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臨床研究
吻合病の臨床—術後成績と治療方針について
著者: 戸塚守夫1 時田捷司1 石山勇司1 井村勝之1 近藤益夫1 早坂滉1
所属機関: 1札幌医科大学第1外科
ページ範囲:P.859 - P.864
文献購入ページに移動腸管の側々または端側吻合術後に生ずる障害としてのいわゆる吻合病についての研究は,最近ようやくその病態生理面での解明が緒につきつつあるのが現状である.吻合病の定義,病態生理については1935年Henschen1)がAnastomosenkrankheitなる名称を提唱して以来,多くの研究者によつてそれぞれの立場から論ぜられ,またいささか混乱もあるが,われわれは1959年来その発生病理,臨床像などについて報告を続けている2-15).われわれは吻合術という手術操作により生じた障害であることから,局所性,全身的因子を含めて
①消化管相互の短絡吻合により生ずる悪循環(cir-culus vitiosus)
②曠置部腸管(盲管)における腸内容の逆行性鬱滞
③側々または端側吻合によつて生ずる腸管盲端の盲嚢形成とその内容鬱滞なる状態に起因する自他覚的障害であると定義づけている3,5,9).したがつてごく軽度の障害以外では外科的治療が唯一の根治法である.しかし吻合病の報告や集計は多数あるが9,16,17),その術後長期遠隔成績については,まだ報告をみない.そこでわれわれの教室において,1958年1月から1972年12月まで過去15年間に経験した吻合病64症例について,その臨床像,術後成績を集計し,その治療方針について若干の検討を加えたので報告する.
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