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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻4号

1948年04月発行

雑誌目次

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胃・十二指腸潰瘍の胃迷走神經切斷術

著者: 島田信勝 ,   井上雄

ページ範囲:P.127 - P.133

 胃・十二指腸潰瘍の廣汎胃切除術が優秀なる治療成續と殆んど零に等しい死亡率を擧げて居る現在,この術式が胃・十二指腸潰瘍の外科的療法として最も秀れた術式と考へるには先ず異論のない所である。然るに,1943年シカゴ大學のDragstedt教授は胃・十二指腸潰瘍に對して胃迷走神經切斷術(アメリカに於ては,Vagotomy胃迷走神經切斷術resection of Vagus nerve迷走神經切除術又はgastric neure-ctomy胃神經切除術と云はれるが,Vagotomyが最も多く用ひられて居る)を行ふ事により,これを治癒せしめ得る事を發表した。爾來,アメリカに於ては多數の外科醫によつて,この治療法に關する實驗的竝びに臨牀的研究が行はれ,今日に於てはVagotomyの胃・十二指腸潰瘍に對する治療的效果がその多數の外科醫によつて認められつゝある傾向に至つて居る。從つて,今後吾々が胃・十二指腸潰瘍を外科的に治療する場合,このVagotomyと從來行はれて来た廣汎胃切除術とに關して種々の比較考察が必要となつてくるが,その中Vagotomyは胃・十二指腸潰瘍に對する治療法として胃切除術におきかへられる程優秀なる術式なるか,又Vagotomyは胃・十二指腸潰瘍の如何なる状態に對して適應となるか等の問題に就ては特に關心が拂れるものと思ふ。
 然し乍ら,胃・十二指腸潰瘍の外科的療法としてVagotomyが行はれてから僅々3,4年の經過に過ぎないので,その遠隔成績が不明である現在では,これが適應を決定的にする事は不可能であるが,アメリカに於ける多くの外科醫の多數の經驗を基礎とせる報告を綜合考察して,胃切除術とVagotomyとの關係に就いて聊か論及して見たいと思ふ。

最近の内外國に於ける輸血及輸液

著者: 濱光治

ページ範囲:P.133 - P.138

I. はしがき
 輸血とは生活せるまゝの血液を血管内に輪注することであることは最早言ふまでもない事であるが,單なる失血救急の目的ばかりでなく,今や臨牀的に凡る疾患に應用し,其の效果の甚だ顯著なものがある。しかし其れが今日餘りにも濫用の弊が全く無いとは申されない。又場合に依つては輸血の效果に對する期待は過信となり,往々裏切られる場合がある。此の輸血の不定の效果に對して嚴正な批判を爲さねばならない。
 今次世界大戰を劃して輸血の理論的及び實際的價値又は利用に關して漸次半ば盲目的應用より合理的利用へと發展しつゝあるかに思はれる。特に血液代用の研究によりその特種的存在が認められるに至つたことは,その必然的な具現であらう。余は敢て輸血及び輸液の現況を述べて,學問的興味と臨牀的指針ともなれば最も幸甚とするところである。

脊椎カリエスとコルセツトに就て

著者: 石原佑

ページ範囲:P.138 - P.145

緒論
 脊椎カリエスは整形外科領域に於て最も重要な疾患であつて,古來各方面の研究がなされて居るが,今日尚未解決の點が多々ある。昨年第19囘整形外科學會に於て發表した所の「脊椎カリエスの豫後判定に就て」は,上述未解決點の解明の努力の一端であつた。其他コルセツトの裝用の期間或はコルセツト除去の適應の問題等に就ても未だ明確な標準乃至根據が出來上つて居ない状態で,誠に物足りない感がする。此等の問題が解決せずして脊椎カリエス患者を取扱ふ事は誠に危險であるといはざるを得ない。
 著者は年來脊椎カリエスに關し種々の觀點から諸問題を研究中であるが,今囘は脊椎カリエスの治療に不可分のコルセツトに就て特に其裝著期間,除去の時期等に關して,自ら經驗し得た諸點を述べたいと思ふ。

膽石の構造と分類論

著者: 西村正也

ページ範囲:P.145 - P.151

緒言
 膽石の構成因子を明にし之等の因子が結石内部に於て如何に組合ひ,結石を構築してゐるかが剩す所なく判明したならば其の成長過程を知り結石成因の究明に重要な様々の鍵を齎らすと考へられる。最近X線分析,分光法による物質内部構造の研究は著しい發達を遂げたが,我教室に於ても膽石を化學的,顯徴鏡的,分光分析的及びX線分析的に檢索を行ひ,其構造を明にし得たので,之を基礎として從來の分類法,特に廣く用ひられたるAschoffの分類法に檢討を加へ,一部之を訂正せる新分類法を提唱したいと思ふ。

整形外科に於ける麻酔の選擇

著者:

ページ範囲:P.151 - P.154

 整形外科醫が扱ふ外科的疾患程,種々の條件を具へてゐるものはない。而もこの二,三の患者は麻醉師に大きな問題を提供するのである。
 一,二の麻醉法によつて全症例を處理せんとする時代は過ぎた。特殊の外科的技術の進歩は特殊の麻醉法の進歩を必要とする。

第21囘日本整形外科學會總會次第

ページ範囲:P.164 - P.167

會期 昭和23年4月26日,27日,28日
會場 東京慈惠會醫科大學中央講堂

臨牀例

膽嚢管膽石による巨大膽嚢水腫の1例

著者: 齊藤紳一

ページ範囲:P.155 - P.156

緒言
 膽嚢水腫は比較的稀有なる疾患にして本邦報告例に於て本疾患を蒐集するに僅かに數10例に過ぎない。余は最近成人頭大の膽嚢水腫の1例を經驗せるにより次に報告する次第である。

横行結腸に發生せる慢性單純炎症性腫瘤の1例

著者: 高嶺登

ページ範囲:P.156 - P.159

緒言
 腹内腫瘤の診斷は時に甚だ困難なことがある。假令それが腸管腫瘤と判明しても更にその本態を明かにすることの難澁なものが少くない。、腸管に於る慢性單純炎症性腫瘤は術前診斷は必ずしも容易でなく興味ある問題を提供する。既に多數の學者に依り精細な觀察が行はれ特に廻盲部,S字状結腸に發生したものゝ報告例は可成りにある。しかしその發生頻度は寧ろ稀であり,就中横行結腸に發生したものに至つてに非常に稀である。
 最近我が教室に於ては術前診斷に迷はされた結腸腫瘤で,開腹の結果も亦癌腫を疑ひ,しかも一般結腸癌とは趣を異にし,兎も角も癈用状態にある結腸を廣汎に互つて切除し治癒せしめ得たが,其の切除標本の組織學的檢査の結果慢性單純炎症性腫瘤であることを確め得た興味ある症例を經驗したので茲に報告することゝした。

藥物療法を實施せる急性化膿竈の病理組織學的所見—臨床實驗

著者: 粟津三郞 ,   天谷誠一

ページ範囲:P.159 - P.161

緒言
 外科方面に於ける軟部組織の急性化膿性炎症の治癒機轉に關する病理組織學的研究は,既に闡明されてゐるが,余等は最近一般に使用されつゝある二三藥物が治療の目的に使用せられた場合,比較的早期には炎症病竈局所に如何なる病理組織學的所見を呈するかに就て檢索した。

ロマノスコピーに因る穿孔性腹膜炎症例

著者: 種村壽郞

ページ範囲:P.161 - P.162

緒言
 日常使用する檢査器具器械はその操作を完全に理解して愼重に使用すべきで,充分なる知識なく無理に遂行し,或は技術稍々熟練せるも安易に操作すべきではない。最近當教室に於てロマノスコビーに因る穿孔性腹膜炎の3例に遭遇した。急激に教室員が増加せるため指導が行届かず,又連絡も不充分で前者失敗の原因が全員に徹底せぬ等も一因と思はれるので,敢て茲に報告して廣く新進諸家の參考に供する次第である。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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