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文献詳細

雑誌文献

臨床外科30巻11号

1975年11月発行

特集 癌免疫と外科治療

Ⅰ.癌の免疫療法の現状と展望

著者: 橘武彦1

所属機関: 1東北大学抗酸菌病研究所

ページ範囲:P.1383 - P.1384

文献概要

□腫瘍免疫と免疫療法□
 実験動物腫瘍のみならずヒトの腫瘍においても腫瘍抗原(腫瘍特異抗原及び腫瘍関連抗原)が存在し,適当な条件下で生体はこれら抗原と反応する能力を有することは今日では衆知の事実である.しかし腫瘍抗原は一般にその抗原性が弱く,したがつて宿主に対して強い免疫応答を起こさせにくい.一方担癌宿主の免疫能は一般に低下しており,かりに腫瘍抗原に対して応答できたとしても,これを拒絶するにいたらず腫瘍の増殖をゆるしている状態が癌患者の姿であろう.したがつて,癌免疫療法はこの腫瘍—宿主関係を両側から改善し,強力な免疫応答が成立するように工夫するにあることはいうまでもない.
 実験的に腫瘍免疫を強化するいくつかの方法が考案され,試みられてきた.それらを列挙すると,(1)免疫賦活剤による非特異的免疫能の増強.(2)種々の方法によつて腫瘍抗原の抗原性を増強させ,特異的活動免疫を成立.(3)感作免疫担当細胞の移入による免疫の成立.(4)免疫学的メディエーター(transfer factorや免疫RNA)の移入による受動免疫.(5)抗腫瘍抗体による受動免疫.(6)阻止因子の除去による免疫の増強.これらの多くは正常動物を予め処理することによつて同系移植腫瘍の移植不成立(免疫予防法)で効果が判断されたものが多く,担癌宿主に与えて有効な効果を発揮したものは少ないか,あるいは未だ検討されていないものもある.しかも多くは移植腫瘍を対象としており,したがつてすべての方法が直ちに人癌の免疫療法に役立つとはいえないであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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