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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科30巻6号

1975年06月発行

雑誌目次

特集 乳癌—最近の趨勢

マンモグラフィー,ゼロラジオグラフィー,超音波,サーモグラフィーによる診断

著者: 高橋勇

ページ範囲:P.645 - P.651

はじめに
 表在性臓器である乳腺の癌を診断するには内臓の癌に比べて視,触診が極めて重要であり,基本的なものといえる.現在でも,時として,単に視診のみでも明らかな乳癌と断定し得るものもあるが,乳癌の大部分は,乳腺内の,単なる腫瘤,しこりのみが唯一の症状となるものである.乳腺腫瘍の鑑別にあたつては,形や硬さ,周囲組織との関係,peau d'orange, dimplingなど,乳癌診断に関する臨床的特徴が,教科書に記載されている如き典型的なものであれば,触診によつても診断は比較的容易である.しかし,これらの所見の多くは,ある程度進行した乳癌においては明瞭なものであつても,早期と考えられる微小な乳癌では診断は決して容易ではない.
 このため確診困難な症例に対して,客観的判定の資料や情報を得るため,従来から乳癌を主体とした乳腺疾患の診断方法として種々の補助診断法が考えられてきた.このうち,マンモグラフィーは,乳癌のレントゲン診断として既に古くから行なわれ,多くの研究があり,現在ではもつとも有力な理学的補助診断法として広く施行されている.超音波検査法が,乳癌の診断に用いられるようになつたのは,比較的近年であるが,とくにわが国では盛んに利用されている方法の1つてある.サーモグラフィーによる乳癌の診断は,外国では熱心にとり上げられ,有力な検査法とされており,わが国でも用いられるようになつてきた.なお,特殊なレントゲン診断法の1つとしてゼロラジオグラフィーがあるが,以下これら理学的補助診断法について概観する.

乳腺生検の病理—病理統計と境界病変の検討

著者: 広田映五 ,   佐野量造

ページ範囲:P.653 - P.661

はじめに
 乳腺疾病の診断とくに早期癌の確診は,種々の理学的検査法が進歩した今日でも,なお経験豊富な外科医の触診診断に比べて格段に優るものはないといわれている1).しかし治癒率の極めて高い,minimal carcinoma2)の診断と治療を問題にしている現今では3-6),腫瘤の有無にかかわらず小さい病変の確診のためには,生検組織診断がいかに重要であるかということは衆知の事実である.
 乳腺生検の適応,効用および信頼度に関してはすでに多くの議論がある7-10).組織型の判定ことに境界病変の組織判定,外科的治療法の決定および予後判定などのための情報提供は,われわれ病理医に課せられた使命である.

Stage I乳癌と定型的乳房切断術

著者: 井上権治 ,   岡崎邦泰

ページ範囲:P.662 - P.668

はじめに
 乳癌は体表面に発生する癌腫である.したがつて通常他の深部内臓に発生する癌よりも発見,診断は容易であり,その根治的手術もそれほど直接生命の危険を伴うような侵襲ではない.しかもそのStage Iとなれば根治手後の結果も当然良好であり,広く悪性腫瘍治療の現状からみるとむしろ満足すべき治療成績を挙げている部類に属するものといつてよかろう.しかしながら治療医学の目標を100%の治癒と後遺症なき社会復帰とすれば,今日のStage I乳癌治療成績は決して満足すべきものではなく,さらに一段の飛躍,向上が望まれ,また診断法,各種補助療法の進歩も加わつて,従来の根治的手術法にもある改変が要求される気運もみえはじめている.
 第20回乳癌研究会(1974年6月,徳島市)においてこのStage I乳癌の問題がとりあげられた理由も上記の点にあつたわけであり,ここに本研究会における記録と各種代表的文献の意見を参照してStage I乳癌(I期乳癌)に対する定型的乳房の切断術(定乳切)の問題を論じてみる.

再発転移の治療

著者: 武田清一

ページ範囲:P.669 - P.675

はじめに
 再発乳癌に対する治療は内科的・外科的内分泌療法,放射線療法,制癌剤による化学療法,再発病巣の剔出あるいはリンパ節廓清などの再手術が適宜組み合わされ行なわれている.しかしながらこれらの治療により症状の軽減および,ある程度の延命効果を期待することはできるが,5年以上の長期間の生存例を得ることはなかなか難しい.われわれは今回,教室における乳癌根治手術後の再発例を対象として,その再発様式,各種再発病巣に対し行なわれた治療および再発後の生存期間などにつき検討した成績の概要を述べ,再発乳癌に対する治療につき考察を加える.

根治術後の機能障害

著者: 久保完治

ページ範囲:P.677 - P.682

はじめに
 乳癌の特有な進展形式の形態学的な解明が進むとともに,その根治手術の方式も逐次改善され,治療成績の向上に資してきた.他面,このように徹底した手術に伴う,患者に対する肉体的・精神的な侵襲は次第に大きくなり,その面に対する積極的な配慮の必要性が近時とくに痛感されるようになつてきた.すなわち「良薬は口に苦し」としてきた外科医の立場は"quality of survival"を考える方向に進みつつあるのが現状であろう.
 これは,最近,医療の専門分化がすすみ,患者の"total care"の面で欠けるところがでてきたことにも関連があるであろう.診断,治療に術後管理を含め,一貫した体系下での乳癌患者のcareの重要性が認識されてきた.もちろん,はなはだ広範な領域なので,ひとり外科医のよくするところではない.乳癌術後の問題に限つても,肉体的,精神的,家庭的,社会的,性的あらゆる領野にわたつて問題が多い.他の専門領域の医師,ソーシャルワーカー(MSWおよびPSW),理学療法士(PT),職能訓練士(OT),看護婦など多くのスタッフの協力が要請されるところである.

術後遠隔成績—特に手術術式の検討

著者: 久野敬二郎 ,   深見敦夫 ,   堀雅晴 ,   大橋一郎

ページ範囲:P.685 - P.692

はじめに
 乳癌は各種臓器の癌のなかでは治療成績のよいものの1つである.早期発見もしやすい筈である.しかし現在でもかなり進行した症例が多く,したがつて治療成績も満足すべき状態ではない.日本は欧米諸国よりは乳癌は少なく,また悪性度もやや低く,治療成績もよいのではないかと思われるが,将来は日本においても乳癌は増加し,悪性度も高くなることが予想される.乳癌の治療は,手術療法が主体であり,これに照射療法,内分泌療法,化学療法などが合併して行なわれることがある.手術療法は19世紀の終りにHalstedやMeyerにより始められたstandard radicalmastectomyが乳癌の基本的手術として広く行なわれ,Haagensenはこれをより完全な手術とした.われわれも定型的乳房切断術を乳癌に対するもつともよい手術として大多数の症例に行なつてきた.しかし胸骨旁リンパ節が乳腺の1次のリンパ節であり,これにしばしば転移することが明らかになつたので,胸骨旁リンパ節を郭清する拡大手術も行なうようになり.また少数例ではあるが鎖骨上窩郭清も試みた.
 定型的乳房切断術から拡大手術へと移る傾向が過去にあつた一方では,逆に縮小手術による治療成績の報告が多く見られるようになり,現在では術式の選択の問題はやや混乱した状態にあるといえる.この問題の解決は手術症例の予後を検討することによつてのみ達せられる.

EDITORIAL

乳癌—最近の趨勢

著者: 阿部令彦

ページ範囲:P.643 - P.644

 腫瘍宿主よりみた比較検討
 日本における乳癌の発生状況を罹患率より調査することは困難であるが,死亡率よりみると年次別にみて僅かではあるが上昇の傾向を辿りつつある.日本の死亡率は英・米国のそれぞれ約1/7,1/6にあたり,現在のところ死亡率は低い.しかし生活様式の欧米化に伴い日本における胃癌の死亡率が漸減し,大腸癌のそれが漸増し,また肺癌では,近年死亡率が急激に増加して,臓器別にみた癌の死亡率が欧米型に近づきつつある現状を眺めると,将来乳癌の死亡率が増加するのではないかとの推察がなされる.現在の日本の乳癌の状態を,腫瘍宿主の面より欧米と臨床的,基礎的に比較検討することは,上述の意味で重要である.このようなneedから,乳癌についての国際的研究の気運が生まれ,現在それが実行にうつされつつあることは,臓器癌よりみた乳癌最近の趨勢の1つといえる.

資料

乳癌取扱い規約改正の要点—新TNM分類を含む

著者: 泉雄勝

ページ範囲:P.693 - P.695

乳癌取扱い規約の成立とその後の経過
 乳癌取扱い規約(以下"規約"とする)の第1次案が公表されたのは1967年6月であつたが,その必要性が企画されたのは,その数年前からU.I.C.C.(国際対癌連合)によるTNM病期分類に関する委員会が作られ,その結論が出た段階で,病期以外の諸因子についても記載規準を統一しようとする話が持上り,TNM分類委員会が発展的解消をして,乳癌研究会を主軸として乳癌規約委員会が1966年に発足したことにはじまる.当時先輩格として,胃癌取扱い規約(案)がほぼ完成していたので,考え方の骨子はそれにならう所が多かつたが,乳癌は体表臓器に発生するため,術前臨床症状の記載を詳しくし,手術以外の治療法にも触れ,また病期としては,上述のTNM分類方式がとり入れられた.
 さて,上記の乳癌取扱い規約(案)(1967)はその後小部分の改正が加えられるとともに,病理編についても検討され,この両者をまとめて,乳癌取扱い規約(第2版)(1971)が刊行された.その後さらに,臨床編の語句改正,一部の加筆がなされ,同規約(第3版)(1973)が刊行され現在に及んでいる.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・35

乳腺悪性腫瘍の諸相—手術材料の病理解説 V.特殊型乳癌(3)肉腫(1)

著者: 広田映五 ,   佐野量造

ページ範囲:P.640 - P.641

 特殊乳癌は前回から引続き今回も極く稀な型の1つである癌肉腫と,乳腺肉腫のうち悪性リンパ腫の2例を供覧することとする.

クリニカル・カンファレンス

妊娠期授乳期乳癌をどうするか

著者: 深見敦夫 ,   高橋勇 ,   中居光生 ,   堀内淳一 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.696 - P.708

《症例》
 患者25歳,主婦.
 家族歴 悪性腫瘍なし.

トピックス

乳癌に関する日米合同研究の成果—第3回日米合同Cancer Symposium

著者: 山本浩 ,   七沢武 ,   石川七郎 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.709 - P.712

はじめに
 第3回日米合同のCancer Symposiumが1975年4月28日(肺癌部門)および29日(乳癌部門),国立がんセンターで開催された.本研究の主旨は国立がんセンター(NCC)とNew YorkのMemorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)との間で臨床および基礎領域の研究成果を相互に交換して治療成績の向上をはかることであり,その実現のため数年来石川七郎病院長,阿部令彦慶大外科教授らが具体的に開催要領を検討してきた.以下乳癌部門について今回の発表内容要旨を述べる.

外科医のための生理学

十二指腸・小腸—運動の生理

著者: 伊藤漸 ,   竹内真人 ,   相沢勇

ページ範囲:P.713 - P.716

はじめに
 臨床上,われわれが接する消化器外科での訴えは,消化管運動の異常に起因すると思われるものが多いことは周知の通りであるが,各症状と運動状態の関係は十分に把握されていない.
 腸管の主な機能は消化と吸収であり,小腸運動は胃から出た内容物を消化液と共に混合し,粘膜に接触させ,内容物を徐々に下方へ輸送することにある,しかし,小腸運動には神経,体液の影響とは無関係な自動運動があり,その運動機構を一層複雑なものにしている.さらに,一般の理解を妨げるものによい研究方法の少ない点があげられる.特にヒトの消化管運動は,口側および肛側の近位消化管ではかなり行なわれても,小腸では難しい.このような状況から,消化管運動の研究は他の分野に比し,やや遅れているのが現状である.本稿ではまずいくつかの研究方法とそれぞれの知見を紹介し,さらにわれわれ独自め方法による成果も解説し,小腸運動の生理について総説する.

手術手技

経皮的胆管ドレナージ手技—新しい器具の開発を中心に

著者: 高田忠敬 ,   小林誠一郎 ,   内田泰彦 ,   福島靖彦 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.717 - P.722

はじめに
 最近,閉塞性黄疸症例に対し侵襲の少ない非開腹的な黄疸軽減処置として,経皮的胆管ドレナージが試みられるようになつてきた1-10).しかしながら,いまだ穿刺成功率やチューブの留置,固定に種々の問題がみられている.われわれは,経皮的胆管ドレナージの安全性,確実性の向上に対し,いくたの工夫を加えこれらの問題を解決すべく努力してきた.
 まず,穿刺成功率,チューブの留置,固定に関しては,すでに報告した影像下直達法の開発,内筒チューブを挿入する二重管方式の採用,固定盤の作製と接着剤の導入により,ある程度の満足できる結果をえてきた1-3).しかし,胆管の拡張がいまだ軽度の症例では,必ずしも確実な内筒チューブ(ドレナージチューブ)の挿入が望めず,この点に関しての改良が必要であつた.

臨床研究

高カロリー輸液の実際—とくに鎖骨下静脈穿刺法およびその合併症について

著者: 奥野匡宥 ,   長山正義 ,   中尾昭治 ,   笠井孝洋 ,   紙野建人 ,   梅山馨

ページ範囲:P.723 - P.727

はじめに
 Dudrick & Wilmore1)らの報告以来,高カロリー輸液法の有効性が広く認められ,次第にその恩恵を受ける症例も増加しつつある.反面この輸液法を行なうに際して,種々の合併症の危険を伴い,その実施には細心の注意がはらわれねばならない.われわれは,1973年4月以来鎖骨下静脈穿刺により,上大静脈にカテーテルを留置し,高カロリー輸液を行なつているが,その概略を述べるとともに,とくに手技に関する合併症について検討した.

空腸移植を併用した幽門側(BI法)広範囲胃切除術

著者: 松林冨士男

ページ範囲:P.729 - P.733

はじめに
 胃の高位に存在したり,波及している病巣に対し,幽門側広範囲胃切除を行なうと,残胃が小さくなり,いわゆる小胃症候群などの後遺症が残り,不都合を感じさせる.そこで噴門部切除を行なうと逆流性食道炎などの合併症が起こり,理想的手術とはいい難い,このような場合,むしろ胃全剔出術をすすめる人もあるほどである.
 そこでわれわれはこのような場合,小さくなつた残胃と十二指腸の間に空腸を移植挿入するBI法形式の胃切除術を行ない,上述の術後障害を除去し,十分食餌もとれる満足すべき手術を行なつているので,これについてのべる.

臨床報告

脈なし病の外科治療—炎症残存期の1例

著者: 岡本好史 ,   松田光彦 ,   黄秋雄 ,   山中浩太郎 ,   渡辺裕

ページ範囲:P.735 - P.738

はじめに
 脈なし病は大動脈弓分枝の閉塞性病変として本邦ではよく知られている.しかしながら,本症は頭側主幹動脈のみならず下行大動脈及びその分枝にも病変がみられるように,全身性であり,かつ進行性の大動脈炎症候群でもある.したがつて外科的療法に関しても問題が多い.
 私共は炎症残存期の本症に対して,積極的にダクロン人工血管をbypass移植し,2年後の現在脳血流はよく保たれ,症状は著しく改善し良好な結果をえた.

扁平上皮癌を主とした甲状腺癌の2例

著者: 高嶋成光 ,   竹内宣昭 ,   原浩平 ,   堀堅造 ,   森脇昭介 ,   河野恒文

ページ範囲:P.739 - P.742

はじめに
 甲状腺原発の扁平上皮癌は極めてまれである.最近われわれは扁平上皮癌を主とする2例の甲状腺癌を経験し,組織発生上興味があつたので報告する.

術後回復期に発症した急性胆のう炎の2症例

著者: 大本武千代 ,   田中聡 ,   木村穂積 ,   目黒文朗 ,   中嶋健博 ,   戸田完治 ,   唐土善郎 ,   水取悦生

ページ範囲:P.743 - P.747

はじめに
 肝,胆道以外の臓器あるいは部位の手術後回復期に急性腹症の病像を呈し,開腹または剖検によつて急性胆のう炎と診断される症例があることが知られている.
 本症の発生はまれなものであるが,われわれが通常経験する急性胆のう炎と異り,高齢者に比較的多く発生し,壊死性変化や穿孔をきたしやすい点などが注目されている.

重症肝破裂を伴つた肝後面下大静脈破裂(traumatic rupture of retrohepatic vena cava)の1手術治験例—本邦第1例

著者: 高見博 ,   伊藤隆雄 ,   前中由己 ,   森下幹人 ,   安藤暢敏 ,   影山隆久 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.749 - P.752

はじめに
 下大静脈損傷は死亡率の高い損傷であるが,とくに肝後面部における損傷retrohepatic vena cava injuryはきわめて重篤であり,本邦においては未だその治験例の報告をみない.欧米においても救命例は少なく,中でも交通災害などの鈍的外力による本損傷の治験例は,本損傷と同じ取扱いを受ける肝静脈損傷例を含めてもまだ数例に過ぎない.1965年8月1日,神奈川県交通救急センター発足以来,1973年7月31日に至る8年間に重症肝破裂を伴つた肝後面下大静脈破裂の2例を経験した.いずれも歩行者事故の女児例で,その第1例は術中出血死したが,最近の第2例を救命し得たので報告し,文献的考察を行なう.

Insulinomaの1治験例

著者: 小林重矩 ,   上田征八郎 ,   池田明生 ,   松永章 ,   中山和道 ,   古賀道弘 ,   長田英輔

ページ範囲:P.753 - P.757

はじめに
 膵ラ氏島腫瘍(Insulinoma)は1927年Wilder etal.1)がhyperinslinismの症例に開腹手術を施行しme-tastatic islet tumorをみつけその相関を証明した.1939年にはGraham et al.2)によりinsulinomaが摘出され,その低血糖発作を消失せしめるのに初めて成功し,それ以来欧米では数多くの症例が報告されており,本邦においても1933年三宅3)の剖検例,1936年楠,棟方4)の臨床治験例を初めとし,本症例の報告が増加している.
 われわれの教室ではこれまで2例のInsulinomaを経験し,いずれも手術により治癒せしめている.1例はすでに報告ずみであるが,今回選択的腹腔動脈造影にて,術前部位診断のできた症例を経験したので,若干の文献的考察をまじえ報告する.

近親結婚家系に生じた若年者大腸癌の1例

著者: 山際裕史 ,   岡林義弘 ,   多田弘一 ,   冨川一郎 ,   清水武 ,   竹内藤吉 ,   上島亨

ページ範囲:P.759 - P.762

はじめに
 幼若年者に,消化管の悪性腫瘍の発生することはまれである.しかしながら,10代でも,最近は胃にはかなりの例数が報告され,これは胃癌診断法の進歩によるのであろうが,手術治癒可能例もまれには報告されてきている.
 腸管にもまれではあるが,過去に15例程度が文献上に報告されているが,その予後は成人例に比しよくない.

盲腸に発生した非特異性単純性潰瘍の1例

著者: 加辺純雄 ,   大森幸夫 ,   中野喜久男 ,   水野幸一 ,   田中昇

ページ範囲:P.763 - P.767

はじめに
 大腸には,さまざまの疾患を背景として非特異性潰瘍が発生する.それらの中で非特異性単純性大腸潰瘍については,潰瘍性大腸炎や大腸Crohn氏病と比較して,なお概念の混乱があり,まだ検討の段階にある多くの問題点を抱えている.すなわち,この非特異性単純性大腸潰瘍は1830年Cruveilhierによつて,"simple ulcer"と名づけられて以来,欧米では幾つかの総説,症例報告1-3)9)等がみられるが,わが国での報告は比較的少ない現況にある(付表).
 最近,著者等は,盲腸部に発生し手術により治癒せしめ得た単純性大腸潰瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

回腸に発生した神経鞘腫の1例

著者: 松本俊彦 ,   高垣衛

ページ範囲:P.768 - P.772

はじめに
 消化管において神経鞘腫の発生はまれであり,とりわけ小腸に発生することはきわめてまれである.本邦では1938年に佐々木21)が空腸に発生した神経線維腫を報告して以来,十二指腸,空,回腸に発生した神経鞘腫,神経線維腫は27例の報告例をみるにすぎない.われわれは最近腹痛を主訴に来院し,イレウスの診断のもとに手術を施行し,術後の病理組織診断にて回腸神経鞘腫であることを確認した1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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