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臨床研究
上部消化管術後縫合不全の治療法としての高カロリー輸液
著者: 小越章平1 小出義雄1 碓井貞仁1 竹島徹1 竹内英世1 武藤護彦1 平島毅1 高橋英世1 小高通夫1 佐藤博1
所属機関: 1千葉大学医学部第2外科
ページ範囲:P.645 - P.649
文献購入ページに移動もし外科医に高カロリー輸液を導入して何が一番ありがたいかと問えば,まず術後縫合不全が良く治ることをあげる人が多いであろう.消化管手術の合併症のうち術後縫合不全ほど外科医が一種の敗北感を味わうことはない.悪性腫瘍など患者のリスクが非常に悪いものをむりして切除した場合など,いくらかあきらめの気持ちで自分自身を慰めてみても消化管外科を標榜している以上,いつかは経験しなければならない宿命かもしれない.縫合不全をつくつて平気でいられるには,相当な経験と年季を必要とするものだろう.食道癌の手術術式などは,一口にいつて縫合不全との戦いで,現在までいろいろ改良工夫が重ねられて来たといつても過言でない.以前は縫合不全について堂々と発表する人は多くなかつた.高カロリー輸液が導入されて結局治癒率が高まつたために発表が増え,それらをみても以前も現在も大体同じペースで縫合不全は起こつていることがわかる.教室でも残念ながら縫合不全の例数は多い.しかし,高カロリー輸液を行なつて以来,救命率は比較にならないほど上がつた.それよりも何よりも根治術後まもなく気ぜわしく造つた縫合不全用の腸瘻を1例もつくらないで済んでいることが大きな進歩といえよう.
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