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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻7号

1948年07月発行

雑誌目次

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腦外科より見たる日本腦腫瘍の特殊性其他腦腫瘍外科に於ける2,3の問題

著者: 中田瑞穗

ページ範囲:P.253 - P.263

 私ども腦腫瘍外科に力を注ぎはじめてから,尚ほその年數は充分長いとは云へないのに,既に今日,規模こそ未だ外國と比較にならぬほど小さいとは云へ,實際の手術の成績は先進諸國の平均と對比して,あまりに遠く懸け離れた見劣りのするものでないところに追ひついたやうに思ふ。一つ一つの例に就て先進國の人に見られても,あまり恥しい思ひをしないですむと思へるところに來得たと思ふ。これは要するに,Cushing腦外科の體系にしたがつて何もかも外科醫自らが經驗し研究し,診斷にしてもすべて外科醫の手で成しとげ決して,内科醫の診断に頼らないと云ふ體系をとつてゐるからである。この診斷の正確さと云ふことが腦腫瘍外科に於ける最も重要な位置を占めることはもはや疑のないところである。扨て,この腦腫瘍をよく知り,よく診斷し發見して正確に手術し得るために,神經學の知識の必要であることは云ふまでもない。詳しく診察をすゝめ深く病史を檢討吟味するためにもこれは必要缺くべからざるものである。然し實際の臨床に於て腦腫瘍を確實に診斷し,且つ,手術し得るに充分なまでの腫瘍局在部位の判定,腫瘍種別の診斷等を完全ならしむるためには啻に神經學的知識のみでは足りないことがはつきりと經驗されておる。
 即ち神經學以外に惱室徴,惱血管像等のレントゲン診断其他の補助診断法が屡々非常に有力なる診断贅料を提供することは吾々の日常經驗するところである。叉,實際に診断した惱腫瘍を手術によつて眼前に確かめ且つそれを手術することによつて次々に蓄積されて行く惱腫瘍に關する一種の勘といふものも,外科以外では得やうとして得られない重要な診断上の力となることも疑ひない。然し,同時にこれらと同様或は時としては,より以上の診斷上の慣値を有するものに膓床惱腫瘍に關する統計的數字を知悉し記憶するといふ一事のあることを決して忘れてはならない。此の數字の内には先づ全疾患、中における惱腫瘍の頻度といふことが問題となる。帥ち惱腫瘍はどれ位多く見られるものかといふ見當を知つて置くことば,その第一である。ところが,この頻度は平均世界各國大同小異であつて,日本に於てもその數は決して諸外國のそれより特に多くも亦少くもないことが判る(第1表)。

頸部椎間軟骨ヘルニアに就て

著者: 橫山哲雄 ,   伊藤鐵夫

ページ範囲:P.263 - P.268

緒言
 特有なる坐骨神經痛を主徴候とする腰椎部椎間軟骨ヘルニアは,診斷並に手術法の進歩改良と共に最近の症例報告の増加は著しきものがある。我々の教室に於ては,黄色靱帶の單獨肥厚せるものを除き,本年9月末迄に138例の手術經驗例を有してゐる。然るに脊椎の他の部位に於ける椎間軟骨ヘルニア,特に頸椎部の夫れは   では1925年Adsonの5例を最初とし,爾來1947年Kristoff等の報告した6例に至る迄,余等の調査し得た範圍内でも,70例以上に及んで居ると思はれるに反し,我國に於ては昭和10年野崎博士の報告した1例を最初として僅々4例に過ぎない。我々の教室では手術により確認した頸椎部椎間軟骨ヘルニアは現在迄に4例に達して居るので,此處に一應總括報告して置きたいと思ふ。
 一般に椎間軟骨ヘルニアは,Adson以來Chondrom(Stookey),Ekchondrom(Adson),Myxochondroma(Veraguth)等,恰も眞性の腫瘍の如く呼ばれたり,或はSchmorlのKnorpelknötchen(Kortzeborn),叉はEkchondrose(Elsberg)等の如く軟骨組織の増殖性變化と考へられたが,Mixter,Barr,Peet,Love,Camp,Walsh,等によつて髄核,或は椎間軟骨の破裂,脱出,ヘルニアと考へられるに至つた。

電氣衝撃療法による胸椎壓迫骨折に就いて

著者: 吉村三郞

ページ範囲:P.268 - P.271

 鈍力による脊椎壓迫骨折は少くはないが,電氣衝撃療法,破傷風等に基因する所謂筋力による脊椎壓迫骨折の報告は,本邦に於いては,極めて少ないので此處に其の1例を追加すると共に,殊に其の發生機序に就き興味を感じたので,以下症例報告と共に其の發生機序に就き考察して見たいと思う。

限局性脊髄膜炎知見補遺

著者: 鹽澤正俊

ページ範囲:P.271 - P.276

緒言
 限局性脊髄膜炎の診斷治療はSicard & Forestier(1922)に依つてMyelographieが創始されて以來飛躍的進歩を遂げ,本症に關する業蹟は數多く,特に最近所謂腰痛坐骨神經痛の外科的療法が普及されるに及んで,その症例は頓に増加し,東邦に於ても東1),成松2),岩原3),菊池4),前田・岩原5),松尾6),近藤7),光安8)等に依る詳細なる報告があり,この方面の研究は一應蓋されたる如き觀もあるが,余も亦最近2年間に本症の10例を經驗し2〜3の知見を得たので茲に報告し,大方の御教示を仰ぎ度いと思ふ。

胸部交感神經節一時的及び永續的遮斷が末梢血液像に及ぼす影響

著者: 天瀨文藏 ,   小川二郞

ページ範囲:P.276 - P.280

緒言
 交感神經遮斷は夫れが一時的であつても疾病に好影響を與へてゐる事が認められるので1-4),余等は更に之れが血液像方面からの觀察を意圖して來た。造血機能が自律神經司配を受くる事は周知の所であり,交感神經切除後の血液像に關しても從來幾多の研究業績がみられるが,其の成績は極めて種々雜多で一致してゐない5)。恐らく之れは末梢血液像なるものが種々な條件によつて極めて變動し易く,又交感神經操作自體が既に二次的因子を介入するためと思はれるのであるが,斯くの如き報告者により其の成績の一致をみない事は更に本問題に關しても再檢討を要すべき所であり,就中余等6)が曩に豫報として報告せる如く静脈血の性状にも顯著な影響を及ぼす事實をも知るに至り,尚一層の研究を要すべき事を痛感して茲に系統的研究を施行する事にした。

炎症の藥物療法施行前後に於ける尿反應に就て

著者: 堀內滿

ページ範囲:P.280 - P.283

緒言
 1935年Domagkが「プロントジール」の實驗的研究の報告をなして以來,炎症に對する化學療法は長足の進歩を遂げて來た。
 余は化學療法劑の數種に就き,その投與前後の尿反應を檢査したが,其の結果は藥劑により多少異なる反應を呈すること,炎症の治療經過中に尿反應も亦多少變化を來すものであること等に就いて聊か注目すべき知見を得たので,その概略を述べやうと思ふ。

Recklinghausen氏病の1例

著者: 藤田承吉

ページ範囲:P.283 - P.287

緒言
 全身皮膚に多發性腫瘍と異常色素沈着を來す疾患に就て始めて記載しためはLudwig u. Tilesius(1793)氏等で,その後Hebra(1863)氏は此の多發性腫瘍を軟性織維腫Fibroma molluscumとして報告し,Bruns(1870)氏は本腫瘍は神經との間に密接な關係があると述べだ。1882年v. Recklinghausen氏は本症に關して詳細なる病理組織學的研究を行ひ,皮膚の多發性結節性腫瘍は神經内鞘及び外鞘の結締織纎維の腫瘍性増殖によつて生ずるものとなし,之を神經纎維腫Neurofibromaと命名したので,爾來本疾患をRecklinghausen氏病と呼ぶ様になつた。その後Verocay,Herxheimer,橋本,長與等の諸氏によつて更に多くの研究業績が發表され,又Adrian,Harbitz,上原氏等の統計的觀察が報告されている。著者は當教室に於て殆ど全身皮膚に發生せる本症を經驗したので,これを報告し諸賢の御參考に供する次第である。

粉瘤を母地として發生した癌腫の2例

著者: 松田尚泰

ページ範囲:P.287 - P.291

緒言
 皮膚に發生する原發性癌腫は一般癌腫に比べて極めて少いことは,既に多くの癌統計業績に依つて明かなところで,1889年Volkmannが223例に就いての精細な觀察をなして以來,皮膚癌が臨牀,解剖,竝に組織學的に種々の特性に有してゐることは,諸學者の注目するところとなつた。殊に原發性皮膚癌の中で良性腫瘍である粉瘤から癌腫の發生した例は廣く文獻を渉獵しても極めて稀であつて,1888年にTrankeの報告があつて以來,Zesás(1904),及びHübler(1924)等の報告例があつた。
 飜つて本邦に於ては,鹽田先生の御話によると1899,Scriba先生が頭部の粉瘤から生じた癌腫を非常に稀有なものとして珍重されて居たとのことであるが,1913年林の報告を嚆矢として,其後青山(1915),鈴木(1915),藤原(1916)等の報告があるが,余の集め得たのは今日迄僅かに12例に過ぎない。余は最近當教室に於て本症の2例を經驗したので,茲に追加報告する次第である。

結核と誤られた巨態細胞腫の1例

著者: 湯村輝子

ページ範囲:P.291 - P.293

症例
 患者 36歳女
 家族歴,既往歴:共に特筆すべきものなく結核の既往もない。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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