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文献詳細

雑誌文献

臨床外科31巻5号

1976年05月発行

文献概要

特集 大量輸血 輸血に伴う生体反応

腎障害

著者: 吉岡敏治1 寒川昌明1 島崎修次1 杉本侃1

所属機関: 1大阪大学医学部特殊救急部

ページ範囲:P.607 - P.612

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はじめに
 輸血は外傷,手術,熱傷などによる循環血液量の減少を急速に回復させる必要のある時に用いるのが普通である.したがつて広い意味での外傷性ショックに際してもつとも大量に用いられる.今日ではさらに種々の内科的疾患にも血液成分の一部が投与されるようになり,その効果はなにものにも変えがたい1).ショック急性期の治療は第二次世界大戦の負傷戦士の治療経験をもとに輸液療法が急速に進歩し,いわゆるirreversible shockに陥いることはほとんどなくなつた.その反面、精力的な治療によつてショックをきりぬけた後の種々の合併症の発生が問題となつてきた2).なかでもショック臓器として最初に注目されたのが腎である3).その病因は2つに大別されている.ひとつは腎血流量の減少により尿細管上皮の膨化変性をきたすことであり,今ひとつはhemoglobin,myoglobin等を含む広義のnephrotoxinによる障害である4,5,6).輸血によつて全身の循環動態を保持できるとすれば,それはひいては腎の血流動態も改善すると考えられ,輸血による腎障害は後者に属するものである.
 今回の報告は輸血そのものによる腎への影響を解明しようとするもので,尿中,血清中のureaNの変動を検討し,虚血性変化によるparameterを除外するためにショックの程度とその持続時間による検討もあわせて行なつた.なおショック腎に関する報告は腎血流量の面からの検討,あるいはnephrotoxin投与下の実験的研究がほとんどで,大量同型輸血にともなう腎機能の検討は全くなされていない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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