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文献詳細

雑誌文献

臨床外科3巻10号

1948年10月発行

文献概要

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股靜脈からの輸血

著者: 猪野四猪1

所属機関: 1東京大學醫學部産科婦人科學教室

ページ範囲:P.415 - P.418

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 大人に於ける輸血には,肘靜脈,大伏在靜脈(V. saphena magna)等の表在性の靜脈を用いるのが普通であるが,此等の表在性の靜脈が利用出來ない時は,どうしたらよいか?誰も先づ靜脈切開を考えるのが普通であるが,私は偶然の機會から,かかる際に米國では,靜脈切開を行ふことなく極めて簡單に股靜脈から輸血してゐるのを知り,教室で他の同僚に追試していただいた結果,その手技が簡單迅速で,その利用性の多いことは,靜脈切開の比でないことを確認したので,廣く一般醫界にも利用していただきたいと思う。
 私が最初に股靜脈輸血を實施したのは,全身の火傷患者に於てであつた。患者は夏期にガソリン運搬に從事中,偶々それが爆發し,身體には極めて短かい半ズボンと靴とを著けていただけだつたので,殆んど身體の表面積の2/3が,第2度乃至第3度の火傷を蒙つたのであつた。元來火傷の部分には,數時間後に強い浮腫が現らはれるので,その部の靜脈は輸血に利用し難いのであるが,此の患者は米國式の治療をすることになつていたので,顏面を除いて,すべての火傷部を繃帶で覆つたので,表在性の靜脈は利用出來なかつた。そこで此の患者に毎日股靜脈から血漿又は全血を輸入して,9日間生命を維持することが出來た。其の後4例の全身火傷患者(身體表面積の1/3以上)に股靜脈輸血(血漿を含む)を實施し,理想的經過で治癒せしめ得た。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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