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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻6号

1948年06月発行

雑誌目次

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最近に於ける義肢の動向—(その2)上肢義肢

著者: 水町四郞 ,   兒玉俊夫

ページ範囲:P.211 - P.217

上肢義肢の分類
 從來迄の上肢義肢(義手と假稱)は装飾用義手,作業用義手及び自動義手に分けられる。
 自動義手の代表的のものはSauerbruchの義手の様なもので,殘存肢の筋肉に穴を開けて棒を通したり,又は肩或は腹部の運動等を力源として,義手の肘關節,指關節等を自分の意志で動かし,正常の上肢に近い機能を營ませるのが理想的のものであるが,これはその機構も複雜であり,破損等の時には修理がむづかしいため,兩上肢切斷等の極く特殊の場合に使用されてゐるに過ぎない。

胃手術に關する2,3の私見

著者: 大島宗二

ページ範囲:P.217 - P.222

1. 緒言
 外科手術書の胃手術の部を讀むと,胃切除の方法はビルロールの第1法及び同第2法を基として各種の變法が記載せられてあつて,誠に枚擧に遑がない。又其の際に使用せられる胃鉗子や胃腸縫合器の形態も千差萬別と云つてよい程に種々のものが考案せられている。之は要するに,胃切除の術式中に誰が應用しても間違いなくよい結果が得られるという方式が無いことを示しているのでわないか。又胃腸鉗子や胃腸縫合器の多種多様なことは未だ何人が使つても,之でなくてわならないという程の完全なものが創造せられていないと考えても不當な考え方ではないのでわないか。私は大正13年卒業後,恩師後藤七郞先生の許に居つた8年間及び師匠の許を去つて15年間に,凡そ識者が是なりとして提唱した各種の術式を試み,諸種の手術器械を使用して來た經驗を基礎にして,2,3の私見を披瀝して,先進諸賢の叱正を乞う次第である。

甲状腺中毒性關節症Arthropathia thyreotoica

著者: 丸田公雄 ,   菊池節夫

ページ範囲:P.222 - P.226

 バセドウ氏病の経過中に關節疾患の發生を見る事は稀で現今迄の之に關する報告例は極めて尠く然かも此少數の報告例の過半數は單にバセドウ氏病に僂麻質斯様の關節疾患が偶然に合併せるに過ぎないものである。バセドウ氏病に僂麻質斯様關節疾患の併發せるものを直らに甲状線中毒性關節症と呼ぶ事は妥當でない。尠くとも甲状腺中毒性關節疲と云ふ以上は關節疾患の發生に對してバセドウ氏病乃至甲状腺中毒症が或程度原因的關係を有する事を想はしむるに足る根據を必要とする。余等が茲に甲状腺中毒性關節症と云ふのはバセドウ氏病乃至甲状腺中毒症の發病と同時に又は夫等の經過中に現はれて慢性進行性に經過し,特に體温上昇或は明白なる炎症を伴ふ事なく,然かも撒曹の如き僂麻質斯治療劑に對しては殆んど反應なく,甲状腺腫亞全切除其他の治療によりバセドウ氏病乃至甲状腺中毒癒が治癒すると共に速かに治癒する様な關節疾患である,余等が關節炎なる名稱を避けて敢て,甲状腺中毒性關節症Arthro—pathia thyreotoxicaと呼稱する所以も亦茲に在る。斯様な意味に於ける關節疾患の報告例ば極めて尠く,本邦に於ては余等砂調査範團内では未だ之を見ない。本疾患は前述の如く基礎疾患たるバセドウ氏病乃至甲状線中毒房症が治癒すれば之と共に治癒するものなるが故に,一般に關節疾患の治療に當つては斯の如き疾患の有り得る事を一應念頭に置く可きである。
 茲に本疾患の2例を紹介し特に其發生機轉に就て檢討を試みる所以である。

急性腹膜炎に於ける一次的閉鎖法に就て

著者: 砂田輝武

ページ範囲:P.226 - P.234

緒言
 急性腹膜炎の手術に當り主要な處置として次の3つがあげられる。先づ開腹して其の感染源を除く,この點では諸家の意見は一致してゐる。次に腹腔内の滲出液の排除に就ては,Murphy等一部の人を除いて,所謂早期滲出液でない限り充分に之を除くと云ふのが一般の見解である。更に以上の處置の後に,腹腔に誘導法を行ふべきか,又は腹腔は出來る限り一次的に閉鎖するかと云ふ點に就ては未だ數多の議論がある。
 膿のある所にDrainageを行ふと云ふのは外科一般の通則であるが,急性腹膜炎に於ても手術的療法の行はれ出した頃は腹腔の誘導と云ふ事は必要缺くべからざる處置と考へ殆んど此を疑ふものがなかつた。併し腹膜の病理や生理が次第に研究せられ,其の防禦力が非常に大きい事が明かになるに從つて,腹腔の誘導法は無益であるばからでなく,寧ろ有害なものでないかとの考へが擡頭して來た。

動脈注射部血管壁の變化に就て

著者: 古川浩三

ページ範囲:P.234 - P.240

緒言
 故瀬尾教授竝に現中山教授によつて創始された高張葡萄糖液を主劑とする動脈性衝撃注射療法は,特定の動脈内に衝撃的に濃厚藥物を注射することにより,藥物を比較的濃厚なまゝ疾病局所組織内に移行せしめて長時間作用させることが出來るといふ効果を有する他,局所竝に全身の貪喰細胞の賦活作用を有し,身體の抵抗力を亢め生體を治癒に赴かせるもので,使用藥物の効力を最高度に發揮させるものである。我々は之を各種疾患に適用して實際上に卓効を認めてゐる。教室では上記の利點を有するので此の療法の普及に努め,又一般もその奴果が著しいので廣く實用化されるに至つたが,此の際實施者の不安な點は動脈に注射をしても危險はないかと云ふことにあると思ふ。
 私はその究明の一つとして實驗的に,家兎を使用し動脈注射部血管壁の變化を組織學的に10日間に互つて檢索追求し,併せて人體に於ける動脈注射部を剖檢の際に剔出して檢査した。

總腸間膜に起因せる腸管軸捻轉症の1例

著者: 河合直次 ,   小林愿之

ページ範囲:P.241 - P.243

緒言
 胎生學的に吾々は胎生期3ケ月位迄は總腸間膜の状態にあるが,其の時期の發育展開機轉に異常を來した場合生じた一種の先天性畸型の状態を總腸間膜と云ひ,小腸,結腸は共に遊離した共同腸間膜を有し結腸の後腹壁に對する固着缺損を來したものとなる。
 抑々總腸間膜は1850年Bednerが乳兒屍體解剖に於て初めて發見して以來,解剖學乃至病理解剖學的に研究報告の數を増したが,本症が腸管閉塞殊に腸管軸轉の素因として重要視され,且,Altschul(1924年)が本症2例をX線檢査に依り診斷且手術により確認するに至つて,本症は臨牀家の注目を惹くに至つた。

蛔蟲性膽石症に就て

著者: 小堀薰 ,   高尾義明

ページ範囲:P.244 - P.249

第1章 緒言
 ヨーロツパに於て歐洲大戰後蛔蟲を膽道内に發見する事著しく増加したと同様,本邦に於ても今次戰後蛔蟲による各種の疾患が多發し,特に蛔蟲性膽石症の報告は各地に見られるに到つたが,此の理由は,第一生活状況の惡化,第二衛生思想の低下,第三に藥物資源の不足に因るもので,將來ともに本疾患に遭遇する機會の多いのは當然の理である。依つて私は岡山醫科大學第一外科教室に於て昭和9〜21年間の膽石症患者135例中,手術時經驗した膽道内迷入例5例を報告し,同時に本症の成因,迷入蛔蟲の運命,診斷並に治療法に關して私見を述べ諸賢の御叱正を仰がんとする者である。

脾臓皮下破裂に就て

著者: 白石淸秋

ページ範囲:P.249 - P.252

I. 緒言
 腹部内臓器官中脾臓の皮下破裂は腸管,胃,肝臓及び腎臓の損傷に比し稀有なるものゝ如くなるも,泰西に於てはBerger氏(1903年)が本外傷の300例を蒐集せし以來多數の報告あり。
 本邦にありては余の調査によれば岩島氏(1912年)の報告以來今日まで僅に100例に過ぎず。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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