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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻11号

1948年11月発行

雑誌目次

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外科結核症手術創感染の原因と其豫防

著者: 武藤完雄

ページ範囲:P.419 - P.421

 腎結核手術創が屡々難治の瘻孔を殘すことは餘りにも有名である。其他頸腺結核,肋骨カリエス乃至胸圍結核,副睾丸結核の手術創も時に化膿すると難治の瘻孔を形成し吾々外科醫を惱す事が尠くない。吾々は多年この問題に就て檢索して來たが,最近ようやく之等手術創感染の原因の1部を究明し得。其の對策を講じた所,かなり滿足すべき成績を得つゝあるので茲に其の概略を記述する。

小兒腎臟惡性腫瘍に就て

著者: 佐藤弘隆 ,   鈴木一男

ページ範囲:P.421 - P.422

 本腫瘍は極めて惡性で急激に増大し醫治を需むる時は手術不可能となること多く,幸に根治手術を受け得ても豫後不良とされて居る。余等は最近當教室に於て本症の4例に遭遇,2剔出腎及び2試驗的切片に就き病理組織學的檢査を施し本症なることを確證したので茲に總括的記述を試みる。

膀胱結石内化骨例竝に膀胱粘膜移植による化骨現象に就て

著者: 秋田八年

ページ範囲:P.423 - P.424

1. 緒言
 各種尿路結石の薄片標本の偏光顯微鏡的觀察を行ひ,偶々膀胱結石内に骨組織を認めた症例を得たので茲に報告し,骨組織の出現經路に就て考察を試み諸賢の御批判を乞ひ度いと思ふ。

睾丸畸形腫の1例

著者: 幕內豐

ページ範囲:P.425 - P.428

I 緒論
 睾丸畸形腫は比較的稀である,特に臨牀的に惡性のものは,Weiserに依れば全惡性腫瘍の約1〜2%を占めると云はれ,更に1500〜2000名の男子外科的疾患の患者を通じて,唯1名しか認められぬと云はれる。男子臟器に於て睾丸程,其の腫瘍の組織學的構造の多型性を示す器官はない。Hi—uman,Gibson,及びKützmannは睾丸腫瘍を臨牀的な觀點より單に,SeminomとTeratomの2群に分類して居る。即ち腫瘍構造と同時に臨牀症状の多岐なる所以である。睾丸の混合腫瘍,殊に睾丸畸形腫は,其の複雜な構造と種々の臨牀症状に依つて特別な位置を占めて居る。私は最近日赤中央病院第一外科に於て經驗した。睾丸畸形腫の1例に就て報告する。

ヘルニアと誤診され易い靜脈瘤の2例

著者: 小林忠 ,   梅村義治

ページ範囲:P.429 - P.431

緒言
 静脈瘤は主として表在性に起るが,稀には深部にも發生することがある。殊に股部,鼠蹊部等に生じた場合には,ヘルニアとの鑑別が必要になつて來る。吾が慶大外科教室に於ても,最近鼠蹊部に生じた子宮圓靱帶靜脈瘤を鼠蹊ヘルニアと診斷し,手術に於て初めてその誤りであることを知つた1例と,股ヘルニアとして送られて來たが,その下肢に著明な靜脈怒張を認めたので大薔薇靜脈瘤による腫瘤との豫想の下に手術して之を確め得た1例に遭遇した。後者の報告例は決して少くないが,前者は文獻にも稀なもので,此所に報告する次第である。

特發性腎牀出血症の1例

著者: 岩月賢一 ,   小橋穆

ページ範囲:P.431 - P.434

緒言
 特發性腎牀出血症とは,腎周圍乃至腎被膜に特發的に出血を來す疾患であつて,1865年Wun—derlichにより腎牀卒中症(Apoplexie des Nie—renlagers)なる名稱の下に一獨立疾患として詳細な症例が報告せられた。本症は比較的稀有な疾患に屬し,最近に至る迄に,歐米に於ては200餘例の報告を見るが,本邦に於ては大正11年杉村氏の第1例の報告以後吾々の檢べた所では文獻上僅かに8例を見るに過ぎない。吾々はたまたまその1例を經驗したので,こゝにその概略を報告する。

膀胱破裂の3例とこれが統計的觀察

著者: 豐田建一 ,   關喬一郞 ,   葦澤贇

ページ範囲:P.434 - P.441

緒言
 1. 最近當外科に於て膀胱破裂の治驗例1,死亡例2を得たので,系統的に觀察を行うと共に多數の報告例を綜合し,茲に膀胱破裂の統計的觀察を試みんとする次第である。膀胱破裂の原因は,主として挫傷に因り鈍性外力が充滿せる膀胱部に加はつた時に起るものであり,破裂には腹膜外破裂と腹膜内破裂とあり,兩者を合併してる場合もある。腹膜外破裂の場合は前壁が,又骨盤骨折を伴う場合は膀胱底の破裂が多い。孰れにせよ膀胱の充滿度に正比例し,Berndtに依れば空虚な膀胱の破裂は甚だ稀とされてゐるが,此の時は恥骨縫際の上方から來る外力に依り骨盤腔内に押し込められた膀胱壁の上部は,其の特有なる反作用に由り破裂から守られ骨盤底に接する部分が破裂し易いものとされてゐる。墜落毆打等の直達外力や膀胱部以外に働いた外力が反作用(Contrecoup—Wirkung)として破裂を起すこともある。又妊娠分娩等の如き過度の腹壓増進に因る事もあり,比較的多く吾人の注意すべき原因としては人工的外科的に發生する場合で即ち尿道膀胱「カテーテル」挿入,膀胱結石截石術,膀胱鏡檢査,前立腺剔出術等に伴うものである。Baconが最近147例の膀胱破裂の症例を發表し,其の中實に40例を報告して居る。その内譯は前立腺剔出術23例,「カテーテル」8例,膀胱鏡4例,組織鏡檢4例,截石術1例であつて意外に多い。病的變化の在る膀胱壁が破裂し易いのは當然で肉柱膀胱,脂肪變性,膀胱憩室,中樞神經系疾患,大網膜や腸管の腫瘍形成等,或ひは麻醉時,化膿性疾患の經過中にも起る事がある。又高度の尿道狹窄,包莖等の原因もあるが,これは膀胱内壓が過度に高まつた爲であらう。飮酒酩酊が原因となる事も甚だ多く,Bartelsは35%,Baconは28.5%と報告してゐる。

巨大なる膀胱憩室の1症例

著者: 鹽澤正俊 ,   若木武男

ページ範囲:P.441 - P.444

緒言
 膀胱憩室は比較的稀の疾患であり又特異の症状が無いので膀胱障碍を訴へる患者に膀胱鏡檢査,膀胱造影撮影檢査法等を實施して偶然發見されたり,或は手術や剖檢に依つて初めて確診されたりする事が多く,最初より膀胱憩室の診斷を下すことは極めて困難である。余等は後腹膜腔嚢胞の診斷の下に開腹術を施し,初めて巨大なる膀胱憩室であることを確認し得た1症例を經驗したので報告する。

溶血性黄疸と摘脾に就て

著者: 市吉親夫

ページ範囲:P.444 - P.448

緒言
 溶血性黄疸に關する報告は,Murchison(1885),Wilson(1890)等の記載に始まる。然し乍ら1900年Minkowskiが長期に亙る黄疸,ウロビリン尿,脾腫,腎臟鐵沈着を伴ふ症例を報告し,之が先天性素因に基き,而も生命には甚だしい影響のない事を明かにしてより,本症に關する研究が盛となり,其後Chauffard(1907)は本症に於ては,低張食鹽水に對する赤血球抵抗の減弱,微小赤血球の増加及び骨髓機能亢進の存する事を證明して,茲に先天性の系統疾患として取扱はれるに至つた。然るに他方Widal,Hayem等によつて,後天性溶血性黄疸の存在が唱へられるに至つた。
 本症に對して初めて脾摘出を行つたのはMicheli(1911)であるが,Banti及びEppingerが,本症の一次的原因を脾臟の異常機能亢進に基くものであるとの見地から,本症に脾摘出を行つて顯著な效果を收めて以來,多數諸家によつて追試せ本症の治療法として脾摘出を賞讃する者多く,本邦に於ても漸次其の報告例を増しつゝあるが,尚歐米に比べてその例數は僅少である。

胃切除後に於ける興味ある偶發症の1例

著者: 中嶋淳

ページ範囲:P.448 - P.450

緒言
 吾々は胃癌又は胃潰瘍等の胃疾患に際して,胃の一部又は全部を切除した後に,術後肺炎,後出血,通過障碍,腸閉塞症,縫合不全等不慮の障碍の起る報告をみるが,余は最近胃潰瘍患者の胃切除を實施し,結腸前胃腸吻合術を行ふに際して,Braun氏腸吻合術と併施しなかつたところ輸入脚腸閉塞のため重篤な症状を呈したものを,幸ひ治癒させることの出來た例症に遭遇したので,茲に報告する。

胃纖維腫の1例

著者: 天野尹 ,   坂本稻次郞

ページ範囲:P.450 - P.452

症例
 患者 34歳 家婦 既婚
 家族歴 父母兩系腦溢血の遺傳關係が,やゝ濃厚に認められる以外に特別のことなし。父母共に健在,患者は30歳のとき現在の夫と結婚し,2兒を得てゐるが,共に健康。

父子胃潰瘍手術治驗例

著者: 佐藤三郞

ページ範囲:P.453 - P.456

 最近名古屋大學分院に於て父娘共潰瘍にて胃切除を受けたと云ふ比較的稀なる例に遭遇したので茲に御報告する。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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