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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科3巻9号

1948年09月発行

雑誌目次

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本態不明の脾腫

著者: 友田正信

ページ範囲:P.337 - P.341

1. 緒言
 脾腫にはその發生に當り色々の原因のある事は今更申述べる迄もない。此等の中には特有の症状がある爲に診斷を比較的誤らないものもあれば,他覺的の檢査をなせば的確に診斷がつくものもある。然し所謂バンチ症候群を呈して來た様な場合には,患者血清注射に依る貧血實驗が陰性を示した様な時には,單に其他の臨牀的檢査成績のみでは診斷を下す事は困難である。又剔出脾を鏡檢しても斷定的な所見のない場合には診斷の確定が不可能の場合がある。今かゝる經驗例を示して脾臓外科臨牀に參考資料を供したいと思ふ。

再び急性膵臓壞死の療法に就て

著者: 橋本昌武 ,   澤口貞藏

ページ範囲:P.341 - P.343

 急性膵臓壞死の治療に關する本邦外科の動向は,從來輕症例には保存療法を認めるも,重症例は原則として手術を行ふにありとされたが,最近は之が手術療法の可否に就いて再吟味を要すと唱へるものもあつて,漸次保存療法を支持せんとする傾向を示すに到つた。余等の内橋本1)も既に昭和18年本症の15例を基礎に此が療法に就き論述し,本症の輕重如何を問はず手術は不要で,常に保存療法を施すべき旨主張した。
 余等は其後4年間に該治療方針に依り更に輕症4例,重症8例合計12例の治驗例を重ねたので茲に之を追加報告し,併せて本症は絶對的保存療法に依るべきを再び強唱する。

外科より觀た榮養失調症(第2報)—榮養失調症と第3度凍傷

著者: 大村泰男 ,   西山信雄 ,   上野良太 ,   鹽川優一

ページ範囲:P.344 - P.348

 昨年(昭和22年)と今年の冬季に當病院に收容した患者中,凍傷例が28名程あつた。その全部が東京都内,主として上野地下道から連れて來られ疫者である。28名中の25名が足部第三度凍傷であつて,殘り3名が全身凍傷である。第三度凍傷は滿洲などの如き零下30度,或は40度に達する地域では敢へて稀らしいものでなく,健康人と雖も無防備で,それらの外氣温に曝されゝば第三度凍傷も全身凍傷も不思議でもあるまいが,東京の如き最も氣温の下降した曉方でも零下5度位,これも稀な位で普通は零度前後,しかも日中は5度から10度に上昇して來る地域で觀たのであるから驚きを感ずるのである。そこで,そのよつてくる原因を追究するのが本論文の意圖であるが,先づ経驗した症例を分析してみよう。
 男女別では男22名,女6名で,年齢別では20歳代11名,30歳代4名,40歳代6名,10歳代及び50歳代が各々3名となつてゐる。男子の青壯年者に浮浪者が多いことゝ一致するが,高年者に多くないことから動脈硬化症との關係を否定する。老人性壊疽と謂はれる症例との連鎖が少くなる。凍傷患者は何月頃發生したかをみると,1月8名,12月7名,2月6名,3月4名,11月3名となつてゐる。嚴寒の候と一致してゐる。

急性腹膜炎のペニシリン療法

著者: 岡山義雄

ページ範囲:P.349 - P.353

1 緒言
 Flemingがその著「Penicillin, its practiealapplication」に於て記載せる如く,消化管は大多數の微生物の普通の棲息地であり,その多く,例へば大腸菌,プロデウス菌,サルモネラ群の徴生物と共に,チフス,パラチフス或は細菌性赤痢等の微生物は,現代化學療法の寵兒と謳はれたるペニシリンにさへ不感應である。從つて腹部内臓の重大なる感染は,概ね腸管よりの徴生物に依る故に,此の方面に向つてのペニシリンの應用は比較的小範圍を出ない。事實米國に於ては,化膿性腹膜炎はペニシリンの效果範圍外とされたが,最近「蟲垂に原發せる腹膜炎の大量ペニシリン療法」なる報告あり,漸次應用されつつある状況である。余は昭和21年秋腹膜炎血清使用するも殆んど效果の無い蟲垂炎性汎發性腹膜炎に,ペニシリン毎3時間五千單位,總計12萬單位の比較的少量使用なるも,救命せる症例を經驗し,爾來各種急性腹膜炎に對するペニシリン療法を行ひ來つたので茲に報告せんとする。

蟲垂内容及び穿孔性腹膜炎滲出液の水素イオン濃度に就て

著者: 太田正義 ,   川內拓郞 ,   堀佐喜子

ページ範囲:P.353 - P.356

緒言
 蟲垂内容及び腹膜炎滲出液の水素イオン濃度に關する業績は東西を通じ極めて稀であり,本邦に於ては今井氏(昭,13,)の比較的系統的な測定成績及び卜部氏(昭,18,)の業績があり,又泰西に於てはHeile氏(1930)の成績があるのみである。吾々は過去1年有半に亙つて100例の蟲垂炎剔出後の内容及び穿孔性腹膜炎滲出液のpHを測定し,先人業績の追試を行ふと共に些か知見を得たので茲に報告し,大方の御批判を乞ふ次第である。

興味ある膽道畸形の一手術例に就て

著者: 源河朝明

ページ範囲:P.356 - P.357

緒言
 私は多度津三宅病院に於て右季肋部疝痛を主訴とし,黄疸を伴ひ,膽石症様症状を呈せる患者に於て,開腹の結果膽道に稀有なる畸型を有する1例に遭遇したのでこゝに記載する。

腹腔内出血を伴へる甘藷の過食に因る閉塞性イレウスの1例

著者: 小野百之助

ページ範囲:P.358 - P.360

緒言
 腹腔内の大量出血は,外傷に因る腹部内臓破裂,出血性膵臓炎,腹腔内惡性腫瘍,又は女性に於ける子宮外妊娠破裂等の時に觀られるが,さしたる原因も認められずに,特發的に大量の出血を來す事は極めて稀である。我々は最近甘藷を大量に食べた後に,腹腔内大量出血を伴へる閉塞性イレウスを起した極めて珍らしい症例に遭遇したので,茲に報告し,併せて之が發生機轉に就て聊か考察を試み,大方の御批判を仰がんとする次第である。

腸間膜に發生せる肉腫樣神經鞘腫治驗例

著者: 佐藤正三

ページ範囲:P.360 - P.362

1 緒言
 神經腫瘍は之を他の器官より發生する腫瘍に比すれば一般に稀有な疾患である。1803年Odierが始あて神經腫に就き記載し,爾來多數の學者により組織學的及び發生學的に究明せられたが1822年Reckling hausenは神經織維腫を神經系と密接なる關係を以て發生する故に普通の纖維腫と區別し,結締織性の神經鞘及び神經纖維内鞘の腫瘍性増殖により生ずるものとなした。1908年Verocayは神經纖維細胞即ちSchwann氏細胞より神經細胞を有せざる眞性神經腫を形成し得ること,且つ先天的發育障碍により神經節細胞及びグリア細胞増殖を共に起す系統的疾患としてノイリノームなる腫瘍を區別した。爾來本症の報告相次ぎ現はれるに至つたが,腹腔内臓器に發生することは比較的稀で,1927年Balfour, Hendersonの報告により其の發生頻度を覗ひ得る。私は最近我が教室に於て腸間膜に發生せる小兒頭大のノイリノームの摘出に成功し,臨牀的組織學的に興味ある症例を經驗したので茲に報告する次第である。

原發性腸間膜淋巴性細網肉腫の1例

著者: 近藤良一

ページ範囲:P.362 - P.364

緒言
 細網肉腫についてはRössle-Roulet(4930)の,Retothelsarkomなる名稱を以ての詳細なる記載がなされてから,多數の症例が報告され,我國に於ても,Réticulosarcome(Oberling 1928)を譯した細網肉腫なる命名(緒方1937)が廣く行はれて,赤澤,緒方,天野教授等の研究發表が相ついで行はれている。それらについてみるに,淋巴性細網肉腫の原發部位は身體の上半身よりが大部分とされ(Verhage)殊に頸部及び鼻咽腔淋巴腺が好發部位とされている(高原95%,赤澤80%)。從つて腹腔内よりの報告例は非常に少く,胃壁3例(鹽田,森川,遠藤),廻腸壁1例(朱),後腹膜部4例(若林,金澤,八代)の程度で,こゝに最近津田外科教室にて經驗した原發性腸間膜細網肉腫の1例を報告する。

腸管膜樣包裹の2例

著者: 藤原欣哉

ページ範囲:P.364 - P.366

緒言
 本疾患は1907年露のQwtschennikowがPe—vitonitis fibrosa incapsulataと命名發表せるに始り,我邦に於ては大正15年權藤氏が腹膜畸形として發表したが,昭和2年鹽田氏は「腸管の膜樣包裏」なる名稱が適當ならんと發表して本名稱が主として使用せられている。
 余も最近本症の2例を經驗したので,茲に報告し,併せて本邦に於て既に報告せられた61例につき文獻的考察を加へたいと思ふ。

逍遙性チフス腸穿孔による急性汎發性腹膜炎の治驗例

著者: 岸達朗

ページ範囲:P.366 - P.369

緒言
 腸チフスの經過中腸出血と共に恐るべき合併症として腸穿孔のある事は,既に一般臨牀家に知られてゐる處であるが,此の治療を内科的處置にのみ委ねる時は豫後は絶對に不良であり,唯外科的處置に依つてのみ,而も一部の治癒を期待し得るに過ぎない。思ふにその主なる理由としては,原疾患による高度の衰弱の爲に手術的侵襲にすら堪え得ない場合の多い爲と考へらる。然るに腸チフス性腸潰瘍の穿孔ではあるが,いさゝか是と趣を異にするものがあり,即ち所謂逍遙性チフスと稱せられる場合の腸穿孔である。
 逍遙性チフスとは自覺的症候が初めから輕微で,僅に全身倦怠或は食思不振を訴へる程度に止まり,患者は敢えて就褥することなく多くは自己の職業に從事し,チフス流行時でなければ,其の診斷は甚だ困難である。而もかゝる輕症チフスに於ても腸穿孔の如き重篤なる合併症の突發が必ずしも稀でない事は屡々文獻に見られる處である。

特發性腹膜内膀胱破裂の治驗例

著者: 中村秀之

ページ範囲:P.370 - P.371

緒言
 膀胱破裂を其の原因的に區別すると外傷性破裂と特發性破裂とに區別出來る。又外傷性,特發性を問はず,膀胱が腹膜内に破裂する場合と,腹膜外に破裂する場合とがある。
 吾々は最近診斷困難であつたが,發病後58時間經過後手術をなし幸にして一命を救ひ得た特發性腹膜内膀胱破裂の1例を經驗したので,之を報告する。

肩胛骨結核の治驗例

著者: 上松茂雄

ページ範囲:P.371 - P.373

緒言
 肩胛骨に原發する骨結核は甚だ稀であるが,私は偶々其の1例を經驗し,手術により肩胛關節機能に毫も障碍を貽す事なく治癒せしめ得た1例を報告し,諸家の御叱正を仰ぐと共に御參考に供しやうと思ふ。

大腿骨々折108例の統計的觀察に就て

著者: 首藤正行

ページ範囲:P.373 - P.376

第1章 緒言
 文明の進歩發達に伴ひ交通の頻繁,機械重工業の發展各種運動競鼓の興隆等は必然の事象なり。是等諸要素が災害外傷の發生を容易ならしめ且つ其の數程度をして増加し高度ならしむるの傾向あるは當然にして,諸統計に教示されある處なり。然れども外傷の部位,種類,頻度等に關しては軍隊,學校,都市,工場,鑛山等により自ら統計に劃一性を有せず,平時と戰時とに依りて其の趣きを全く異にするは贅言を要せざる處なり。余は余等の病院に於て日支事變前の數ケ年間に於て診療せる大腿骨々折患者105名に就て小統計的觀察を試みたり。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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