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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科30巻8号

1975年08月発行

雑誌目次

特集 消化管の創傷治癒

血管構築からみた吻合法の検討

著者: 丸山圭一 ,   河井敏幸 ,   浅野芳雄 ,   西村昌幸 ,   北島政樹 ,   石井良治 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.943 - P.951

はじめに
 創傷治癒に局所の血行状態が大きな影響を及ぼすことはよく知られ,血行不良の場合には下腿潰瘍にみられる如く治癒反応は非常に遷延する.消化管吻合部の環境が一般創傷のそれと著しく異なるとはいえ,生体の治癒反応という面では共通しているはずである.そこで,吻合部の癒合を微細血管構築の面から検討し,吻合に際しての注意点等を述べてみたい.

抗張力を中心にしてながめた消化管創傷治癒

著者: 林四郎 ,   市川英幸 ,   荻原廸彦 ,   苅部徳郎

ページ範囲:P.953 - P.960

はじめに
 手術手技が向上し,手術自体も安全なものとなつた今日ではあるが,手術的療法の基盤には創傷治癒を如何にして迅速,確実なものとするかという基本的な問題が存在しており,とくに不完全な癒合によつて腹膜炎や通過障害を惹起させやすい消化管の手術にさいしてこの配慮が大切である.また消化管壁には内容の通過,蠕動運動によつて大きな力が加わるだけに創癒合の程度を示す物理的特性,抗張力(tensile strength)や破断強度(breaking strength)にも関心を寄せることが必要である.さて創傷治癒過程の研究は決して新しい歴史をもつものはないが,対象が実験動物,しかも皮膚,皮下組織や骨,筋膜などに限定されているきらいがあり,消化管壁の癒合に関しても主として形態学的な面からの検討がその主流であつた1,2).筆者らはこの現状をながめて,消化管壁の治癒過程をムコ多糖膠原生成を中心にした生化学的反応,あるいは線維成分の増生に関係した物理的特性の面について検討を進めてきたので,筆者らが得た実験成績も含めて,抗張力からながめた消化管の創傷治癒について今日の見解をまとめたい.

縫合法別にみた消化管創傷治癒

著者: 前谷俊三

ページ範囲:P.961 - P.966

はじめに
 消化管吻合の成否を左右する因子のなかで縫合法は果たしてどれだけの重みを持つだろうか,1972年外科学会総会での陣内座長の問に対するシンポジストの答が色々であつたように,その評価は容易ではない.恵まれた条件下では,縫合法を変えても生体はそれに対応した治癒機転を示し,種々の縫合法の成績は大同小異に終ることが多い.文献をみると,縫合法の重要性を強調する者の間でも各方法の評価が全く相反することもある.われわれ外科医は縫合法について多少とも好みや偏見を持つていることは否めない.このためその評価において,本来データから導かれるべき結論が先回りして,逆にデータを従えるという危険もないではない.しかし,例えばGoligher8)の冷酷とさえ思える綿密な臨床実験が示すように,縫合法の差が手術の予後に重大な影響を及ぼすことも否定できない.そこでまず消化管の治癒過程で縫合部の強度に直接影響する要素を述べ,ついで各縫合法による癒合の差をこれと関連して検討する.

異なる臓器間の吻合における創傷治癒—食道と小腸

著者: 井口潔 ,   杉町圭蔵 ,   八板朗 ,   中村輝久

ページ範囲:P.967 - P.973

はじめに
 消化管の吻合法は消化器外科のもつとも基本的な手技であり,古くから十分に研究され検討されつくした問題であるにもかかわらず,低蛋白血症や副腎皮質ホルモン長期投与などの全身的悪条件あるいは食道再建術などの吻合部局所の悪条件の場合には縫合不全が皆無ではない.これを防止するには各消化管の解剖学的特性を十分に把握することが必要であり,異常環境下での安全な吻合にはそれなりのきめこまかい手技上の配慮が要求されよう.以下,この点に関するわれわれの実験成績を述べ,安全な食道小腸吻合について創傷治癒の面から若干の検討を加えた.

異なる臓器間の吻合における創傷治癒—胆管・膵管と小腸

著者: 佐藤寿雄 ,   高橋渉 ,   松野正紀

ページ範囲:P.975 - P.982

はじめに
 胆管と腸管との吻合術は,閉塞性黄疸という悪条件下で施行されることが多く,手術手技の面でも通常の消化管吻合よりも慎重な配慮が要求される.また,吻合に用いる消化管も十二指腸を好んで用いるもの,空腸を好んで用いるものなどがあり,その術式間の優劣,術式の適応などに関しても未解決の問題が多い.一方,膵管と小腸との吻合は,主として膵頭十二指腸切除(以下膵頭切除)術後の消化管再建術の一部として,あるいは慢性膵炎に対して膵管の減圧を目的としたドレナージ手術として,あるいはまた膵外傷による膵管断裂の場合などに行なわれる.膵管空腸吻合は他の消化管吻合に比較して縫合不全を起こし易く,一旦発生した場合には出血,汎発性腹膜炎を併発し,また難治性膵瘻をのこすことがある.また膵頭切除の際の残存膵の機能についても多くの問題が残されている.今回は著者らの行なつている胆管と小腸,および膵管と小腸との吻合法について述べ,これら吻合術における2,3の問題点に触れてみい.

創傷治癒の生化学の進歩

著者: 毛利喜久男

ページ範囲:P.983 - P.988

はじめに
 創傷治癒は外科領域における重要な問題である.これには年齢差,性別等の個体による差,さらに創傷の種類による差,創傷の状態(開放創,閉鎖創等)に基づく差,感染の有無等,さらに基礎疾患が存在するか否かによる差,等の点が検討され,創傷治癒の際に考慮されなければならない.しかしこれらの点について十分な配慮が配られ,さらに創面に感染が認められない場合においても,創面哆開がおこる場合がある.当然のことながら創傷治癒には各種の生体内因子が関与していると考えられ,今日まで多くの研究が発表されてきた.とくに生体内の蛋白性物質,コラーゲン,コラーゲン蛋白,酸性ムコ多糖類,中性脂肪体,線維芽細胞等を注目した研究者も多い.これらの物質を測定し,創傷治癒の生化学的変化および動態を観察した報告もみられる.外科領域における手術の現況をみると,貧血がなければ手術の際補充する物質として血漿,アルブミンおよびグロブリン等が使用されている.近代化学工業の進歩により,生物製剤としての血漿,アルブミン,グロブリン以外にも,さらには凝固因子としてのフィブリノーゲン,Faktor II,VII,IX,X等が精製され,臨床的にも患者に使用しうる状態になつている.その他,最近,凝固因子としてのFaktor XIIIが注目されてきた1).Thiesおよびその共同研究者2),またGieharkeおよびその共同研究者は3),手術患者の術後手術創縫合不全,あるいは手術創治癒障害の発現にFaktor XIIIの欠乏が関与していると報告している.本稿においては,このFaktor XIIIに着目し,臨床的および実験的に手術前後のFaktor XIIIの値を測定,追求し,Faktor XIIIと創傷治癒との関係を検討してみた.

座談会

これからの創傷治癒研究

著者: 藤城保男 ,   中村紀夫 ,   高野正博 ,   渡辺洋望 ,   石引久弥

ページ範囲:P.990 - P.1001

 古くて新しいテーマ,創傷治癒をめぐつて外科臨床サイドからも積極的なアプローチが試みられており研究成果の応用が期待されています.そこで今回はとくに病理の立場からの意見もまじえ,現況の紹介と同時に基礎と臨床の共同研究の必要性やこれからの課題も含めて,大いに議論を深めていただきました.

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・1

色素法

著者: 遠藤光夫 ,   鈴木茂 ,   田中三千雄 ,   中江遵義

ページ範囲:P.940 - P.941

A.食道
 1)0.5%メチレンブルー溶液または1〜2%トルイジンブルー溶液を,内視鏡直視下に撒布,1分後に水洗し,余分な色素液を流して観察する.癌露出部への着色が,癌潰瘍底,腫瘍表面の附着物,苔の濃染部と正常上皮におけるわずかの色づきとの中間位にみられる(①).凍結切片による検索で,癌細胞の2〜3層の厚さに色素がみられ,"表面への附着","しみこみ","核,細胞質へのとりこみ"の3種類がみられる.良性びらんに対しては,肉芽組織,また再生上皮部分で着色がみられるが,苔以外は一般には癌部より淡い.びらんの対照をつける,びらん内の苔ととりのこし上皮との鑑別に応用される(②).
 2)3〜5%ルゴール液の撒布で,正常上皮は,ふくまれるグリコーゲンのため黒変する.癌,びらんなどで,上皮欠損部は変色しない.③は摘出標本に撒布したもので2つの癌部は黒変しない.なお,上皮内癌,異型では色が淡く,興味のあるところである.

Pros & cons

「空腸移植を併用した幽門側(BI法)広範囲胃切除術1)」を読んで—(「臨床外科」第30巻 第6号 所収,松林冨士男論文に対して)

著者: 榊原宣 ,   小林政美 ,   市川武

ページ範囲:P.1002 - P.1003

はじめに
 今日,外科領域において臓器欠損のできるだけ少ない,術後合併症,後遺症の少ない,いわゆる理想的手術を目ざして,種々の手術法が考えられ実施されている.消化器外科の分野においてもまた同様である.最近,松林冨士男博士は「空腸移植を併用した幽門側(BI法)広範囲胃切除術」なる論文1)を発表された.この手術法は瀬尾貞信教授がはじめて創案発表されたものであつて2),中山恒明教授を通して,同じシューレに学ぶわれわれにとつてまことによろこびにたえない.しかし,本手術法の採用にあたつて,松林博士のお老えといささか考えを異にする.われわれは胃全剔後にはこの手術を採用しているが,胃切除後にはこの手術法を用いていない.そこでこの手術法に対するわれわれの考え方についてのべてみたい.

外科医のための生理学

十二指腸・小腸—消化吸収の生理

著者: 長嶺慎一

ページ範囲:P.1009 - P.1012

□小腸粘膜の構造□
 小腸の長さは,人種,性別,食習慣によつて異なり,男子は女子より長く,菜食者は肉食者より長い.腸管の長さの測定法は,糸を腸間膜付着点の反対側すなわち遊離縁において腸を緩徐に引きつつ測定するSappey法が通常用いられる.同一人の腸といえども測定法によつて差を生じ,腸間膜を離断して測定すれば長くなり,また第1回目の測定は第2回目の測定より長い.これは腸壁の収縮反応によるものであるから第2回目以後のものは価値がない.正常人の小腸の長さの平均は,男609cm,女491cm(中山),622cm(外山),632.2cm(副島),760.8cm(三宅),男708cm,女547cm(Robinson),男669cm,女586cm(Bryant)などである.

臨床研究

末梢循環障害を主訴とした膠原病

著者: 大城孟 ,   向井清 ,   洪性徳 ,   阪本俊一 ,   杉立彰夫 ,   村上文夫

ページ範囲:P.1013 - P.1018

はじめに
 膠原病は,しばしば指趾チアノーゼ,疼痛,レイノー現象など末梢循環障害を初期症状として発病してくることがあり,血管外科外来を受診する機会の多い疾患の1つである.
 しかし膠原病による末梢循環障害は,他疾患による末梢循環障害とほぼ類似の臨床症状を呈するため,両者を鑑別することは容易ではなく,その診断はむずかしい.そのために,膠原病による末梢循環障害は,ありふれたレイノー症候群,血栓性静脈炎,慢性動脈閉塞症などとして加療されていることが多い.

大腸疾患の診断と治療方針—特に大腸早期癌について

著者: 中川原儀三 ,   秋本竜一 ,   尾島敏夫 ,   上林一夫 ,   佐々木正 ,   高島茂樹 ,   木村捷一 ,   小山文誉 ,   渡辺公男 ,   宮崎仁見 ,   沢崎邦広 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1019 - P.1023

はじめに
 大腸疾患の治療向上をはかるためには,大腸疾患の一般に対する啓蒙と同様,系統的な集団検診を行ない早期発見につとめ,根治療法を施行すべきである.
 近年癌の早期発見に関して一般に啓蒙されつつあり,胃癌,子宮癌などは早期発見によつて良好な成績をあげているが,これに比べて大腸癌の早期発見はかなり遅れているようである.このような現況で,私どもは教室における最近8年間の大腸癌,とくに大腸早期癌を中心に,その診断と治療方針について検討した.ここで大腸早期癌を癌の浸潤が粘膜または粘膜下層以内にとどまり,癌浸潤が固有筋層におよばないものとして,いわゆる胃癌研究会の早期癌の規約に準じた.

白ろう病に関する研究—白ろう病患者に対するβ-pyridyl carbinal tartrateの効果について

著者: 土生久作 ,   岩肇 ,   人羅俊雄 ,   飯田紀之 ,   乾松司

ページ範囲:P.1025 - P.1029

はじめに
 近時文明の発展にともない,産業界においては各職域に広く機械化が普及し,かつて人力によつて行なわれた労働が機械器具の使用に取つて代わつた.山林労働においてもその例外ではなく,森林を伐採するのに広くChain sawが導入され,作業能率において多大な成果を挙げている.しかしその反面,これら機械器具の使用が人体に影響し障害をおよぼすことがある.山林労働者の場における,chain sawとそれにともなう四肢血管障害,いわゆる自ろう病がこれであり,近時問題化されている.
 1911年Lorigaが振動障害として,手指のRaynaud現象について報告して以来,幾多の学者によつて研究が行なわれているが,未だにその本体が解明されず,主要症状の1つである蒼白発作の発生機序については明らかでなく,したがつて治療法についてもあまり発表されていない.そこで著者等は白ろう病に関する研究1)(1974年3月)で発表したが引続き治療を中心に研究を行なつた.

境界領域

直腸肛門疾患と白血病について—3症例と全国30症例の検討から

著者: 守山稔 ,   竹馬浩

ページ範囲:P.1031 - P.1034

はじめに
 直腸肛門外科施設において比較的まれではあるが白血病が経験され実地臨床上の問題となつている1).このたび,われわれは肛門部の異常を初発症状として発見された急性白血病を3例経験したので報告し,併せて全国の主な肛門外科施設を対象に同様な症例につきアンケート調査して得られた結果を報告する.また,岡山大第2内科における最近の急性白血病75例の肛門部合併症について調査した結果と若干の考察を加えて報告する.

薬剤

脳神経外科領域における術前術後のHydrocortisone使用と副腎皮質機能抑制について

著者: 斉藤義一 ,   喜種善典 ,   高橋伸明 ,   高見政美

ページ範囲:P.1035 - P.1039

はじめに
 脳浮腫防止に副腎皮質ステロイドホルモン(以下ステロイド)の有効なことは衆知の事実で,投与薬剤も数種慣用されるが脳神経外科領域の使用は短期大量を特徴とし内科的使用と主旨を異にする.内科的投与が長期に渉り,投与方法,離脱に問題を蔵する一方,外科的投与はこの点は問題少ないが大量投与による二次的副腎不全に関しては必ずしも解明されていない.今回われわれは脳外科手術にHydrocortisone使用の機会を得たが本剤は近年外科的ショック時などにも大量投与が推賞され,この機会に本剤の脳浮腫防止作用と共に大量投与後の副腎皮質抑制作用につき検討することは有意義と思う.

臨床報告

巨大な肝嚢胞の1治験例

著者: 森本忠興 ,   宇山幸久 ,   岡田浩司 ,   吉田冲 ,   原田邦彦 ,   武市脩

ページ範囲:P.1041 - P.1044

はじめに
 肝嚢胞,とくに非寄生虫性嚢胞は従来比較的まれな疾患であるといわれながらも,最近その手術例の報告が増加してきた.これは肝スキャニング,血管造影,腹腔鏡などの検査法や麻酔をはじめとする外科治療手技の進歩により肝疾患の診断ならびに切除治療成績が向上したためと思われる.最近私どもも巨大な孤立性肝嚢胞を術前に診断し,肝右半側切除にて全治せしめた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

最近経験せる膵石症2例について

著者: 井ノ口健也 ,   野口孝 ,   黒田弘之 ,   細野英之 ,   川原田嘉文 ,   伊東敬之

ページ範囲:P.1045 - P.1047

はじめに
 膵石症は慢性再発性膵炎の晩期像と考えられ,欧米においてはかなり以前から注目されてきた.本邦においては稀な疾患と考えられていたが最近消化器検診の発達と共に報告例も年々増加の傾向にある.しかしその手術例はまだまだ少ない.われわれは術前に膵石症と診断,膵管空腸側々吻合術を行なつて良好な結果を得た2症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

空腸異所膵を伴う十二指腸嚢腫の1例

著者: 有本重也 ,   勝田仁康 ,   川嶋寛昭 ,   田伏俊作 ,   高山勇 ,   上山庸弘 ,   上山健弘 ,   西川正一 ,   内藤行雄 ,   永井清和 ,   石本英夫

ページ範囲:P.1049 - P.1056

はじめに
 十二指腸良性腫瘍,とくに球部以外の腫瘍はまれであるといわれてきたが最近その報告例は増加しつつある.これは球部より肛側十二指腸にも関心が払われるようになつたことはもちろんであるが,十二指腸内視鏡検査法の目ざましい進歩と普及,また膵疾患,胆道疾患診断法として発展した低緊張性十二指腸造影法等の診断面の進歩による所が大であると思われる.最近,私達はルーチン胃部レ線検査で発見し得た空腸迷入膵を伴う十二指腸嚢腫の1例を経験したので,本邦報告例と共に若干の文献的考察を加えて報告する.

術後右結腸憩室標本の粘膜下リンパ濾胞組織所見

著者: 村上博圀 ,   宗岡熙 ,   岡本勲 ,   草場威稜夫

ページ範囲:P.1057 - P.1060

はじめに
 結腸憩室炎の時に,局所の粘膜下リンパ濾胞の反応がいかなるものかについて興味をもつた.16例の結腸憩室の手術例を通して得られたリンパ濾胞所見を観察し,特に右結腸憩室においては,回腸終末部のリンパ濾胞組織との関連性の有無についての考察をした.大腸の外科臨床における結腸憩室の見方にあつては,そのアプローチの仕方に異論があり,治療の方針に統一がない.臨床症状だけから結論しても,説得力のないことをよく知つている1-3)憩室炎およびそれに伴うゆ着,また,術後ゆ着症例を通して,腸のリンパ濾胞の反応がどうなのかを,取得手術症例から検討し,今後の考え方の一助にした.

脳膿瘍20例の検討

著者: 吉本尚規 ,   梶川博 ,   井口孝彦 ,   鮄川哲二 ,   宮崎正毅 ,   島健 ,   日比野弘道 ,   石川進 ,   魚住徹 ,   児玉求 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.1061 - P.1066

はじめに
 脳膿瘍は,頭蓋内占拠性病変が疑われる症例では常に考慮されるべき疾患であるが,脳腫瘍に比して頻度も低く,必ずしも炎症所見を伴つていないこともあつて,脳腫瘍と診断される事が多く,一義的に脳膿瘍と診断される症例はむしろ少ない様に思われる.しかしながら脳膿瘍の治療方法および予後は脳腫瘍と本質的に異つており,今後とも術前診断率向上のための努力がなされねばならない.
 今回われわれは,広島大学第2外科教室(現在の主任,江崎治夫教授)で,1959年から1974年(11月)までの約15年間に扱つた20症例の臨床症状,検査所見,治療方法等を分析し検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.これら20症例のうち,はじめの6例については既に教室の中島ら1)によつて詳細な検討がなされているが,今回はこの6例も含めて対象とした.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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