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文献詳細

雑誌文献

臨床外科30巻9号

1975年09月発行

臨床研究

胃・十二指腸潰瘍に対する迷切合併手術の成績

著者: 松木久1 新田洋1 中村康夫1 李奎鉉1 野沢晃一1 奈良井省吾1 田近貞克1 高桑一喜1 武藤輝一1

所属機関: 1新潟大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1167 - P.1172

文献概要

はじめに
 Dragstedt(1943)により提唱された消化性潰瘍に対する迷走神経切断術(以下迷切術と略す)が,わが国においても一時追試されながら本格的にとり上げられる迄に至らなかつた背景には,当時,本術式に関するドレナージや減酸効果等について必ずしも十分な認識がなされず,それゆえ胃切除術に比して優れた術後成績を収め得なかつた事実を指摘できる5)6)15).しかしながら,その後第62回日本外科学会総会において,堺16),山岸20)両教授は,保存的術式としての幽門洞部切除+迷切術のわが国における成績を公表し,その優れた減酸効果と術後状態の早期回復性についてふれ,それまで広範囲胃切除術一辺倒ともいうべき状態であつたわが国の潰瘍外科領域において,迷切術が新たな脚光をあびるきつかけをなした.今日,わが国でも迷切を伴う手術はかなり普及し,一部遠隔成績をも含めて各方面より術後成績の検討がなされつつある現状であるが,その評価にあたつては,迷切の種類はもちろん,これに合併する小範囲胃切除ないし幽門成形の種類についても十分考慮する必要があり,一律に論ずるわけにはいかない.
 われわれの教室における迷切合併術式の採用は,現在2つの場合に大別できる.すなわち,胃角部以下の胃潰瘍ないし十二指腸潰瘍に対する迷切兼幽門洞部切除術もしくは迷切兼幽門成形術の採用と,高位胃潰瘍に対する分節胃体部切除ないし噴門側胃切除と迷切との合併術式の採用である.もちろん,これら手術法は時を同じくして一勢に開始されたものではなく,したがつて現在すべての術式について遠隔成績を論じ得るわけではないが,われわれの潰瘍手術において,迷切合併術式の施行例数は着実に増加しており,教室における選択的手術の歴史と迷切術とは,切つても切れない関係にある7)9).以下これらの術後成績を分析検討し,われわれが迷切術に期待したものとその効果との関連,また,どういう時に迷切術を応用すれば広範囲胃切除術に勝る成績が得られるかなど,胃迷切術の意義について考えてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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