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癌性胸腹膜炎の発生病理に関する細胞学的・組織学的検討―特に胃癌よりの胸腹水の貯溜について
著者: 松本英世1 岩本明子1
所属機関: 1熊本市立市民病院中検病理
ページ範囲:P.511 - P.516
文献購入ページに移動はじめに
胸腹水の細胞診を志す際につきあたる壁の1つに,陽性とした細胞の形態と腫瘍部から採取した細胞の形態の照合が比較的困難であるということといま1つ,胸腹水細胞診が終局的に意味するものが個体における癌の有無ではなく,漿膜侵襲の有無であり,癌細胞陰性が必ずしも個体における癌陰性を意味しないという診断上の隘路があるという点であろう.とくに私ども中央検査部の立場から胸腹水を診断する際に,たんに腫瘍細胞の陽性,陰性を診断するのみならば診断技術の上で向上は望めないし,また学問上の進歩も期しがたいであろう.
私どもは日常の診療でもつともしばしば経験する胃癌患者の胸腹水をまず細胞診の立場から検索して腫瘍細胞の有無を診断し,さらに臨床病理学的に綜合検討を加えて胸腹水成立機序についての解明を企て,その他にもいささかの知見を得たので報告したい.
胸腹水の細胞診を志す際につきあたる壁の1つに,陽性とした細胞の形態と腫瘍部から採取した細胞の形態の照合が比較的困難であるということといま1つ,胸腹水細胞診が終局的に意味するものが個体における癌の有無ではなく,漿膜侵襲の有無であり,癌細胞陰性が必ずしも個体における癌陰性を意味しないという診断上の隘路があるという点であろう.とくに私ども中央検査部の立場から胸腹水を診断する際に,たんに腫瘍細胞の陽性,陰性を診断するのみならば診断技術の上で向上は望めないし,また学問上の進歩も期しがたいであろう.
私どもは日常の診療でもつともしばしば経験する胃癌患者の胸腹水をまず細胞診の立場から検索して腫瘍細胞の有無を診断し,さらに臨床病理学的に綜合検討を加えて胸腹水成立機序についての解明を企て,その他にもいささかの知見を得たので報告したい.
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