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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科31巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

特集 遠隔成績よりみた早期胃癌

遠隔成績からみた早期胃癌の特性

著者: 村上忠重

ページ範囲:P.13 - P.13

 胃癌の細胞が胃の粘膜に発生してから何年経つたら人を殺すのかという問が,これまでしばしば発せられたが,ここでは漸くその問が,何年間早期胃癌の域に止まるかという所まで縮まつてきた.もし早期胃癌の期間が10年以上であつたら,早期胃癌の手術後に5年生存率をとつても無意味である.ほうつておいても5年以上生きられたはずの患者に手術をして5年生き延びさせたといえば,苦笑を誘うに過ぎないであろう.したがつて早期胃癌に関する限り,役に立つ生存率は少なくとも10年生存率でなければならないと以前から言われていた.しかしそうは言うものの,早期胃癌の概念が日本全国にひろがつてまだ10年そこそこの時点でそれを言つても始まらない.そこで私どもは止むを得ず,進行癌と同様の5生率を算出することで我慢してきた.そして早期胃癌の5生率は滅法よい.それから曲線を延長すると10生率といえども多分よいはずという気安めの議論を行なつてきた.
 やつと10生率がそろそろ表面に出せる時期が来たようである.大阪成人病センターの10生率は73%を示している.勿論その値は進行癌のそれより遙かによい.しかし75%を割る数字には些か不満である(ただし相対生存率ではないことに注意).

早期胃癌における癌深達度と遠隔成績

著者: 榊原宣 ,   矢端正克 ,   大村秀俊 ,   松田滋明 ,   寺田昌功 ,   横堀直孝

ページ範囲:P.15 - P.18

はじめに
 胃癌の早期発見のためのX線診断,内視鏡診断,さらに胃生検診断の進歩によつて,数多くの早期胃癌症例が発見され,手術の対象となつてきた.このような状態になると,早期胃癌における転移,あるいは切除範囲や廓清など治療に関与する問題に関心が向けられるようになつた.しかし,これら関心の向けられた問題がすべて解明されているわけではない.早期胃癌手術症例の遠隔成績から,村上1)らものべているように,これら問題について答えなければならない時期に来ているように思われる.この機会にこれら問題のいくつかについて,われわれの経験と考え方をのべておきたい.

早期胃癌におけるリンパ節転移と遠隔成績

著者: 高木国夫 ,   中田一也

ページ範囲:P.19 - P.27

はじめに
 胃癌の治療成績は年々向上を示し,術後5年生存率も50%をこえるに至つているが,その主たる原因は早期胃癌の増加によるもので,進行癌は5年生存率が50%をこえていない現状である.癌が胃粘膜層及び粘膜下層に止まる早期癌では,その5年生存率は90%前後であつて,きわめて良好な成績を示しているが,術後5年以内になお10%前後の死亡例をみとめている.この予後良好な早期胃癌の中で,死亡した10%については,それらの死因は大きく大別すると術後の直接死亡例,再発及び他病死に分けられる.とくに予後良好な早期胃癌において,再発によるものが諸家の報告によると表1の如く死亡例の25.5〜53%をしめて,再発の因子としては,P (腹膜播種),H (肝転移),N及びn (リンパ節転移)である.この中で外科治療の上ではリンパ節転移に対する徹底的廓清が可能であり,また,早期胃癌といえどもリンパ節転移とみとめるものが稀ではないこと,また,早期胃癌の再発例にはリンパ節転移をみとめるものが多いことより,早期胃癌の遠隔成績に及ぼす因子として重要であり,われわれの経験した早期胃癌を中心にリンパ節転移と遠隔成績について報告したい.

早期胃癌における術後再発型式とその問題点

著者: 岩永剛 ,   古河洋 ,   神前五郎

ページ範囲:P.29 - P.35

I.早期胃癌と進行胃癌の術後生存曲線並びに死亡原因
 胃癌も,癌がまだ胃粘膜固有層(m)あるいは粘膜下層(sm)にとどまつているような早期胃癌の間に手術をすれば,術後の遠隔成績も良好である.実際にわれわれの施設で1973年末までに手術を行なつた早期胃癌510例の術後10年累積生存率は図1の如く72.6%で,他の胃癌症例にくらべて格段の差をもつて高い生存率が得られた.しかし,この図をもう少しくわしく観察すれば,他の進行癌は術後2〜3年までは生存曲線が急激に下降するが,その後は徐々に下降するのに比べて,早期胃癌症例は術後5年経つてもなお生存曲線が下降し続けている.それでは,胃癌の進行程度によつて術後死亡原因に差があるのであろうか.図2にこれをみると,比較的早期の胃癌であるstage I,IIの症例は他病死が多いのに対して,進行胃癌であるstage III,IVでは癌再発が高率となる.また,早期胃癌症例のうち術後死亡した59例の死因別の頻度とその死亡時期を表1に示した.全死亡のうち,胃癌再発と残胃初発癌の両者を含めた16例(27%)が最も多く,次いで脳・心・血管障害13例(22%),他臓器癌11例(19%),肝疾患8例(14%)が多かつた.これら死因別に死亡時期をみると,各死因とも術後7年まではどの時期においてもほぼ同数の死亡例があつた.すなわち,早期胃癌症例では術後5年経過してもその生存率が下降し続けるのは,他病死が多いことと共に,5年経過しても癌再発が起こつてくるためと思われる.

早期胃癌の重複癌よりみた遠隔成績

著者: 安井昭 ,   村上忠重

ページ範囲:P.37 - P.44

はじめに
 人の胃癌の発生に関するメカニズムは未だほとんど明らかにされていないといつてよい.私ども1)は犬にENNG (N-ethyl-N'-nitro-N-nitroso-guanidine)なる発癌物質を与えて犬に胃癌をつくることや,その癌組織を他の動物(nude mouse)の大腿筋肉内に移植することには成功しているものの,そのメカニズムについてはまだ解明されていない.
 近年煙草や六価クロムなどによる肺癌が増加していると新聞紙上を賑わしている公害の問題,大気中の化学物質(鉄,亜鉛,マグネシウム,スズ,銅などの金属類)や,はき出される噴煙や,放射能を有する塵埃などがその原因ではないかと論ぜられているが,これらのことがらについては未だ化学的あるいは医学的な裏付けはなされていない.

早期胃癌における切除線と遠隔成績

著者: 岸本宏之 ,   藤井卓 ,   安達秀雄 ,   古賀成昌

ページ範囲:P.45 - P.51

はじめに
 胃癌の術後成績は近年著しく向上しており,なかでも早期胃癌例の予後は良好であるが,少数例とはいえ,早期胃癌例にも再発死亡例もみられ,また一方においては非治癒切除例もみられる3,5,9)
 早期胃癌例が次第に増加し,ようやく長期観察が可能となつてきた現在,再発に関与する因子を検索し,対策を講じるとともに,当然のことではあるが,非治癒切除例,とくに口側断端癌巣遺残の危険性に関して,その実態を認識することによつて適切な切除線を決定し,このような症例をなくする努力がなされなければならない.

カラーグラフ 消化器内視鏡シリーズ・6

小児内視鏡

著者: 石田治雄 ,   守屋荒夫 ,   難波貞夫 ,   井上迪彦

ページ範囲:P.10 - P.11

 最近乳幼児を対象とした小児用内視鏡の開発が進められ,食道,胃,大腸用などが市販されるようになつた.小児内視鏡検査の特徴の一つは麻酔であるといえる.小児は検査に非協力的であり,送気による腹満や食道内に挿入した内視鏡による気道圧迫などで容易に呼吸障害を起こし,また胃内容の逆流を誤飲する危険性もあるので,気管内挿管による全身麻酔を原則としている.

外科医のための生理学

膵臓の生理

著者: 上垣恵二

ページ範囲:P.53 - P.56

□はじめに□
 衆知のように,膵臓は体中で最も大きい内・外分泌器官であるが,その生理についてはあまり多くが知られていない.とくに私どもはこれに手術侵襲を加える外科医の立場にあるから,膵臓の生理を熟知していることは,術前の検査所見の評価にも役立つし,きめの細かい合目的的な手術を行なうことにも役立ち,結局は,手術成績をよくすることに通じる筈である.ところが,現実は,術後の病態生理もふくめて,深い研究が行なわれておらず,今なお,多くが不明のままになつている.このような事情から,判明している限りにおいて膵臓の基本的な生理を,もう一度,ふりかえつてみることの意義は大きいと思われる.

Spot 生体材料の展望・1

生体管状組織の人工物化の1つの試み(その1)

著者: 秋山太一郎

ページ範囲:P.58 - P.59

 生体の管状構造物を扱うことは化学工場の配管と共通的なものがある.自動制御弁,逆流止めなどの仕組みで,その仕組みは相互連動して,いわゆる自動制御機構ができている.生体をバイオメカニズムの立場からみればクローズドシステムの中で生命維持のために,功妙な仕組みが見事な制御機構として成り立つているが,生体の管状物の人工物化にあたつては生体固有のいわゆるバイオメカニズムの感覚とを併用してはどんなものかというのが私の提案である.人工蔵器は本来インターディスプリナリーだから当然であるが.今日生体の管状組織(血管,食道,胆管,尿道)の人工物化の試みは,大きな動脈系の人工物化以外は実用の城に達しているものはまずない.その原因を大つかみに要約すると,
 ① 管状物の材質の選択の誤り
 ② 管状物の構造上の誤り
 ③ 機能再現法に対する見解の不備,不徹底などが主なものとしてあげられるであろう.したがつて生体固有の構造や機能を,どの点と,どの部分をどこまでゆずつて(許容,妥協して)再現するべきか.それがためにはどんな材質で,どう構造づけるかで人工物の設計の基準がおのずと設定されるはずである.これはもちろん,設計者の考えが土台になつたわけであるが,ここにこれらの基本的な問題をごく単純化して項目別にあげてみると図1のようになる.この稿では1〜3までの項目について述べる.

対談

ハリ麻酔—その背景と展望

著者: 許瑞光 ,   神山守人

ページ範囲:P.61 - P.72

 本誌 ハリ麻酔は,現在,一時の爆発的なブームの後,「東洋医学の神秘」といつた,いわばジャーナリスティックな側面を離れて,昨春の医学会総会シンポジウムにみられるように,まじめな研究課題あるいは臨床技術として,その位置を占め,広く認められるようになつたと思われます.
 今回教育講座として連載を開始するにあたり,その導入部的な意味で,ご執筆をお願いした両先生に,ハリ麻酔に関する先生方ご自身の基本的な考え方や姿勢から,将来の夢といつたものまで,いわば"ハリ麻酔余話"といつた形で,ざつくばらんにお話しいただきたいと思います.最初に,先生方のハリ麻酔との出会いについてうかがつてゆきましようか.許先生からどうぞ.

臨床研究

切除胃からみた重複胃癌の検討

著者: 安井昭 ,   三宅政房 ,   吉田光宏 ,   石橋千昭 ,   大沼肇 ,   世良田進三郎 ,   城所仂 ,   平瀬吉成 ,   一瀬裕 ,   田崎博之 ,   村上忠重

ページ範囲:P.73 - P.80

はじめに
 進行した胃癌は通常原発巣を中心に腫瘍を形成する性質をもつているが,多発癌は多発性に発生した癌巣が1つの癌腫として確立されるまでに,たまたまとらえられたものなのか,あるいは主病巣となる癌腫の壁内転移によるものなのか,または同時性あるいは異時性に全く別個に2つ以上の癌腫が形成されたものであるものなのか,その分析は容易ではない.
 私どもはMoertel2)らのcriteriaに基づき,「胃切除標本にて同一胃内に肉眼的,組織学的に連続していない2つ以上の胃癌があり,同一病変と考えられないもので,かつ一方の癌が他方の癌の転移(壁内転移など)でないと判断できるもの」を多発癌とした.また主病巣はより深達度の進んだものを,あるいは同一深達度の場合は面積のより大きい病巣を主病巣とした.なお本論文では多発癌は重複癌と同義語であると解釈し,以下重複癌と呼ぶことにする.

腹部刺創—とくにその開腹適応について

著者: 安藤暢敏 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.81 - P.86

はじめに
 欧米と異なり,本邦の穿通性腹部外傷はそのほとんどが刺創である.しかし,本邦においては腹部刺創例の集計とその取扱いに関する報告はほとんど見当らない.
 腹部刺創は,腹膜に達しない軽微な損傷から,重篤な腹腔臓器損傷を来たすものまで,その程度は種々である.しかし一般には,腹部刺創すなわち腹腔内損傷と即断されやすく,そのため鈍的腹部外傷の場合に比し,無用の開腹が行なわれる機会が多いのが現状であろう.そこでわれわれは最近7年半に扱つた腹部刺創50例の内容を分析検討し,とくに腹部刺創の開腹適応に関して考察を行なつてみたい.

血液透析患者に対するisovolumicな腹水・胸水血液内注入法

著者: 阿岸鉄三 ,   吉田智 ,   山形桂仁 ,   太田隆志 ,   岡沢孜 ,   小林政美 ,   太田和夫

ページ範囲:P.87 - P.90

はじめに
 透析器材の整備,透析技術の向上,そしてなによりも慢性透析患者の病態生理についての認識が深まり,患者管理が充実してきたことにより,慢性透析患者の年間死亡率は10%以下となつてきている1).これをさらに低下させるには合併症を予知し,ひとたび発生したら素早く対処することが必要である.
 慢性透析中の合併症としての漿液貯溜(腹水,胸水,必嚢内液など)は,多くの場合患者の水分摂取と定期透析時の除水との間の不均衡で起こるが,これの均衡が一応は得られている場合でも,患者体液の体内各com-partmentへの分配異常として発現することもある.すなわち,患者の皮膚は十分脱水され乾燥しているのに,腹水,胸水などが貯つている状態である.また漿液貯溜は低蛋白血症と同時に生じてくることが多い.

臨床報告

食道壁内嚢腫の1治験例

著者: 木村孝哉 ,   森昌造 ,   渡辺登志男 ,   渋谷一誠 ,   本間正敏 ,   酒井信光 ,   葛西森夫 ,   知念功雄 ,   浅木茂

ページ範囲:P.91 - P.94

はじめに
 食道に発生した腫瘤は通常縦隔腫瘤に含めないのであるが,食道腫瘤はしばしば縦隔の先天性嚢腫として報告されている.1964年葛西1)らの原発性縦隔腫瘍の本邦集計によると,先天性嚢腫48例で約5%を占めるにすぎず,うち気管支性嚢腫32例,食道性嚢腫3例,その他の消化管性嚢腫2例,心嚢性嚢腫4例,非特異性,その他の嚢腫7例であり,菅野2)による1964年時気管支性嚢腫の本邦報告例は47例である.最近縦隔嚢腫の報告は非常に増加してきており,正岡3)らの縦隔外科全国集計では,先天性嚢腫332例で8.1%を占め,うち気管支性嚢腫184例,心嚢性嚢腫63例,消化管性嚢腫29例,髄膜嚢腫6例,胸膜嚢腫2例,胸管嚢腫2例,鰓弓性嚢腫2例,上皮性嚢腫1例,血液嚢腫1例とその大部分は気管支性嚢腫であり,食道性嚢腫は18例である4-20).さらに食道壁内嚢腫は非常にまれであり,今までの報告では7例を数えるのみである.最近われわれは食道壁内嚢腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

食道静脈瘤に対する直達手術の経験

著者: 武岡有旭 ,   高木繁男 ,   武田仁良 ,   猪口嚞三

ページ範囲:P.95 - P.98

はじめに
 日常遭遇する上部消化管出血の大半は胃十二指腸潰瘍からの出血である1-3).一方,食道静脈瘤破裂による出血もその重篤さからして決して見のがせない.門脈圧亢進症に伴う食道静脈瘤からの致命的な大出血は,その止血の困難性と高い死亡率を示す点で外科的に重要である.食道静脈瘤に対する外科的治療としては門脈減圧の目的で行なわれるシャント手術の他,静脈瘤への直達手術等が挙げられよう.教室で経験した食道静脈瘤の直達手術症例を中心にその手術適応の面から2,3の検討を加えてみた.

転移性食道癌の1例

著者: 戸山忠良 ,   坂口潮 ,   赤星徳行 ,   村上千之 ,   横山育三

ページ範囲:P.99 - P.101

はじめに
 転移性食道癌はきわめてまれである.われわれは剖検により,子宮腟部癌切除術後10年を経過して食道狭窄症状をきたした転移性食道癌の1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

十二指腸のブルンネル腺腫の1例

著者: 徳永蔵 ,   谷村晃 ,   中島輝之 ,   竜嘉昭

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 十二指腸に発生する良性腫瘍は,比較的まれな疾患と考えられているが,中村1)らの集計によると欧米では十二指腸の上皮性良性腫瘍281例中,通常の腸腺由来の腺腫が113例ともつとも多く,Brunner腺腫が45例とこれについでいる.一方,本邦では,以前にわれわれが検討した集計によれば2),十二指腸の上皮性良性腫瘍99例中Brunner腺腫が35例ともつとも多かつた.しかし近年,胃腸透視の進歩と十二指腸ファイバースコープの普及により診断能も向上し,最近5年間では,上皮性・非上皮性計60例以上の報告がみられる.今回われわれは,44歳男子の十二指腸第1部に発生したBrunner腺腫の1例について追加報告し,その発生に関して興味ある所見を得たので考察を試みる.

回腸細網肉腫の1例—本邦腸肉腫の統計的観察

著者: 金児千秋 ,   久瀬弘 ,   浜崎聰一郎

ページ範囲:P.107 - P.109

はじめに
 腸管に発生する肉腫は比較的まれであるが,最近われわれは回腸終末部に原発し,腸間膜リンパ節転移を伴った細網肉腫の1例を経験したので報告し若干の考察を加える.

Intralobar pulmonary sequestrationの1治験例

著者: 熊崎俊英 ,   岩井昭彦 ,   佐藤史朗 ,   土井孝司 ,   吉川龍雄 ,   判治康彦 ,   永田真敏

ページ範囲:P.111 - P.114

はじめに
 Pulmonary sequestrationは正常な気管支系から分離された気管支,肺の腫瘤またはのう腫で,直接大動脈からの異常動脈により栄養されているものである.本症と思われるものの最初の例は1777年Huber1)により剖検例の報告がなされており,その後も剖検例の報告はあるが統一した名称がなく,1947年Pryce2)が上記のごとく定義名命して以来広くこの名称が用いられてきている.
 われわれは,感染により発症し,巨大のう胞を形成,手術時本症と診断した1例を経験したので報告する.

頭蓋内静脈洞閉塞症の1例

著者: 岩井健次 ,   一の宮知典 ,   正島隆夫 ,   宮崎由自

ページ範囲:P.115 - P.120

はじめに
 頭蓋内静脈洞閉塞症は,すでに古くから知られてきた疾患ではあるが,従来はそのほとんどの症例は剖検によつて確かめられたものである.しかし最近脳血管撮影法の発達普及により臨床的に確定診断がつけられるようになり,次第にその臨床報告例も増加しつつある.私共は,最近痙攣重積状態を呈し脳血管写にて広範な脳静脈洞閉塞症と診断し,剖検によりこれを確認し得た症例を経験したので,本疾患に少しく考察を加え報告する.

多発性末梢動脈瘤を合併したEhlers-Danlos Syndromeの1例

著者: 尾崎弘記 ,   宮内好正 ,   斉藤滉 ,   鈴木一郎 ,   磯村勝美 ,   永岡喜久夫 ,   足立郁夫 ,   安野憲一 ,   武藤高明 ,   石神博昭 ,   伊藤健次郎

ページ範囲:P.121 - P.123

はじめに
 Ehlers-Danlos Syndromeは全身結合織の遺伝性疾患であるとされ,皮膚の過弾力性,皮膚血管の脆弱性,関節の過可動性を3主徴としている比較的まれな疾患である.Barabasは,本症候群をその臨床症状から後述するように,classical type, varicose or mild type, arterialtypeの3型に分類しているが1),われわれは最近多発性末梢動脈瘤と動静脈瘻の発生をみた極めてまれな,arte-rial typeと思われる本症候群を経験したので報告する.

エフェドリン中毒患者にみられた上腕動脈瘤の治験例

著者: 岩井武尚 ,   紺野進 ,   近藤宣雄 ,   奥森雅直 ,   江渕正和

ページ範囲:P.125 - P.128

はじめに
 麻薬を含めて薬剤中毒症は,社会的な施策および精神医学的な治療が優先することはいうまでもない.しかしながら,それらの耽溺患者がたどる道には,内科的または外科的治療を必要とする合併症を生じることは少なくない.今回,外科的治療を必要とする長期動脈注射による動脈瘤を経験したので,その臨床所見,治療の問題点を報告するとともに,文献的考察を加えてみた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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