至る23年間に收容した全胃癌患者は,總數1833名に達してゐる。余等は上記患者中胃切除を行つた709例に就て,主として文書により,又一部は患者を直接來院せしめ診療して其の遠隔成績を調査し,之と密接な關係ある諸事項に就て檢討したので,茲に其の成績を報告し諸賢の批正を仰ぐ次第である。

骨關節結核の治療法概觀

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.8 - P.14

 骨關節結核は其の頻度の大なること,難治なこと並びに機能障碍の著しいことの三點から,整形外科にでは極めて重要なる疾患であるけれども,治療法の發達は甚だ遲々たるもので,其の技術的方面では種々な發達を遂げたが,治療方針に至つては,未だ昔日の域を脱するわけにゆかないと云ふも過言でない。
 斯樣な治療法の遲滯は全く本療法の困難に因るもので,其の研究を怠つたものによるのではない。然し,最近,アメリカに於けるストレプマトイシンの發見は本療法にも一大變改を來す可き期待は極めて大になつて來た。

シュラッテル氏病及びペルテス氏病の穿孔療法

著者: 飯野三郞

ページ範囲:P.15 - P.17

 私は先にシュラッテル氏病のキルシュナー鋼線による穿孔療法について發表し,その後方々で追試された結果も概ね良好のようであり,私自身も症例をかさねたので,本症と近親關係にあるペルテス氏病の穿孔療法と共に更にこゝで申しのべてみたい。
 シュラッテル氏病は脛骨粗面(脛骨結節)骨起核の發育融合機轉の異常と考えられている。すなわち,正常には初め10-13歳において脛骨近端骨核の前縁から脛骨骨幹の前面を下方にのびはじめた嘴状突起が,これと獨立に脛骨粗面部に出現した1-2個の前骨端核と13〜15歳において相融合し,こゝに脛骨粗面の骨起核を形成,これが16歳以後において脛骨骨幹と融合する。この脛骨粗面骨核の化骨及び融合の障碍乃至異常がシュラッテル氏病の症状をひきおこすものと考へられるから,したがつて本症は10-16歳のいわゆる骨端核發現期及び融合期に發現し,脛骨粗面の膨隆,壓痛,四頭股筋の緊張痛を臨牀的の主症候とすることは周知のとおりである。その原因に至つては今日なお漠として本態を確實にし得ないが,外傷をも含めた外因性の機械的作用と,内因性の先天性素質の組合せによる骨端核の骨化融合の異常と云うところまでは概ね異存がない。

齋藤式胃腸吻合術の成績

著者: 比嘉勇

ページ範囲:P.17 - P.20

緒言
 齋藤式胃腸吻合術とは齋藤眞教授が1929年(昭和4年)グレンツゲビート(第3年第4號447頁)誌上に發表したKocher氏大彎部胃腸吻合術Gastrojeunostomia antecolica inferior cum enteroanastomosi(Braun)の變法のことである。此所でverticalisと云ふのは胃の軸と交叉性に即ち,垂直に胃壁を切開して,吻合口を作るの意義である。齋藤教授が齋藤式變法を案出された由來及本法の批判に就ては齋藤教授の前記論文中に審であるから,此所には本法の術式及適應症を簡單に述べ且前記論文發表當時臨牀手術例は5例であつたが(此の5例には1例の直接死亡例なく,又術後通渦障碍もなく良好な經過を取つた)其後1929年5月以降1947年1月迄に更に41例の手術例を加へたので,此の41例の成績を述べ,併せて同期間中の前及後壁胃腸吻合術との比較をする。

急性リンパ腺炎のコンムニン療法

著者: 坂本馬城

ページ範囲:P.21 - P.24

 シユワルツマン濾液の適當量が細菌感染に對して治癒的に作用する事が實驗的ならびに臨牀的に確められ,コンムニンとしてひろく知られるに及んで,丹毒をはじめ,癤,癰,蜂窩織炎,筋炎,骨髄炎等の急性化膿性疾患,外科的菌血症及び一部皮膚疾患に對するコンムニン療法の業績が相續いで發表せられている。著者は本療法を急性リンパ腺炎に應用した場合の效果の大要を報告する。この觀察はコンムニンが今日のような製品となる以前からつづけられていたもので,今日から見れば多少不適當とおもわれる處置法もないではないが,御參考になるかと思うので新舊の例をつきまぜて報告する。
 コンムニンは以前は東大分院外科で作つたシユワルツマン濾液をつかつていたので,それらの治療例の使用量は,便宜に現在のコンムニン(フジ)の稀釋度(平均)に換算した。

臨牀例

原發性胃肉腫の一例

著者: 大澤健一

ページ範囲:P.25 - P.28

緒論
 原發性胃肉腫は比較的稀有なる病患で,外國では1840年Lansbergの圓形細胞肉腫の報告に始まり,今日に到る迄,其數400例を超ゆるに過ぎない。
 本邦に於ては更に其數少く1901年今氏による圓形細胞肉腫の2剖檢例に始まり,余の蒐集し得たる限りに於ては,1943年迄に總數49例にして,其後現在まで報告を見ない。

胃潰瘍穿孔の姑息的手術による一治驗例

著者: 坂本馬城 ,   深谷愼三

ページ範囲:P.28 - P.30

 胃,十二指腸潰瘍穿孔の場合には出來るだけ早く手術を行ふ必要があるが,此の際原病たる潰瘍治癒をも達成し得る理想的手術--胃切除術を行うか,或は救急手術としての姑息的な穿孔部閉鎖に止めて置くべきかの判定は,個々の症例に就て常に必ずしも容易でない。
 Graham氏は穿孔時の救急手術は最も簡單で侵襲少く,しかも效果的な方法で遂行されねばならないし,又比較的經驗の少い人でも行へるものでなければならぬと説いて居る。氏は1929年以來行つて來た姑息的手術法で,125例中死亡8例,死亡率6.4%と云ふ好成績をあげて居る。氏の方法は第1圖の如く,穿孔部の上・中・下3箇所に長軸に平行にカツトグートを通して置き,大網又は脂肪を其の上に持ち來たし,之をカツトグートで結紮し,穿孔部から移動しない程度に締める。其の際穿孔部の邊縁を互に近接させる必要はないと云ふ。

若年者胃癌の一例に就て

著者: 石川浩一 ,   大橋成一

ページ範囲:P.30 - P.32

 緒言 若年者胃癌は高年者胃癌に比して稀であつて20歳未満の明確な報告例としては本邦に37例(男子21例女子16例)外國に28例(男子21例女子9例不明2例)を數へるに過ぎない,その頻度は久留(1935)・各務(1938)・小宮山(1938)・竹野内(1939)・小龜(1941)・甲斐(1641)・三宅(1941)氏等の統計を綜合すると胃癌3559例中30歳未滿132例(3.7%)20歳未滿6例(0.2%)であり,又大槻外科教室における昭和12年1月より昭和19年2月までの7年間の統計では手術胃癌患者591例中30歳未滿22例(3.7%),20歳未満1例(0.2%)のみである。次に胃癌の穿孔例も稀であつて,その明確な報告例としては,本邦に17例,外國に10例を數へるのみであり,その頻度は桑原(1939)・宮崎(1940)・館田(1941)氏等の統計によれば,1821例中穿孔5例(0.3%)となつてゐる。著者等は最近16年7ケ月の若年者胃癌穿孔例を經驗し,臨牀上並に剖檢上興味ある所見を認めたので茲に報告しようと思ふ。

重複腸管その他高度の興味ある先天性畸形を併有せる症例

著者: 赤澤喜三郞

ページ範囲:P.33 - P.36

緒言
 先天性障碍を考察する際には,畸形が1つあれば,その他にも尚幾つかの畸形を併有する傾向がある事實を忘れてはならない。私は外見上,上肢に畸形を有する10歳の少年に於て蟲垂切除術後,癒着性腸閉塞を惹起したので,更に開腹術を行つたところ,極めて稀有な先天性畸形たる重複腸管及び高度の總腸間膜等を有する事實を知り。且つその後の檢査によつて,更に第1表の如き,極めて稀なる多發性先天性畸形を併有する事が明かとなつた。
 斯くも高度の先天性畸形を多數にもつて居り乍ら,併も10歳の今日迄兎も角健康を維持して來た事實は,極めて興味ある事と思はれるので,茲にその概略を報告する。

直腸肉腫の一例

著者: 田中正男

ページ範囲:P.36 - P.39

緒言
 直腸肉腫は初めSchilling(1831)によりSarkomatöse Melanomとして報告され,次いでKosch(1837)が36歳男子の直腸腫瘍を組織學的に黒色肉腫として記載したのに始り,本邦にも江崎(昭4),車(昭7)大津(昭13)等の報告があるが,稍々稀有な疾患として知られている。我教室に於ても既に片山,宮地(昭15)により2例の報告あり,余も又最近1例を經驗したので之を一括して記述しようと思ふ。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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