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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科31巻12号

1976年12月発行

雑誌目次

特集 胆道手術後の困難症

感染症—とくに急性胆管炎を中心として

著者: 松代隆 ,   高橋渉 ,   植松郁之進 ,   木村晴茂 ,   高沢欣熙

ページ範囲:P.1533 - P.1540

はじめに
 良性胆道疾患例ではその既往歴が単に疝痛発作にとどまらず,発熱や黄疸を訴える症例が少なからずみられる.このことは,これらの症例の多くは胆汁うっ滞,上行感染をくり返しており,やがては重症な胆管炎,あるいは二次的な肝障害に移行する可能性があることを示唆している.急性化膿性胆管炎は急性胆管炎の重症型と考えられるが,その予後は悪く,手術死亡率は75〜88%の報告もみられる1,2).保存的療法で救命できたとの報告はない.したがつて,このような症例にはできるだけ早く適切なる胆道ドレナージを行なうことが,唯一の救命手段と考えられる.ここでは教室で経験した急性胆管炎をすでに急性化膿性胆管炎に進展していた群と進展していなかつた狭義の急性胆管炎群に分け,その臨床像を比較検討し,両者の鑑別診断および治療方針について考察を加えてみた.また,とくに胆道系の手術既往のあるものについては,その原因について検討した.

胆管狭窄

著者: 中山和道 ,   村石信男

ページ範囲:P.1541 - P.1548

はじめに
 胆道手術後の困難症,あるいは胆摘術後症候群といわれるもののうち,患者はもとより外科医にとつて最も厄介なのは,術後の胆管狭窄である.その原因の大部分は比較的簡単な胆嚢適出術に由来するものであり,これらは術前,術中胆道造影による十分な病態および解剖的形態の把握,慎重なる手術手技により十分に防ぎうるものである.
 しかし一旦,胆管狭窄が発生した場合には,その外科的治療は容易ではなく,直接死亡率もかなり高い.また早期に適切な処置が行なわれないと,黄疸の長期持続による肝障害,胆道感染,さらに胆汁性肝硬変症や二次的門脈圧亢進症などを併発し,良性疾患を母体として発生しながら悲惨な経過をとる例がみられる.

遺残結石

著者: 羽生富士夫 ,   高田忠敬 ,   中村光司 ,   内田泰彦 ,   福島靖彦 ,   鈴木重弘 ,   今泉俊秀 ,   竹村由美子

ページ範囲:P.1549 - P.1559

はじめに
 近年,術前ならびに術中胆道精査法の進歩に伴い胆石症の発見率は著しく向上したとは言え,遺残結石は現在でも5%前後に存在すると言われ1,2),胆道外科における大きな問題点の1つである.すなわち,現在用いられている胆道精査法にも各自にそれぞれ限界があり,また緊急手術や術中の全身状態の変化などで精査不十分ということもあいまつて,遺残結石症を根絶しえない現状である.
 通常,これらの遺残結石は,術後のTチューブからの胆道造影で発見されることが多いが,症例によつてはそれらも行なわれず,または,無視放置され胆摘後愁訴例としての経過中に発見されるものも少なくない3,4)

胆道ジスキネジー

著者: 秋田八年 ,   谷川尚

ページ範囲:P.1561 - P.1568

はじめに
 かつて胆道ジスキネジーはColp1)の報告に代表されるようにいわゆる胆道手術後困難症の代表的なものと考えられていた時代があつたが,現在では診断法の進歩とともにいわゆる胆道手術後困難症に対する積極的再手術による原因解明の結果,遺残または再発結石,胆道狭窄,狭窄性乳頭炎,遺残胆嚢管,癒着障害あるいは随伴性膵障害等の器質的病変が頻度の上では主因をなすことが明らかとなつた2,3).教室の検討では殊に胆石手術例の5〜10%を占めるいわゆる軽度困難症についてはその約半数に随伴性膵障害が関与することを明らかにし4,5),純粋な意味での胆嚢摘除後ジスキネジーは稀であろうと主張してきた6)
 そもそも胆道ジスキネジーとは何らかの理由で胆道系の自律神経性調節あるいは消化管ホルモンによる調節機構に破綻を生じた結果,臨床症状として胆道痛や悪心,下痢などの消化器症状を伴うに至つたものと定義される.したがつて本来の胆道ジスキネジーは,結石,炎症はもちろん,胆道系の奇形や癒着,瘢痕などの器質的変化は伴わないものと解釈される7,8).しかし純粋に機能異常のみでこのような症状が発生しうるのか,通常の診療法では把握し難い微細な器質的病変が存在するのではないかといつた疑問が残る.

黄疸を伴つた胆道系疾患手術後の急性腎不全—とくに急性閉塞性化膿性胆管炎における肝腎症候群の発来について

著者: 三樹勝 ,   金徳栄 ,   山川秀 ,   山口健次 ,   滝沢隆雄 ,   遠井敬三 ,   山本保博 ,   山下精彦 ,   関谷宗則 ,   森山雄吉 ,   恩田昌彦 ,   吉岡正智 ,   代田明郎

ページ範囲:P.1569 - P.1580

はじめに
 私どもは外科医としての立場からいわゆる肝腎症候群というものを,一応"各種の原因による閉塞性黄疽の経過中に乏尿,尿成分の異常,高窒素血症などを認め,腎不全症状を伴つたもの"と定義づけて,その病態について研究してきた1-4).その成績から外科領域における肝腎症候群の発来は(1)肝黄疸の程度や,また急性黄色肝萎縮にみられるような肝障害の程度とは必ずしも平行しない,(2)なんらかの手術侵襲や,重篤な合併症ないし継発症がある場合に発現しやすい,(3)この際,腎には主としてlower nephron nephrosis型変化と胆汁色素性障害の加味された型が認められる,という見解を報告してきた.良性であれ,悪性であれ,閉塞性黄疸を伴つた胆道系疾患の手術後に突如としてみられる乏尿ないし無尿は外科医として誰しもが遭遇する最も難治性の合併症のひとつであるが,胆道感染を伴つている症例に出現しやすいことは多くの人によつて認められている5).とくに近年胆道の最も重篤な感染症として,Charcot6)がすでに1877年に記載報告した急性閉塞性化膿性胆管炎acute obstructive supurativecholangitisの存在が,大浜7),菅原8)らの報告を契機としてわが国でも関心をもたれるようになつたが,本症における肝腎症候群の発来が極めて高頻度なことから,本症を中心に胆道感染と腎病変との関連性についての成績を述べ,肝腎症候群の発来に関するその後のわれわれの考えを述べてみたい.

術後黄疸

著者: 菅原克彦 ,   河野信博 ,   三谷進 ,   桜井秀憲 ,   岩月淳 ,   長尾桓

ページ範囲:P.1581 - P.1587

はじめに
 手術後に発症し,また増強する黄疸は外科医をして驚かしめる不慮の合併症である.肝・胆道・膵疾患以外の一般外科手術後に,しかも術前に臨床的に肝障害が存在しないにもかかわらず発症することがある.この原因としては,術前に発見し得なかつた胆石や胆道腫瘍,輸血,肝に有害な薬物の使用,感染などが推定される.もちろん黄疸は肝・胆道・膵の器質的疾患や先天的形態異常に対する手術後にもみられ,この際は肝障害の増悪として理解されるほか,発黄の原因となる因子は前者と同様に考慮される.その他いずれの領域の手術後にも,推定し得る通例の発黄因子以外の原因で発症する黄疸があり,時に中等度以上の高ビリルビン血症をきたすことがある.
 このような術後黄疸に対する治療方針をたてるにあたり,診断は必ずしも確定的とはならないので,なお多少の不安を残すこととなる.術後黄疸の大部分は軽度および中等度の一過性の黄疸であることが多いが,なかには肝不全にいたるものや,緊急手術の対象となる合併症が原因となることがある.

胆道手術後の困難症の予防と治療—とくに内視鏡的アプローチの臨床的意義

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.1589 - P.1597

はじめに
 胆道良性疾患の術後困難症の中には,肝内結石症のようになお治療法の難立をみないものから,さらには手術時の注意により避け得た胆道損傷の問題にいたるまで,その領域は極めて広範である.しかし一方どんなに細心の注意をしたとしても,これらを完全に無くすることは不可能であり,結局は如何にこの様な問題を少なくするかと言うことに議論は終着するものと考えられる.本論文は,胆道ファイバースコープを用いた内視鏡的アプローチが,胆道手術後困難症の内,再手術症例として最も頻繁に遭遇する遺残結石症や肝内結石症に対して予防,診断さらには治療上如何に有用であるかを,経験した症例をもとに言及するものである.

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・17

胃隆起性病変—その1

著者: 高木国夫

ページ範囲:P.1530 - P.1531

 胃内に隆起した病変には,種々の病変があつて,現在では,良性悪性を含めて隆起性病変(polypoid lesion)と総称しているが,この隆起性病変には,良性では,腺腫性ポリープ,粘膜下腫瘍,悪性では,Borrmann I型の進行癌,I,IIaの早期癌,平滑筋肉腫等,さらに良悪性の境界病変異型上皮がある,これら種々の病変の診断にあたつて,内視鏡の役割が大きく,良悪性の鑑別もなかなか容易でないことがある.
 これら胃内隆起性病変を形態の上から分類して診断の上に役立させるために,①のごとぎ分類がなされた(山田の分類).隆起と周囲粘膜との境界を重視して,境界の不明瞭なものから,くびれのあるもの,有茎性のものである.この分類と病変の大きさとの関連から,II-III型のもので,直径1cm内外では,良性腺腫性ポリープ,直径2cm以上では,癌がみられ,境界不明瞭なI型には,粘膜下腫瘍が多く.また有茎性のものでは,2cm以上になると癌が多いことが示された.

学会ニュース

第35回日本癌学会総会・第17回日本肺癌学会総会開催さる—関心あつめた2つのシンポジウム/第38回日本臨床外科医学会総会開催さる—注目あつめた"大腸癌"に関する3つのシンポジウム

ページ範囲:P.1568 - P.1568

「がんの細胞分化-Epigenetic調節異常としてのがん-」「発癌性と特然変異誘起性との相関,その理論と実際」(癌学会)
 "癌"の解明をめぐつて基礎と臨床から多角的なアプローチを試みる日本癌学会と日本肺癌学会の,それぞれ35回総会,17回総会が,さきごろ期を一にして東京で開かれた.癌学会は会員5000余を数えるマンモス学会だけに3日間の会期中800余の演題を消化したハードスケジュールであつたが,今総会の白眉は,対峙する2つの論,すなわち癌発生に関する2つのシンポジウムに尽きるだろう.「がんの細分化—Epigeneticと調節異常としての癌」では,発癌現象を細胞分化という見地から有意な考察を加えられたのを始め,「発癌性と特然変異誘起性との相関,その理論と実際」では,新しい発癌物質のスクリーニング法として脚光を浴びている発癌物質の突然変異誘起性を用いて検索する方法について,理論からtechniqueに至るまで多彩な内容をもつて聴衆に開陳された.

クリニカル・カンファレンス

胆道手術後の困難症をどうするか

著者: 穴沢雄作 ,   古沢悌二 ,   鈴木範美 ,   山川達郎 ,   牧野永城

ページ範囲:P.1598 - P.1614

遺残結石の予防はどうするか
 牧野(司会) 今日は,胆道の術後障害という題でございますが,胆道術後と申しましても,胆石に対する胆道手術に伴つて起こる術後障害に限つて話を絞つていきたいと思います.
 その中でも日常一番遭遇しやすいものを選びまして,1つは遺残結石,もう1つは胆道狭窄,その大部分は手術的な損傷によつて起こるんでしようけれども,そういうところに焦点を絞つて話をしたいと思います.

外科教育を考える・2

外科卒後教育—トレーニング・プログラムを作成する立場から

著者: 尾本良三 ,   鰐渕康彦

ページ範囲:P.1617 - P.1621

 本シリーズの第1回では,三井記念病院における外科卒後教育の実際が,"あるレジデントの4年間の研修実績"として,きわめて具体的な数値をもつてレポートされた.当院においては,外科卒後トレーニング・プログラムの作成に着手して以来約5年が経過し,本年度になつてやつと,われわれのプログラムに,はじめから入つて4年間のトレーニングを終了し,えらばれてチーフ・レジデントとなつたケースが誕生した.すなわち,この1人のレジデントのトレーニングに関する諸資料がサンプルデータとして示されたわけである.
 シリーズの第2回として本稿では,トレーニング・プログラムを作成する立場から外科卒後教育の問題をとらえてみたいと考えている.すなわち,われわれのプログラムの基本的考え方を,いくつかの項目に分けてまず述べ,それにアメリカにおける事情を対比させて幾分かの検討を加えるはずである.外科トレーニング・プログラムの作成に関心のある諸氏の参考に供したく,また十分の批判を頂きたいものと考えている.なお,当院のトレーニング・プログラムの内容それ自身については,本シリーズ前回の記載と重複しないように省略してあるので,不明の部分があるようであれば,その方を参照して頂きたい1)

トピックス

遺残結石症の非観血的治療法—"Dr. H. J. Burhenneを囲んで"(加州大サンフランシスコ・放射線科)

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.1623 - P.1623

 さる10月8日,横浜におけるSymposium of Radiologyでの招待講演のため来日したDr. H. J. Burhenne(写真)は,その機会に胆道外科にたつさわる外科医との懇談を希望され,関東周辺在住の約80名の外科医が,東京湯島会飽に集参,Dr. Burhenneを囲んで,遺残結石の非観血的治療法についての座談会がもたれた.質疑応答は,言葉の問題もあり,あらかじめ別記12氏に指定させていただき行なわれたが,遺残結石症のみならず,肝内結石症の治療にまで話題は進展し,なごやかな内にも活溌な意見の交換がなされた.予定時間がすぎても議論はつきず,後の親睦会にもちこまれる程で,本当に有意義であつたものと思われる.Dr. Burhenneは,図の如きsoft steerable catheterを考案し,T-tube抜去後の瘻孔を介して,遺残結石の非親血的治療を行ない,数々の業績を残しているが,最近Amer. J. Surg, 131:260, 1976では,彼自身の経験例204例と,米国の38施設で,同様の方法が試みられた408例,計612例を集計し,極めて良好な成績を報告していることは周知のことであろう.次日,帝京大学において,肝内結石症の患者でdemonstrationをしていただいたが,確かに小手先きのきく有用な武器であるとの印象をうけた.

臨床研究

術後胆管狭窄

著者: 成末允勇 ,   岡島邦雄 ,   戸谷拓二 ,   藤井康宏 ,   曾我部興一

ページ範囲:P.1625 - P.1630

はじめに
 胆道手術後後遺症のうち術後胆管狭窄(以下本症)は,早期に的確な治療が行なわれないかぎり,ひきつづいておこる肝病変のため,不幸な転帰をとるものもある.また,結果として予後良好な症例をみても,胆道再建の工夫のなさから,数回もの開腹手術を受けたものも多い.ひるがえつて本症の成因を考えるとき,本症の大多数が術中胆管損傷に起因するものである点,われわれ外科医は常に心して胆道手術にあたるべきである.
 今回教室で経験した術後胆管狭窄例を検討し,各症例に多くの反省すべき点があるのを痛感した.ここに2,3の症例を呈示して,私見を述べたい.

下部食道噴門部癌症例の検討

著者: 安藤健一 ,   中村義彦 ,   安部隆二 ,   黒川喜勝 ,   光山昌洙 ,   浜中保三 ,   平野忠 ,   肥田寿人 ,   吉田知司 ,   川嶋正通 ,   有馬純孝

ページ範囲:P.1631 - P.1635

はじめに
 消化管をおかす癌腫の中で,下部食道噴門部癌の外科治療は一般的に開胸開腹を前提とすること,臓器欠損に対する再建法の問題合併切除の問題など多様性を有し特異な位置を占めている.近年,手術術式に改良がなされ,麻酔,輸血,輸液,術前術後管理の進歩に伴い比較的容易で安全な手術となつてきた.対象となる大多数の症例は諸臓器の機能予備力低下を示す高齢者であること,経口摂取不良のため低栄養状態にあること,しかも進行癌,末期癌が多いことから切除の対象となる症例は制約される.当病院における下部食道噴門部癌について切除症例の臨床的検討を行ない報告する.

臨床報告

鈍的外力による総胆管完全離断の1手術治験例

著者: 宮川健 ,   山本修三 ,   茂木正寿 ,   折井正博 ,   青木清一 ,   篠沢洋太郎 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.1637 - P.1640

はじめに
 鈍的腹部外傷による肝外胆管の損傷は,重複損傷,単独損傷の如何を問わず,きわめて稀なものとされており,わが国ではわずかに肝管損傷の1例が症例報告されたのみで16),その他に重症膵十二指腸損傷の報告中に総胆管損傷を伴つた記載のあるものや,記載の十分でない肝管損傷など4例を数えるに過ぎない.われわれは最近,十二指腸球部破裂,膵損傷を伴つた総胆管完全離断の1手術治験例を経験した.本損傷はハンドル外傷によるものが多く,今後漸増が予想されるので,文献的考察を加え報告する.

膵炎を合併した副甲状腺癌の1例

著者: 田辺政裕 ,   田紀克 ,   劉崇正 ,   坂庭操 ,   山崎義和 ,   山田研一 ,   長尾孝一

ページ範囲:P.1643 - P.1646

はじめに
 原発性副甲状腺機能亢進症は,尿路結石・骨障害・消化性潰瘍・膵炎など多彩な合併症を示すが,近年診断学の進歩により稀な疾患ではなくなつてきた.膵炎の合併は,1957年Cope1)により報告されて以来注目されているが,その合併率は7〜12%2)と報告例は非常に少ない.最近,われわれは副甲状腺癌による原発性副甲状腺機能亢進症に膵炎を合併した興味ある症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

99mTcにより診断し得たMeckel憩室の1例と本邦報告例580例の統計的観察

著者: 山口宗之 ,   竹内節夫 ,   村国均 ,   粟津三郎 ,   星野道雄 ,   四宮範明

ページ範囲:P.1647 - P.1651

はじめに
 Meckel憩室の診断は非常に困難であり,他の開腹手術の際偶然に発見されることが多い.多くは無症状に経過することが多く,なかには合併症を併発し種々の臨床症状を呈し,緊急手術を施行し発見されることが多い.合併症のなかでも腸閉塞,腸重積,憩室炎が主で,その他出血,穿孔等があると言われている1).一般に新生児期は主に消化管通過障害が多く,乳幼児期になると出血性潰瘍が主となる傾向がある2)
 Meckel憩室については,土屋ら3)(1956),清成4)(1964),田中ら1)(1970)が本邦報告例を集計している.その後著者らは1976年6月までの文献上の報告例136例の集計を加え,本邦文献例580例について統計的観察をおこなつた.また術前に99mTc-pertecbnetate(以下99mTcと略す)スキャンで診断し得た自験例1例を報告し,合せて本邦報告例14例について文献的に考察した.

胃リンパ管腫の1例

著者: 山際裕史 ,   石原明徳 ,   世古口務 ,   田中誠 ,   金児千秋

ページ範囲:P.1653 - P.1655

はじめに
 リンパ管腫は,内臓に生ずることは比較的少なく,肝,副腎,腎等に稀にみられ,腸間膜,後腹膜等に生ずるものも知られている.胃にも,本邦では過去に17例が報告され,胃腫瘍の0.01%程度であるとされる.
 本稿では,65歳女子にみられた胃リンパ管腫の1手術例を報告し,若干の考察を加える.

カルシトニン測定により確診しえた甲状腺髄様癌の1例

著者: 高見博 ,   阿部令彦 ,   薬丸一洋 ,   相羽元彦 ,   三村孝 ,   伊藤国彦 ,   亀谷徹 ,   安達勇

ページ範囲:P.1657 - P.1660

はじめに
 甲状腺髄様癌は1959年Hazardら4)の報告以来,充実性蜂巣を示し,間質にはアミロイド沈着を認め,高頻度にリンパ節に転移し,明らかに未分化癌と区別できる甲状腺癌として独立した疾患と考えられてきたが,近年その腫瘍細胞は傍濾胞細胞(parafollicular cell,Ccell)由来であり,血中カルシウム濃度を低下させるThyrocalcitonin(CT)を分泌することが判明し,ホルモン産生腫瘍としてにわかに脚光を浴びるようなつた.著者らは甲状腺右葉の極めて小さな病巣より広汎な転移をきたし,血漿CT値の測定により確定診断できた甲状腺髄様癌の1例を経験したので報告する.

Behçet症候群に合併せる膝窩動脈瘤の1例

著者: 小林武彦 ,   早川和志 ,   村上和彦 ,   古川欽一 ,   高橋雅俊 ,   外野正巳

ページ範囲:P.1661 - P.1664

はじめに
 Behçet症候群は慢性遷延性炎症性疾患がその基盤とされているが,その臨床症状はきわめて多彩であり,主症状として口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状あるいは外陰部潰瘍があげられるが,その他の随伴症状として神経系,血管および消化器系の症状が特徴的に現われる場合がある.これらの中でもNeuro—Behçet症候群あるいはAngio-Behçet症候群と呼ばれる病型は予後も不良で,とくにAngio-Behçet症候群は最近きわめて重大な病型として注目されてきた.すなわち,その病変は動脈系のみならず静脈系でも発現し,とくに動脈系においては多発性動脈瘤を形成することも多く,また動脈瘤の破裂が死亡原因の重大因子となることを考慮に入れて治療に当らねばならない.
 最近,われわれは,口腔粘膜のアフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を有する完全型Behçet症候群に,右膝窩動脈瘤を合併した症例に血管形成術を行ない良好な結果を得たので報告する.

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「臨床外科」第31巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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