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文献詳細

雑誌文献

臨床外科31巻10号

1976年10月発行

文献概要

特集 肝切除の術式

拡大肝右葉切除術

著者: 岡本英三1

所属機関: 1兵庫医科大学外科

ページ範囲:P.1291 - P.1296

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はじめに
 肝切除の歴史は決して新しくないが,手技上ならびに,術後管理上の多くの困難性のために,永らく姑息的手術にとどまつてきた.肝広範切除が可能となつたのは事実上ようやく今世紀中頃からであり,肝内の脈管構造の解明による肝区域liver segmentの概念確立に負うところが大きい.今日ではこの肝区域に準拠し,肝門部において,切除側のグリソン系脈管を先行処理するいわゆる系統的広範肝切除(systematic lobectomyあるいはcontrol method)が標準的術式に定着した.一見,肝区域を無視しているかに見えるfingerfracture法(Lin)1)も,肝内の脈管分布を熟知していればこそなしうるものである.
 解剖学的には,鎌状靱帯の肝付着部を境に左右葉に分けられているが,肝内脈管の構築から見ると,真の肝左葉右葉は胆嚢床と肝背面の下大静脈中央を結ぶ線上にある(Cantlie氏線)2).さらに,右葉は前後2区域に,左葉は内,外2区域に分かたれる.つまり,肝臓は脈管構築上4つの独立した区域(segment)から成り,これが肝切除に際して基本的単位(surgical unit)となる訳である3,4,5)(図1).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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