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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻8号

1948年08月発行

雑誌目次

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胸部中部食道2切除治驗例と其の新手術法に就て

著者: 中山恒明

ページ範囲:P.295 - P.299

1. 緒言
 私は既に胸部下部食道切除に對して積極的自然治癒應用なる一つの新しい考への下に手術を施行して,非常に安全に手街が成功し得る事を報告した。同じ考へで,この胸部中部食道切除を行つて,良性狹窄の1例と癌腫の1例とを全治せしめる事を得た。この成功した2例は共に食道胃吻合竝に食道空腸吻合に成功した症例であつて,これ等の高い位置の食道の切除後胃瘻もしくは,空腸瘻に依らずに食物を攝取し得る様,即ち經口的に食物を攝取し得る様手術して成功した症例の報告は殆んどないのであつて,良性狹窄の場合は少なくとも全世界の成功第1例である。

食道切除成功例の術前術後竝に遠隔成績の血液像の變化に就て

著者: 小山信一

ページ範囲:P.299 - P.304

1. 緒論
 昭和21年中山教授が積極的自然治癒應用手術法を提唱し此度の食道手術に劃期的成功をおさめて以來既に滿2ケ年を經過して居るが,第1表に示す様に,その間食道切除成功例は本年4月15日までの調査に依れば25例で,良性狹窄切除7例惡性腫瘍切除18例内空腸移植に依る胃全剔出を合併したもの15例を數へて居るが,從來食道切除成功例は至つて少く,從つて之の系統的檢査の報告等も殆ど見られないのであるが,私は食道切除後の血液像の變化竝に多數例を詳細に亘り觀察した發表が無く,甲論乙駁尚論議の的となつて居る。胃全剔出を合併した症例の血液像の變化を多數例に就て系統的に,定期的に詳細に觀察する機曾を得,一定の興味ある結果を得たのでこ,れをこゝに發表し諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

胃癌に對する胃亞全剔出の成績に就て

著者: 辻村勇美

ページ範囲:P.304 - P.309

緒言
 胃癌の根治は無論其の早期手術に存する事は今更改めて申述べる迄もないが,然し吾々が日常に遭遇するものには,遺憾ながら相當進行した晩期胃癌が尚多い状況である。友田教授は斯る症例中には胃全剔の適應症を見出し得る場合の少くないことを述べて,好成績を擧げられてゐる。教室の松尾は胃癌で試驗的開腹術や胃腸吻合術に終つた症例中,大體胃全剔の適應症に近い症例に就て其の遠隔成績を吟味し,又教室の鶴丸は胃全剔の遠隔成績を調査し,之等姑息的對症手術に比し良好なるものである事を明にしてゐる。
 余は竝に當教室に於て大正8年より昭和20年12月末迄に胃癌に對し胃亞全剔(噴門下約3糎以内にて切除せられてゐるもの)の施されたものに就きて調査し其の統計的觀察に立脚して,胃全剔の夫れと比較檢討し,併せて,その胃切除標本の噴門側切除端の病理組織學的觀察を行ひ,局所々見では胃全剔の適應症と見做されながら,漫然と胃全剔を危險視せる爲に胃亞全剔に終つたものと考へられるものが少くないことを明にし,胃全剔の適應症に關する友田教授提唱の妥當性を證し得たので,茲に其の調査成績を報告し諸賢の批判を仰ぐ次第である。

胃切除時網膜剥離範圍に就ての所感

著者: 橫田浩

ページ範囲:P.309 - P.311

 胃切除術の我國に於ける死亡率は最近0%から高々5%と言ふ極めて優秀な成績が報ぜられて居るが,是等は何れも大學臨牀等よりの報告であつて,術者の技御其他の兼備した場合が多く,從て現今一般に普及されてゐる腹部内臓手術としては,尚大手術の一に數へられる切除術を,一般多科醫が誰でも上の様な成績でやれるとは言へないであらうし,初めて一人立ちした若い人が最初の例に失敗して勇氣もくぢけ,以來切除術をやるのを躊躇したと言ふ話を聞いた事もある。
 手術成績を低下させるものは,何と言つても術後の種々な合併症であり,この内肺炎,腹膜感染,腸麻痺等々一般的の事は別とし,直接胃切除及び吻合手技と關係のある後出血や縫合不全に就ての注意やら所感を述べて見たい。

術後空腸潰瘍の臨牀的經驗

著者: 宮川潔

ページ範囲:P.311 - P.315

はしがき
 何等の藥物を使用せず,主要血管及び主要神經をも故意に損傷せしむることなくして,實驗的に潰瘍を生成せしむることが最も困難とされて居る犬に初めて胃(十二指腸)潰瘍を生成せしめ得たのは恩師後藤教授で(大正10年),その後,同門の甲斐原,百瀨,細見,八木,加藤,溝口,古森(誠)氏等により此の労面に關する實驗的研究が行はれた。
 胃手術後に時に,發生して外科醫を惱ます不快な合併症の一つに術後空腸潰瘍の存することは良く知られて居ることであるが,このものと胃(十二指腸う漬瘍との間には,その生成機轉上一脈相通ずる成因的要素がある様に思はれる。予等は術後空腸潰瘍の3治驗例を得たので,ここに報告し,併せて前記同門諸氏の業績を少しばかり紹介したいと思ふ次第である。

胃及び十二指腸潰瘍の急性穿孔に就て

著者: 宮崎三郞

ページ範囲:P.315 - P.320

 胃及び十二指腸潰瘍の急性穿孔の報告は諸外國においては既に數千例を數える状態であるが,我國においては30例を超える報告は數指を屈するに過ぎない状態である。著者は臨時東京第一陸軍病院において昭和17年より昭和20年までの約3年間に本症約50例を經驗したが,戰災の爲病歴の一部と切除標本全部を燒失したので記録の明かな32例に就て,その概要を報告する。(この中27例の經驗については昭和20年1月第435囘外科集談會で報告した)。
 症例は第1表に表示した通りで個々の記載は省略する。

胃潰瘍穿孔竝に出血と姑息的手術

著者: 吉川勝猪

ページ範囲:P.321 - P.324

 本誌第3卷第1號に東大小石川分院の坂本,深谷兩氏は姑息的手術によつて治癒した胃潰瘍穿孔の1例を報告され,同時に本症に對しGraham氏が氏の姑息的手術法で好成績をあげてゐる旨を紹介された。自分は最近類似の症例を經驗し,聊か考ふるところがあつたので茲にその症例を報告し,私見を加へて見いと思ふ。

胸部中部食道癌切除手術施行後の1剖檢例

著者: 植竹光一

ページ範囲:P.324 - P.327

 中山教授は昭和22年胸部中部食道切除を2例に於て成功し,その第3例としてとりあげられた本症例は惜しくも術後10月を經過して,吻合部の氣管支穿孔によう遂に死亡したものである。
 本症例と同一手術を施行した成功2症例の近況を御參考までに申し述べると,第1表の如くである。

若年者(手術時17年9月)十二指腸潰瘍の切除治驗例

著者: 宮崎五郞

ページ範囲:P.327 - P.330

緒言
 現今胃十二指腸潰瘍は内外科境界領域の1疾患となり,外科醫に依て處理される症例は漸次増加の傾向にある事は,大方の熟知さるる所である。然し乍ら現在に於ても,本症が若年者に來た場合,若年なるを理由として内科的治療に固執しそれが爲に,徒らに日子を費し,或は不幸の結果に至る例も少くない様に思う。潰瘍成因説の多元なるに徴しても,之を簡單に内科的に或は外科的にのみ處置せんとするは誤であり,總て良心的に適應を考へて,處置する事こそ醫家の務である。著者は最近幽門狹窄症状を主徴とする男子十二指腸潰瘍患者を診療する機會を得,潰瘍を含む胃切除を施行して全治せしむるを得。術後經過日數は猶少いが若年者十二指腸潰瘍の1切除治驗例として報告したい。

胃穿通性潰瘍を併へる總腸間膜症に因る全小腸軸捻轉の1例

著者: 江本俊秀

ページ範囲:P.331 - P.334

緒言
 総腸間膜症は發生學上抑制的畸型に屬し,盲腸上行結腸が小腸と共通の腸間膜を有し,甚しき遊離移動性有るものを稱する。抑々本症に關する報告は1850年Bednarが乳兒の屍體解剖に於て發見せるを嚆矢とし,臨牀的には1898年Zoege vonManteuffelが始めて盲腸軸轉に關する文獻を自家例共24例を報告して以來研究興味の對照となり,其後更にHaltin,Ekehorn,Bundschuh,Kunz,Braeuning等相次いで發表し,本邦に於ても昭和3年中田教授が岡田氏と共に本症に就いて詳しく報告して以來約50例に達する。著者は最近當教室に於て胃瘍潰が移動性十二指腸に穿通し,而も總腸間膜症に因る盲腸,上行結腸及び全小腸の軸轉を起せる興味ある1例を經驗したので,茲に報告し諸賢の御批判を仰がんと思ふ。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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