文献詳細
臨床研究
閉塞性黄疸に併発する急性潰瘍の研究—胃粘膜関門の解析を中心に
著者: 玉熊正悦1 金山知新1 冲永功太1 石山賢1 中野春雄1 鈴木宏彰1 碓井昌1 和田信昭1 小泉澄彦1 菅原克彦1
所属機関: 1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.367 - P.372
文献概要
1964年Davenport1,2)は,脂肪酸やアスピリンで処置された胃粘膜が,胃内腔から大量のH+をとり込んで出血やびらんをきたす現象に注目して,胃粘膜関門(gastric mucosal barrier)という概念をはじめて提唱した.以来今日までの10年間にアスピリンや胆汁酸など幾つかの化学物質がこの胃粘膜関門を破綻させることが知られてきたが,とくに最近では大出血やエンドトキシンショックなど生体側の条件の変化によつて,この関門がどのように修飾されるか興味を持たれ,いわゆるacute stress ulcerの成因をこの胃粘膜関門破綻理論を軸に説明しようとの試みが注目されている3-8).
著者らは従来から閉塞性黄疸患者や敗血症患者に好発する急性胃十二指腸潰瘍に深い興味を持ち,胃酸分泌,粘液分泌,胃粘膜血流,ガストリンやステロイド代謝など潰瘍発生に連る攻撃・防禦因子を検討しているが9-11),最近この胃粘膜関門の病態面から閉塞性黄疸と急性潰瘍ないし上部消化管出血の問題を検討したのでその成績を報告する.
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