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文献詳細

雑誌文献

臨床外科30巻11号

1975年11月発行

文献概要

特集 癌免疫と外科治療 Ⅳ.癌免疫療法の実際

脳腫瘍に対する免疫療法

著者: 高倉公朋1

所属機関: 1国立がんセンダー脳神経外科

ページ範囲:P.1435 - P.1441

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はじめに
 癌に対する免疫学的治療への関心が近年著しく高まつているが,悪性脳腫瘍の治療においても,その可能性を追究する研究が地道に進められている,脳は従来他の臓器と異なり,リンパ系組織を持たない免疫学的に特殊な,免疫現象の起こりにくい臓器と一般に考えられてきた.しかしallergic encephalitisの存在することや,glia細胞中のmicroglia細胞がmacrophageと同じような働きを持つことが明らかにされたり,各種脳炎や膿瘍に見られるような多数のリンパ球浸潤による間質反応を考えてみると,脳も決して免疫反応から疎外された特殊な臓器でないことは明らかであろう.Gliomaの組織像を見てもリンパ球の浸潤像が認められ,このような間質反応が他の癌と同じように重要な意義を持つていることに変りはない.
 脳腫瘍患者における免疫学的監視機構(immunological surveillance system)が他の癌患者と同様に低下していることも最近の多数の研究から明らかにされてきている(第1表).悪性脳腫瘍患者では末梢血中のリンパ球が減少し,それに伴つてT細胞も減少している,細胞性免疫機構の低下の一つの指標となるPPD(tuberculin)反応やDNCB反応などの遅延型過敏反応の低下が著明で,悪性gliomaや転移性脳腫瘍患者では高率に陰性化している.リンパ球のPHAに対する幼若化率も同様に低下している.Glioma細胞を培養し,患者のリンパ球を混合培養することによつてcytotoxicityが認められ,しかも患者血清にそのblocking factorの存在することも明らかになつた.Humoral immunityの立場からは,患者血清中にある自己抗体の存在が免疫粘着現象によつて認められている.この自己抗体とblockingfactorとの関連もやがて明らかになることであろう.以上にあげた事実は脳腫瘍患者に免疫監視機構が存在し,しかも低下していることを示唆するものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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