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文献詳細

雑誌文献

臨床外科31巻10号

1976年10月発行

文献概要

臨床報告

慢性腎不全(血液透析患者)における腹部大動脈瘤切除手術例

著者: 富野哲夫1 竹内正気2 中江世明2 入江昭2 伊藤昌平2 丁栄市3 橋本明政3

所属機関: 1東京女子医大・日本心臓血圧研究所外科 2西新井病院腎センター 3西新井病院循環器センター

ページ範囲:P.1363 - P.1366

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はじめに
 心臓血管外科の手術手技の進歩に伴い,大動脈瘤の手術は広く行なわれるようになつてきた.その中でも腹部大動脈瘤の外科治療は合併症のない場合には手術危険度はかなり低いが,大動脈瘤が腎動脈に及ぶものでは手術手技も複雑となり,手術危険率はさらに高くなつて外科手術の適応外とされることもあるようである.さらに,慢性腎不全におちいり,すでに人工透析を受けているような患者に対し,腹部大動脈瘤切除術を行なうことは,手術前後の患者の管理,出血傾向に対する対策等が問題となり,手術は困難なものとされている.
 一方,人工腎臓による透析管理の医学が進み,この恩恵に浴する慢性腎不全の患者が増加するにしたがい,腎不全患者に対する外科手術法や,手術前後の管理法に関しての検討が必要になつている.術前,術中,術後にわたる細心綿密な治療計画と管理を行なうことにより,腹部大動脈瘤切除あるいは一般に心臓,大血管外科手術も可能となりつつあると考えている.最近われわれは慢性腎不全で,腹部大動脈瘤を合併した患者に,手術中および術後の管理を目的として,人工透析を開始し,しかる後に腹部大動脈瘤切除人工血管置換手術を行ない良好な結果を得た.症例の報告とともに,腎不全患者における手術前後の透析管理法について述べ,これに関して若干の考察を加えたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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