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文献詳細

雑誌文献

臨床外科31巻10号

1976年10月発行

文献概要

特集 肝切除の術式

一般的な肝切除手技の基本問題

著者: 長谷川博1 三輪潔1

所属機関: 1国立がんセンター外科

ページ範囲:P.1305 - P.1314

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はじめに
 肝癌という疾患に対し,また肝切除という手術手技に関し,多くの外科医はどちらかといえば消極的,悲観的あるいは臆病である.つまり肝癌は,外科的にも,制癌剤的にも,放射線的にも極めて手強い病気であり,幸運にも手術の適用があるとしても,身ぶるいするような勇気と決断を要する病気であるといえよう.このような印象がなぜ普及しているかといえば,1つには成人例には肝硬変合併例が多く,それだけでもメスを加えること自体に問題があるからであろう.また,もう1つには肝が血管の塊のような軟かくて脆い臓器であるという印象が,普及しているからであろう.
 しかし,今やこのような印象は徐々に拭い去られるべき時代に入つたといえよう.つまり,これらの印象をくつがえすような技術と事実が着々集積しつつあるからである.それは,すなわち,1つには血管撮影技術が進歩し,術前に肝動脈はおろか,門脈も,さらには下大静脈を含めた肝静脈枝全部がpanhepatic venographyにより個々の症例で立体的に把握できるようになつた.つまり数年前までは細かい地図のなかつた魔の山に,詳細な地図,さらには航空写真的な立体地図ができた.したがつて,思いがけない崖崩れが現場で起こらない限り山登りは安全になつたからである.2つには,われわれを勇気づけるような小児肝癌における手術成績の良さが蓄積してきたことである.すなわち,耐術者の40%は永続治癒している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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