文献詳細
臨床報告
稀有な急性腹症の1例:胃野兎病—本邦第1例
著者: 一戸兵部1 一戸るみ子1 吉岡岑生1 杉本博洲1 石川惟愛1 佐藤光永2
所属機関: 1青森県黒石市厚生病院外科 2弘前大学医学部第1病理
ページ範囲:P.901 - P.906
文献概要
野兎病(Tularemia)は人獣伝染病の1つである.悪寒,高熱,リンパ腺腫脹をきたす一種の伝染病で1921年E.Francisにより,さらに,1924年大原八郎が,それぞれまつたく独立に発見し精細に研究している.本邦では東北を中心に中部,北陸,関東,北海道で発見され風土病と考えられており,野兎病菌に感染した野兎に触れ,あるいは料理する際人が感染し,肘,腋窩のリンパ腺の腫張,疼痛を主訴として発症し,まれにはチフス様症状を呈するといわれ,今までに本邦では,内臓系,特に消化器系に発生することが極めて少ないとされ,わずかに大原らの野兎病性腹部大動脈瘤の1例4)(本症例においては組織診断のみ菌培養されず)が報告されているにすぎない.ここにわれわれは,本邦初めての胃型野兎病の1例を報告する.
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