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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科31巻4号

1976年04月発行

雑誌目次

特集 手術とHyperalimentation

高カロリー輸液の実技と内容

著者: 葛西森夫 ,   大橋映介

ページ範囲:P.421 - P.426

はじめに
 わが国における高カロリー輸液法は,1970年以来完全静脈栄養研究会を母体として基礎的な問題の解明が続けられてきたが,今やその初期の模索の段階は終り,静脈栄養のみで患者の状態を長期間維持し,さらに積極的に栄養を改善したり,小児では正常な成長発育を得ようという,長年に亘る夢が凡そ実現したといえる.同時に本法の適応範囲は急速に広がりつつある.
 今までは,(1)長期間経口摂取不能または不十分な症例の術前術後管理,(2)縫合不全などの消化管瘻を形成した例に絶食による消化液の分泌減少をはかる.(3)小腸広範切除例や難治性下痢症など消化管の機能が代償または回復するまでの間休ませる.などが主な目的であつたが,最近では,(4)広範熱傷などエネルギー需要の亢進しているもの1).(5)癌化学療法や放射線療法施行中の患者に高カロリーを与えることにより副作用を防止し,より強力な治療を可能とする2).また(6)腎不全患者に高カロリーを与えBUNの上昇を抑える3).(7)腸管消化吸収の因子が入らない純粋な栄養代謝の研究.など,その適応範囲は著しく広げられ,手技上の合併症もかなり避けることができるようになつた.しかし一方,代謝面での合併症はまだ避けることが難しい現況では,これを解明することが至適投与量の決定に役立つ.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—術前低栄養症例に対し

著者: 平井慶徳 ,   長谷川史郎 ,   真田裕

ページ範囲:P.427 - P.432

はじめに
 高カロリー輸液が外科臨床において果しつつある役割は多大で,その手術適応の拡大,手術成績の向上には刮目すべきものがある.特に,従来手術を行ないえないか,強行しても術後に致命的なトラブルを起こすことが多かつた栄養障害例や,手術は成功したが,術後の長期観察の上からは不成功であつたと言われるような大量腸管切除例などでは,経腸的栄養法ではなす術のなかつた栄養状態の改善乃至維持が,本輸液によつて容易に行なわれ,可及的十分な全身状態下での手術や,経過観察によつて満足すべき成績をあげうるようになつているのは,衆目の認めるところであろう4,5)
 私どもが本輸液法を小児外科の実施臨床にとり入れたのは1969年であるが,以来6年間に本輸液の対象としたのは新生児乳児を中心とした約150例の小児外科症例で,表にあげたような適応によつて施行してきた.本稿では,これらの適応の中で第1にあげられている,術前低栄養障害例に対する本輸液法の実例を供覧し,若干の検討を加える.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—広範囲腸切除症例に対し

著者: 遠藤昌夫 ,   秋山洋 ,   北村享俊 ,   監物久夫 ,   高橋正彦 ,   小方卓

ページ範囲:P.433 - P.439

はじめに
 広範囲に消化管を切除された症例は,難治性の下痢,消化吸収不全,進行性の体重減少,慢性栄養失調を特徴とする消化管機能不全症候群を呈し,そのrehabilitationおよび新生児にとつてのhabilitationは容易ではない.
 小児において,しばしば広範囲に消化管を切除せざるを得ない疾患としては,腸回転異常,内ヘルニア,臍腸管瘻などに伴う腸軸捻転による腸壊死,広範囲の腸管無神経節症,多発性腸閉鎖,穿孔や軸捻転などを伴つた空・回腸閉鎖,および腹部悪性腫瘍摘出術後の放射線照射による腸閉塞や腸瘻などがあるが,最近の術前診断,術前・術中管理の進歩は,これらの患者の直接手術死亡を減少させ,近年,広範囲に消化管を切除された症例は,ますます増加する傾向にある.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—縫合不全症例に対し

著者: 岩渕眞 ,   桑山哲治 ,   大沢義弘 ,   松原要一 ,   高橋浩 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.440 - P.446

はじめに
 縫合不全の発生は出血とともに消化器外科術後の重大な合併症で一度起こると致死的になる可能性を秘めており,またいかに手術手技が向上し,chemotherapyの進歩,それに術前のcheck及び管理が確立されても常に外科医にとつてやつかいな合併症である.
 今,外科臨床分野において縫合不全の発生頻度をみてみると食道癌,食道胃吻合術では胸壁前吻合で46〜91%,胸骨後吻合で18〜36%,胸腔内吻合で7〜18%であり,胃切除術による縫合不全は良性で0.4〜1.9%,悪性で0.9〜3.6%であり,胃全摘術に限つてみるとその発生率は3.8〜14.5%と高くなる1,2).更に下部結腸吻合後の縫合不全発生率は5〜10%といわれており3)かなりの頻度で縫合不全が起こることがわかつている.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—肝障害合併症例に対し

著者: 岡田正 ,   金昌雄 ,   板倉丈夫 ,   宗田滋夫 ,   池田義和 ,   佐谷稔 ,   曲直部寿夫

ページ範囲:P.447 - P.453

はじめに
 それが外科的疾患であれ内科的疾患であれ,肝疾患患者においては栄養障害が病状の進行に悪影響をもたらすことは古くより経験的に知られている.ところが栄養管理がより必要となる重症期においては摂食量が一層低下し,ますます死期を早めるのが常であった.従来,肝障害患者がしばしば直面したこのようなジレンマに対して光明を与えつつあるのが高カロリー輸液法である.1960年代後半Dudrickによる実験以来,世界各国に急激に流布しはじめた本輸液法は現在ほぼその安全性が確立され,数多くの施設において幅広く用いられつつあるが,一方では各種疾患に対し,栄養代謝の特殊性を考慮し,それぞれの病態に最も適した経静脈栄養補給法(病態別栄養輸液)が工夫されつつある現状にある.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—糖尿病合併症例に対し

著者: 三村孝 ,   幕内博康 ,   杉田輝地 ,   佐藤和英 ,   元村祐三 ,   吉田博之 ,   森岡暁 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.454 - P.459

はじめに
 糖尿病症例は年々増加しているといわれ,外科領域においても糖尿病を合併する症例を取扱う機会が多くなつてきている.慶大外科入院症例についても,糖尿病を合併するものの比率は1958年から1961年までの4年間では平均0.7%であつたのに比べ,1964年から1969年までの6年間では1.4%と2倍に増加し1),最近では2%以上の合併率がみられる.
 他方糖尿病では,細小血管症の合併,動脈硬化症の進展,高血糖など外科手術後の回復に好ましくない条件が存在するため,縫合不全やイレウスの発生頻度の高いことが知られている2).これらの合併症は高カロリー輸液,hyperalimentation(以下HA)の適応となる場合が多い.

手術症例よりみた高カロリー輸液の応用—腎不全合併症例に対し

著者: 小越章平 ,   小高通夫

ページ範囲:P.460 - P.466

はじめに
 現在高カロリー輸液は消化器外科手術前後の栄養管理に欠くことは出来ない.われわれは,一般細菌は高カロリー輸液のボトル中では生育し難いことを知り1),カンジダ症の予防のみを考慮した簡便で,単なるカテーテリゼーションによる合併症のほとんどない安全な方法2-4)で,主に食道癌手術前後5),術後縫合不全6),肝門部胆管癌,膵頭十二指腸切除などの肝胆膵手術後7)などを中心に行なつて来た.
 一方,腎不全に関しては,教室では以前より慢性腎不全患者に対する血液透析あるいは死体腎移植等による治療を行なつてきたが,急性腎不全はもちろんのこと慢性腎不全患者あるいは腎移植患者などには,尿毒症や副腎皮質ホルモン投与による胃炎やびらん,あるいは出血箇所不明の消化管潰瘍や出血などが多くみられるため経口摂取制限を余儀なくされる8-10).そのため非経口的な栄養管理は非常に重要な問題であり,高カロリー輸液への期待も大きい.特殊病態下における高カロリー輸液の組成決定には,それぞれの病態下における栄養代謝面の解明が急がれることはいうまでもない.現在われわれは各々の組成を動物実験と臨床応用と併せ検討しているが,今回は腎不全のうち特に手術と関連したものと,さらに限定されているので,これらに対する高カロリー輸液の適応について,われわれが行なつて来た経験と併せながら,現在腎不全の高カロリー輸液について,どのように考えられ研究が進められているかなどを文献からまとめてみた.

高カロリー輸液長期施行のための対策

著者: 小野寺時夫

ページ範囲:P.467 - P.473

はじめに
 高カロリー輸液長期施行時の問題点は,大別して,菌血症その他の主に中心静脈カテーテルに関連した手技上の合併症と代謝面の種々の失調とがある.
 高カロリー輸液の急速な進歩に伴い,欧米でも本邦でも1年以上の長期施行症例が増加している.米国では,主に夜間就寝時を中心に輸液を行ない,4年以上良好な健康状態を維持している例も報告されている.

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・9

老人の内視鏡

著者: 佐藤治邦

ページ範囲:P.418 - P.419

 高齢者に積極的に内視鏡検査を行ない,良好な成績を得ているのでその概要を述べる.

講座

ハリ麻酔—③ハリ刺激のメカニズム

著者: 許瑞光

ページ範囲:P.477 - P.479

メカニズムをめぐる諸説
 前回セロトニンとカテコールアミンの脳幹における関係を述べ,カテコールアミンのリリースをハリが促すかもしれないと述べた.しかしこれは逆の説もある.それは次のような事実による.痛覚閾値上昇は,セロトニンの脳内レベルの減少時,セロトニン合成阻止剤PCPA投与時,およびraphe nucleiを破壊すると現われにくいことが知られている,さらに,モルヒネの痛覚閾値上昇とハリの作用とが類似しているとの報告などの事実による.
 このような事実から,武重らはハリの作用をセロトニンのリリースと関係づけ,「ハリ刺激により中脳のニューロン活動が活発になり,これにより誘起された体液性因子によるセロトニン含有細胞が活動し,下行性に痛覚抑制を加え,その結果痛覚伝導系が全般に抑制を受ける」との作業仮説をたてている.いずれの説がより事実の説明に合致するのか,今後の臨床的なデータの積み重ねによらねばならない.また筆者のデータは上行性system,武重の説は下行性systemに対するハリの作用と考えられるかもしれない.ここで更にハリのactivationに対する別の臨床的データを示し,おそらくreticular formationを介してハリが働くであろうと推定される別の事実をあげる.

臨床研究

手術侵襲の定量化の試み

著者: 舟生富寿 ,   工藤茂宣 ,   人見浩 ,   菅原茂 ,   鈴木唯司 ,   二川原和男 ,   青木敬治 ,   中野けいこ ,   寺山百合子

ページ範囲:P.481 - P.489

はじめに
 生体にある種の侵襲が加わると,神経系やホルモン臓器系に特異的反応が起こることは,Cannonの交感神経系・副腎髄質機能を中心としたemergency reactionやSelyeの下垂体副腎皮質系機能を中心としたストレス学説などにより注目を集め,その後多くの研究が行なわれ,侵襲に対する反応の動態が各面より追求されている.
 手術侵襲においても,同様の生体防御反応は惹起され,その侵襲の大小により反応の程度も種々であろうと当然推察される.実際の手術でその侵襲の大小を云々される時,多分に経験的,概念的に表現されており,これがまたかなり正確に手術と患者との相対的関係を見通されているのも事実である.反面,いざその定義,内容を考えると漠然と使用されていることに気づく.手術侵襲とは患者の年齢,重要臓器の機能,対象疾患の軽重などと,それに対する手術の物理的・機能的影響の大きさ,手術の大小難易など複雑な相対的関係が総括的,概念的に表現されているものである.

成人腸重積症

著者: 岡田昭紀 ,   岩島康敏 ,   小川隆司 ,   鈴木剛 ,   下野達宏 ,   安藤喜公 ,   富田良照 ,   後藤明彦 ,   下川邦泰 ,   鈴木貞夫

ページ範囲:P.491 - P.495

はじめに
 成人腸重積症は比較的まれな疾患であり,小児の場合と異なり消化管腫瘍や憩室など器質的原因に起因するものが大部分である.当教室ではすでに徳田ら1)が本症の3例について報告しているが,その後さらに5例を経験したので計8例(表)について検討を加えた.

Fogartyカテーテルによる陳旧性動脈血栓摘出術

著者: 佐々木久雄 ,   大内博 ,   水口昇三

ページ範囲:P.497 - P.501

はじめに
 末梢動脈血栓症に対する血行再建術には,Fogartyカテーテルの使用による血栓摘出術,代用血管移植術,血栓内膜剔除術がある.
 そのうちFogartyカテーテル使用による血栓摘出術は,一般に急性期が適応とされ,血栓の器質化の程度が進むため,約2日以内がFogartyカテーテル使用の適応と考えられている1)

大腸ポリープと大腸癌

著者: 中川原儀三 ,   木村捷一 ,   沢崎邦広 ,   小山文誉 ,   小島靖彦 ,   渡辺公男 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.503 - P.506

はじめに
 欧米では,消化器癌の中で大腸癌の頻度が高いが,日本では周知のように胃癌が多く,大腸癌は肝胆膵の癌につづいて第3位となつている.しかし近年日本においても大腸癌が増加の傾向にある.
 癌の早期発見については胃癌,子宮癌で良好な成績をあげているが,大腸癌の早期癌も年々増加している.私共の教室で最近経験した大腸早期癌症例は8例であり,そのうち87.5%は隆起性病変であり,adenomatouspolypが癌化したと考えられる症例の経験から大腸ポリープは癌化のpotentialを有する腺腫と推測し,また微小癌は早期癌の性格を持つていると報告したが1),今回は大腸の隆起性病変,特に大腸ポリープ症例の検討を行ない,大腸癌との関係および大腸ポリープ癌を主とする大腸早期癌について述べる.

血清LDHと血清アルカリ・フォスファターゼによる転移性肝癌の予測

著者: 岩崎甫 ,   白川洋一 ,   三條健昌 ,   新井正美

ページ範囲:P.507 - P.510

はじめに
 転移性肝癌を血清酵素の検索によつて診断,予測しようとする試みは,Gutman9)によるアルカリ・フォスファダーゼ(以下,A1-Pと略)の報告以来現在まで数多くの報告がなされている1-3,22,25,26,28,34,35)
 また,血清LDHは,Hillの報告11)以来,臨床面に広く応用されるようになり,現在では各種疾患の診断に利用されている17,21,32,33)

境界領域

癌性胸腹膜炎の発生病理に関する細胞学的・組織学的検討―特に胃癌よりの胸腹水の貯溜について

著者: 松本英世 ,   岩本明子

ページ範囲:P.511 - P.516

はじめに
 胸腹水の細胞診を志す際につきあたる壁の1つに,陽性とした細胞の形態と腫瘍部から採取した細胞の形態の照合が比較的困難であるということといま1つ,胸腹水細胞診が終局的に意味するものが個体における癌の有無ではなく,漿膜侵襲の有無であり,癌細胞陰性が必ずしも個体における癌陰性を意味しないという診断上の隘路があるという点であろう.とくに私ども中央検査部の立場から胸腹水を診断する際に,たんに腫瘍細胞の陽性,陰性を診断するのみならば診断技術の上で向上は望めないし,また学問上の進歩も期しがたいであろう.
 私どもは日常の診療でもつともしばしば経験する胃癌患者の胸腹水をまず細胞診の立場から検索して腫瘍細胞の有無を診断し,さらに臨床病理学的に綜合検討を加えて胸腹水成立機序についての解明を企て,その他にもいささかの知見を得たので報告したい.

臨床報告

稀有なる胆嚢平滑筋腫の1例

著者: 菊地惇 ,   杉山譲 ,   猪野満 ,   千葉昌和 ,   宍戸善郎 ,   田中隆夫

ページ範囲:P.517 - P.519

はじめに
 原発性胆嚢腫瘍のうち良性腫瘍は比較的稀な疾患と考えられている.本邦においては角本1)によると1971年までの胆嚢良性腫瘍の報告は66例であり,小島2)らは摘出胆嚢500例の病理組織学検索により12例の良性腫瘍を報告しているにすぎない.しかも良性腫瘍中平滑筋腫となるとそのうちわずか2例であり,豊田3)らの1例報告をあわせても今日まで3例の報告をみるのみである.最近われわれは胆石症にて胆嚢摘出術を行なつた患者に稀有な胆嚢平滑筋腫の1例を経験したので些か文献的考察を加えて報告する.

慢性大動脈・腸骨動脈閉塞に対する腋窩—大腿動脈バイパスの経験

著者: 渡辺裕 ,   岡本好史 ,   田苗英次 ,   松田光彦 ,   黄秋雄 ,   山中浩太郎

ページ範囲:P.521 - P.524

はじめに
 下肢の慢性動脈閉塞,とくに大動脈・腸骨動脈閉塞に対する血行再建術として,血栓内膜摘除術,あるいは大動脈と腸骨—大腿動脈との問のバイパスまたは移植術が施行され,それぞれ好成績を挙げている.ところが閉塞性動脈硬化症の患者は,比較的高年齢であり,心腎肝脳などにも病変を伴い,開腹術を行なう血行再建術に耐えないことがあり,さらに腹腔内の大動脈・腸骨動脈領域に炎症性変化を合併している際には,開腹術の上直接血行再建術を加えることの出来ない場合もある,かかる場合には腋窩動脈—大腿動脈バイパスaxillo-femoral bypassが選択され,わが国でも漸次報告されている1-4).われわれも本手術を5例において試みたので述べたい.

直腸平滑筋腫の2例

著者: 島崎孝志 ,   松下元夫 ,   柴野信夫 ,   菱山四郎治 ,   平間元博

ページ範囲:P.525 - P.527

はじめに
 直腸平滑筋腫は消化管に発生する平滑筋腫のうちでは比較的稀な疾患に属する.本邦においては,1923年菅の報告1)以来,現在までに著者らが文献を渉猟し得た範囲内では40例にすぎない.著者らも最近2症例を経験したので報告する.

クローン病の6例

著者: 多羅尾信 ,   松原長樹 ,   馬場国男 ,   鬼束惇義 ,   後藤明彦

ページ範囲:P.529 - P.533

はじめに
 限局性腸炎すなわちクローン病は,1932年にCrohn2)らが詳細に記載して以来,独立した疾患として注目されるようになつた.本邦でも多数の症例が報告されているが,欧米に比べると少ない.われわれも本症の6例を経験したので症例を報告する.

結核性直腸腹壁瘻の1手術治験例

著者: 樋上駿 ,   池永達雄 ,   遠藤勝幸 ,   熊田博光

ページ範囲:P.535 - P.538

はじめに
 抗結核剤が使用され始めてから,結核性腹膜炎や腸結核などの腹部結核症は激減した.しかしその反面,腹部結核症の臨床症状は多彩になり,その術前および術中診断が困難となり,術後に思わぬ合併症を招く場合がある.今回,子宮切除後の結核性直腸腹壁瘻の1例を経験し,治癒しえたので報告し考察を加える.

腹腔内二次感染巣を生じた卵巣放線菌症の1例

著者: 田近徹也 ,   蜂須賀喜多男 ,   北島正是 ,   鈴木雄彦 ,   松浦豊 ,   津田峰行 ,   犬飼偉経 ,   中神一人 ,   太田敬 ,   森直之

ページ範囲:P.539 - P.542

はじめに
 腹部放線菌症は放線菌症の中でも比較的数少ない疾患とされていたが,正確な診断と入念な検索により,最近は確実に発見されることが多くなり,本邦でも治験例がいくつか報告されている1-5).しかし,女性性器に原発した腹部放線菌症はさらに稀であるといわれている.われわれは卵巣に原発した放線菌症が虫垂切除を契機として小腸との癒着性イレウスの形で発症し,約1ヵ月後に腹壁および横行結腸に二次感染巣を生じた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

外傷性肝内仮性動脈瘤の1例

著者: 蓮見昭武 ,   植田正昭 ,   青木克憲

ページ範囲:P.543 - P.547

はじめに
 肝外傷の頻度は年々増加しつつあるが,ひとくちに肝外傷といつてもその病像はさまざまで,損傷形態からは開放性損傷と非開放性損傷とに分けられ,また臨床経過からは急性型,亜急性型,慢性型とに分けられる.われわれは最近,受傷後7日目に施行した選択的血管造影にて,肝内仮性動脈瘤形成と被膜下血腫の合併所見を呈し,受傷後12日目に遷延性破裂を来したため,肝切除を施行して救命し得た亜急性非開放性肝外傷の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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