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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科31巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

特集 重度外傷

多重外傷の取扱い—頭部を中心として

著者: 佐藤醇 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.837 - P.842

はじめに
 最近における高速道路の発達,車の増加,さらに高速化により,交通事故の規模および発生件数が大きいとともに重症度も増している.その際頭部外傷に伴い多重外傷も身体各部におよび,治療方針を確立するのに各科の協力を必要とする場合が多くなつている.交通救急センターにおける救急患者,および急性期頭部外傷患者の治療に対していろいろの問題点を有している.
 われわれは最近2年間の神奈川県立厚木病院交通救急センターにおける,頭部外傷と合併した多重外傷について検討した.

多重外傷の取扱い—胸部を中心として

著者: 須田義雄 ,   浅井康文 ,   長尾恒

ページ範囲:P.843 - P.852

はじめに
 近年,災害交通事故数は減少の傾向にあるとはいえ,自動車道の整備,拡張に伴い,重篤な症例の増加,また災害事故も大型化の傾向にある.
 特に交通災害の重症例では,損傷が身体の一部に限らず各部位に多発するのが特徴で,いわゆる多重外傷例が増加しつつあり,特に胸部外傷を伴う場合は,直接呼吸循環に関係するところから,なによりも迅速かつ的確なfirst aidが必要であつて,心大血管損傷を伴うshock例(循環虚脱),flail chestなどに代表される重篤な呼吸障害例には,他部位よりもまず胸部外傷に対しての処置が優先する.

多重外傷の取扱い—腹部を中心として

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.853 - P.857

はじめに
 多発性重複外傷では,損傷臓器や部位が複数にわたるので,単独腹部損傷とは病態の異なることも少なくない7,9).即ち,出血性ショックの発現頻度が高く,初期resuscitationの後に呼吸不全をきたすことも多く,更には腎不全や敗血症などの二次的合併症を起こしてくる.死亡来院した腹部外傷患者の97%は,腹部以外の器官に損傷のある多発合併損傷であるとのDeBakeyの報告2),あるいは,DiVicenti1)や須藤8)等の述べているように,多発性腹部合併損傷の手術死亡率は単独損傷の3倍であるなどはこの間の事情を物語つている.
 複雑な多発合併損傷を伴つた外傷患者の実際の診療に際して,如何に腹部外傷の存在を判断し,如何に治療し,何時開腹するのかを中心に,他の部位の手術と腹部手術の優先順序を如何に決定していくのか述べていきたい.

多重外傷の取扱い—骨盤を中心として

著者: 斎藤武志 ,   柴拓 ,   上野竜夫 ,   宗像富士夫

ページ範囲:P.859 - P.867

はじめに
 自動車事故による骨盤骨折を中心とした泌尿器科的多重外傷としては,上腹部臓器即ち,腎,肝等の損傷と下部尿路損傷の合併,また骨盤内臓器における腸管(ことに直腸)損傷と下部尿路損傷の合併等が挙げられており,更に下部尿路損傷の場合でも膀胱破裂と膜様部尿道損傷の合併もみられている.このほか,骨折関係でも骨盤骨折のほか,大腿骨または下腿骨骨折等の合併もみられている.われわれは過去11年間に17例の骨盤骨折に合併した下部尿路損傷を経験し,前述の多重外傷例も数例含まれているのでそれらについて述べる.

多重外傷の取扱い—四肢を中心として

著者: 桜田允也

ページ範囲:P.869 - P.875

はじめに
 最近の交通機関の発達,建築物の高層化,産業の機械化,大型化は見覚ましいものがある.しかしこれらのことは一旦誤れば大きな外力となつてふりかかつて来る.そして外力を受けた部分の損傷が大きくなると共に,外力を受ける部位の増加となり,多発性の損傷が増加する.多発性の損傷のある症例に対して如何に取扱うべきかを画一的に定めることは困難で,個々の症例について最も適当と考えられる方法を選ぶべきである.しかし原則的には救命を第一とし,まず全身状態のチェックと管理,次で直接生命に影響を与える損傷の治療,将来の機能に影響を与える損傷の治療の順序となるであろう.
 四肢を中心とする重複外傷には,頭部,胸,腹部内臓器の損傷を合併した四肢損傷の場合と,四肢において数箇所の損傷を合併した例の2つに大別される.私はさきに頭,胸,腹部内臓器損傷を伴う場合の四肢の損傷の処置について述べたので,今回は四肢において数箇所の損傷を受けた場合について,最近の若干の症例を挙げて述べる.

剖検からみた重度外傷—特にFat Embolismについて

著者: 河野林

ページ範囲:P.877 - P.884

はじめに
 ここに検索の対象とした重度外傷例は凡て多重外傷例で,2例を除き交通事故と高所からの転落事故によるものである.剖検上の主損傷に基づき,頭部損傷群,胸部損傷群,腹部損傷群,骨盤損傷群,四肢損傷群に分け,主損傷と合併損傷,生存時間との関係を表示した.合併損傷としては骨盤,四肢の骨折が多く,皮下脂肪織,筋組織の挫傷も強いため肺,脳の脂肪塞栓(以下FEと略記)は必発である,さらに圧挫症候群ないしショック腎として腎障害も著明であるが,腎障害は組織学的に受傷後3〜5日目頃から最高に達し,2週間目頃から尿細管上皮の再生が始まり,機能の改善もみられ,回復の兆があり,FEによる脳傷害よりは医療効果は大である.
 FEは受傷後,短時日の死亡では損傷自体が重篤で死因に関与することよりは,むしろ受傷時の生活反応の一部にすぎない.FEが直接死因となるのは骨盤,四肢が主損傷である時であるが,この時でも生前は閉鎖性頭部損傷が疑われ,処置される.頭部損傷がないのに,また軽少であるのに意識の回復しない例や無症状期後の持続性意識障害,意識回復後の精神障害の強い例,あるいは植物症化をみる例などにFEによる肺・脳傷害が著明である1)

重度外傷の病態生理

著者: 岡田芳明 ,   杉本侃

ページ範囲:P.885 - P.889

はじめに
 重度外傷の病態生理は,出血および細胞外液喪失によるもの,広範な組織破壊によるものと,臓器損傷によるものとの3つに大別することができる.もちろん,これらが複雑に絡み合つていることは図1に見られる通りである.例えば組織破壊は外傷によつてもたらされる他,出血や細胞外液喪失による局所の浮腫と循環障害によつても増長してくる.さらに両者はいずれも凝固・線溶系に異常をもたらす原因となる.
 また,臓器損傷のなかでも頭部,胸部,腹部等の重度外傷はそれぞれ特有な病態生理を呈するが,本稿では単独外傷は取り上げず,多発外傷に限つて,当科での研究を中心に論じる.

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・12

胃カメラ・ファイバーの撮り方—よりよい診断のために

著者: 竹添和英

ページ範囲:P.834 - P.835

 よりよい診断のための内視鏡写真としては,何よりもまず病変がもれなく記録されていなければならない.さらに病変の量的・質的診断の可能な写真でなければならない.これら条件が満足される写真をとることは必ずしも簡単ではない.紙面の制約上ここではファイバースコープを用いて写真撮影をする場合の最低の基本を列記する.
 1.術者の心構え 内視鏡検査は被検者にとつて多少なりとも苦痛を伴うものであるという意識を大事にしたい.効果的な内視鏡検査には被検者の協調性,十分な前処置,慎重で愛護的な操作が大切である.

クリニカル・カンファレンス

重度外傷のfirst aidをどうするか—多発外傷を中心として

著者: 倉光秀麿 ,   山本修三 ,   津端求 ,   大塚敏文 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.890 - P.905

 須藤(司会)最近は交通事故その他で外傷の規模が非常に複雑になりまして,極度の重症外傷とか,あるいは頭,胸,腹,手足に一緒に損傷を受けた外傷などがかなりふえてまいりました.とくに各科にわたるような多発外傷,しかも,その重症例には問題点が多いと思います.たとえば,それをどういうシステムで診療していくかとか,あるいはどういう治療順序でやろうか,という複雑な問題がいろいろあると思います.本日は済生会神奈川県病院の症例をたたき台にしてこれらの問題をいろいろ検討してみたいと思います.

講座

ハリ麻酔—⑥ハリ麻酔の実技

著者: 許瑞光

ページ範囲:P.909 - P.911

針刺と捻針,雀啄
 前回まで,歴史,理論,実際について述べてきたので,今回はハリ麻の実技について述べる.まずハリの刺入の方法であるが,それには用手法による針刺と,筒を使用して針刺する筒針の2法がある.筒を利用してハリを刺す方法は日本で発達した方法である.これは筒にハリを入れて,上よりハリをたたいて刺すのであつて,針刺に際してそれほど熟練しなくてもハリを刺すことができる.しかも細い金あるいは銀のハリを使用できる.これに反して普通のハリは多くの場合ステンレス製である.このハリを,手でこよるように捻針しながら刺すのが一般的に行なわれている方法である.捻針して針刺する方法は練習によつて上達する必要があり,上手に針刺するためには次のような方法がある.それはチリ紙を重ねて3〜4cmの厚さにし,これに糸をかけて十分にかたくしてから上より下まで上手に捻針で達するようくり返す.上手に捻針することもハリ麻の一つだと考えられている.実施に際して上手に針刺し,しかもツボにあたるようにする.ツボはうまく達すると,釣の時に釣糸から釣竿へ魚信を感じるような"ピクッ"とする手ごたえがある.これを"ひびき"あるいは得気と呼んでいる.ツボは現在まではつきりした定義づけができないが,生理学的には電位の低いところとされている.しかしこの逆は真ではない.ハリ麻にさいして経験的に言われていることは,デタラメに針刺するよりもツボを刺す方がより効果的であるということである.またツボは絶対的なものでなく,ハリ麻の際に時間がたつにつれて場所がごくわずか変ることがあり,刺し直すことがある.用手法のみでハリ麻を行なう場合2〜3c.p.s.でハリを手でたえず捻針することが必要である.これは,このことによつて末梢よりの刺激をより強くして,中枢への刺激効果を強める作用がある.またこれに雀啄(ジャクタク)といつて,雀がエサをついばむ時のように力強くハリを上下させることを加えると,さらに刺激が強くなるのでさらに麻酔効果が上る.特にハリ1本で麻酔する場合,捻針と雀啄を加えて行なうとよりよい効果が得られる.日本より中国へ行つたハリ麻の見学者がハリ1本で麻酔して手術をしたのをみたといつている場合の殆んど多くがこの方法によつている.用手法の利点は手術の進行にあわせて緩急自在に捻針,雀啄を或いは強く或いは弱くして,手術にあわせることができる点である.欠点は,何時間も,しかし同じ人が捻針,雀啄をくり返すとくたびれるので,人をかえることに難点がある.このように肉体的に不可能であるので,多くの場合電麻機を使用する.中国製の電麻機はいくつかの種類があるが,中国ではBT 701が最もポーピユラーに使用されているという*.この電麻機を使用するにさいして,(電池による電源なので)直流で約60V位までvoltageをあげて,2〜3c.p.s.で刺激するのである.麻酔の最中で1回或いは2回位,電圧をあげることが望ましい.これまでの経過から気づかれたと思われるが,古来から行なわれているハリの違いはここにある.いままでのハリは多くの場合針刺するだけにとどまつている.新しいハリは,捻針,雀啄を加え,より強い刺激を与えることにある.また更には,このハリを電麻機につないでpuls刺激を与えるのである.この電麻機の刺激と用手法による捻針,雀啄とでは,くり返して述べるが臨床経験から,用手法の方が刺激が強いようである.自験例より注意すべきことの一つは,電麻機を使用する際に銀製のハリを使用した時に,麻酔の最中にハリが折れる事故がおきたことである.これはおそらく電流を通じることによる電気分解が生じたためと考えられる.他にも同様な経験があり,ステンレスのハリを使用することをおすすめする.また初期に日本で作られた電麻機の時には刺激によって火傷を生じたものもあり,実際の使用に際して十分に気をつけて頂きたい.

臨床研究

超音波検査による原発性肝癌の早期診断

著者: 由里樹生 ,   秋本伸 ,   済陽高穂 ,   糟谷忍 ,   吉田経雄 ,   高崎健 ,   武藤晴臣 ,   浜野恭一 ,   小林誠一郎 ,   奈良成子 ,   田宮誠 ,   久満董樹 ,   林直諒 ,   小幡裕

ページ範囲:P.913 - P.917

はじめに
 肝癌の診断には,生化学検査(α-fetoprotein値:以下AFPと略す),肝シンチグラフィー,血管造影等種種の方法があるが,原発性の小肝癌を発見することは未だ困難であると言つてよい.
 われわれは,超音波検査法により原発性肝癌の早期診断に関して検討しているが,現在までに4例の早期と思われる小肝癌を描出し得て,血管造影,手術などにより確認したので,その症例を呈示し,若干の考察を加えて報告する.

手術成績からみた肝内胆石症の検討

著者: 木南義男 ,   新村康二 ,   泉良平 ,   藤田秀春 ,   永川宅和 ,   広野禎介 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.919 - P.924

はじめに
 肝内胆石症は胆石症のうちでも最も難治性であるとされ,多くの問題点を含んでいる.本邦における本症の発生頻度は,全胆石症に対し,手術例において2.5〜30%1-4)といわれ,地域差もみられるという.その成因としては,胆汁流通障害とそれに伴う細菌感染などが重要とされるが,肝内胆管の性状や発生年齢から先天性要因2,4-6)も考慮されている.また本症の病態を知るため型分類2,4,7)が試みられているが,報告者により分類方法が異なり,いまだ一定の見解はみられない.このようなことは本症が如何に取扱いにくく,治療しにくいかを示すものである.
 ところで本症の手術成績1.4,8)は必ずしも良好とはいい難く,可成りの再手術例をみるのが現状である.手術術式においても基本的には胆石除去術に個々の症例に応じた各種の付加手術が行なわれているが,決定的なものはない.そこで肝内胆石症の今後の治療指針を見出すため自験例を手術成績の面より検討してみたところ,若干の知見を得たので報告する.

本邦における最近5年間の肝内胆石症に関する統計的観察

著者: 木下博明 ,   白羽弥右衛門 ,   津田勇平 ,   大森国雄 ,   枝川篤永 ,   松本正美 ,   成山多喜男 ,   米山泰平 ,   広橋一裕

ページ範囲:P.925 - P.931

はじめに
 胆石症の治療成績は,外科学一般の進歩や各種検査法の開発に伴つて最近著しく向上し,その手術死亡率は1%以下に減少,術後の遠隔成績もかなり良好と報じられている2,11).しかし,これを子細に観察すると,肝内胆石症例の手術死亡率は現在でもなお高く,しかも本症はしばしば再発をくりかえすので,なお難治性疾患のひとつとされている5,9).したがつて,肝内胆石の処置は今後の胆石症外科の分野に残された重要な課題のひとつである.
 周知のごとく1975年10月大阪市内において開催された第37回日本外科医学会総会のシンポジウムとして,「肝内胆石をめぐる諸問題」がとりあげられた.著者らはこの機会に,わが国における最近5年間の肝内胆石症に関する調査を行なつたので,その結果を本稿として報告する.

難治性唇状腸瘻の治療方針

著者: 豊島宏 ,   板東隆文 ,   太中弘

ページ範囲:P.933 - P.938

はじめに
 腸管粘膜が腹壁に露出した唇状腸瘻では,管状瘻と異なつて瘻孔から腸内容の大部分が漏出するため,保存的療法では治癒が期待できない1).本症は術中の腸管損傷部や,腸切除吻合部の縫合不全が原因で,単純な閉鎖術では根治はむずかしい.とくに下腹部の小腸瘻の場合は周囲に癒着した小腸の剥離,合併切除が必要で,手技上相当の困難を伴うことが多い.また上腹部にできた結腸瘻では,成因や臨床像が小腸瘻と異なる点が多く,その特徴を考慮して治療を行なう必要がある.著者らは高度の小腸瘻5例,結腸瘻4例を経験しているが,部位による特徴を対比しつつ,唇状腸瘻の治療方針,手術術式等についてわれわれの考えを述べてみたい.

臨床報告

インスリノーマの2例

著者: 玉置久雄 ,   野口孝 ,   井ノ口健也 ,   川原田嘉文

ページ範囲:P.939 - P.943

はじめに
 Insulinomaはインスリン分泌作用を持つ腫瘍であり,低血糖による臨床症状は特徴的で,1942年Whipple1)が8例の自験例をもとに発表した,いわゆるWhippleの三徴と呼ばれ発見の糸口となつている.本症は腫瘍の摘除により著明な症状の改善をみることでも臨床上重要である.
 最近の発見は1927年Wilder2)らにより発表され,さらに2年後にはHowland3)により外科的治験例が報告されている.本邦においても1930年角尾4)らにより第1例が報告されて以来,多くを数えている.

非定型的破裂性腹部大動脈瘤の1例

著者: 森下靖雄 ,   平明

ページ範囲:P.945 - P.948

はじめに
 一般の腹部大動脈瘤手術は画一的に行なわれ成績もよいが,一旦破裂をおこせば事情は全く異なる.すなわちCooleyら2)の21%,Mannickら8)の32%,DeBakeyら5)の34%の手術死亡率は卓越したもので50〜80%にのぼる報告もある1,3,6,7,9).1973年の本邦集計では44%の手術死亡率が示されている11).破裂の様式,手術までの時間,手術手技等成績を左右する重要な因子が介在する.
 不幸にして失つたが,特異な形態,破裂様式,および経過を示した1例を最近経験したので報告し,若干の考察を加える.

カンジダ性腹膜炎の1治験例

著者: 高浪巌 ,   大西英胤 ,   宇都宮利善 ,   深井志摩夫 ,   呂俊彦 ,   植村剛

ページ範囲:P.949 - P.952

はじめに
 真菌類は自然界に広く存在しているが,病原性を示すものは比較的少ない.人体における内臓真菌症が注目されだしたのは比較的最近であり,その原因として抗生物質,抗癌剤,免疫抑制剤,副腎皮質ホルモン剤の長期投与などがあげられる.私達は十二指腸潰瘍の手術後に発生したカンジダ性腹膜炎を経験したのでその経過を報告するとともに若干の文献的考察を試みる.

胆道疾患を伴った内臓逆位症の2例

著者: 重松宏 ,   是久博見 ,   重松貞彦 ,   原啓一 ,   岩谷真宏 ,   盛岡康晃

ページ範囲:P.953 - P.959

はじめに
 内臓逆位症は,既に紀元前Aristotleが動物において認めたといわれ1),16世紀中頃Cornerius Gema2)が,1600年にはFabricius3)が,それぞれ肝脾の逆位例を,また1615年Petrius Servius,1643年Marcelles Le-ciusが,完全内臓逆位症の剖検例を報告した4).フランス女王Marie de Mediciが最初の生きた人間例といわれている5)が,1824年Kuchenmeisterは臨床例6)を報告し,1897年にいたつてVehsemeyer's7)が初めてX線による診断を行ない,爾来数多くの内臓逆位症例が認められる様になつた.本邦においては,1889年(明治22年)笠原8)が最初の臨床診断を,また,1892年(明治25年)熊谷,1894年(明治27年)中西が剖検例を報告し,1904年(明治37年)松田,蒿科が最初のX線診断を行なつて以来9),1,000例を超える報告例がみられる.
 内臓逆位症の頻度は,VaranoとMerklin10)が諸家の報告を比較し8,000人に1人が妥当であろうとしている.

Meckel憩室に発生した腺癌の1治験例

著者: 大谷洋一 ,   高崎健 ,   村田洋子 ,   水沢和子 ,   佐久間隆 ,   鈴木重弘 ,   武藤晴臣 ,   鈴木茂 ,   鈴木博孝 ,   山田明義 ,   遠藤光夫 ,   小林誠一郎 ,   佐久間映夫

ページ範囲:P.961 - P.964

はじめに
 最近,臨床上きわめてまれな疾患で,本邦5例目と思われるMeckel憩室癌の1例を経験したので文献的考察を加えてここに報告する.

薬剤

腹部外科における術前処置の検討—特に34%クエン酸マグネシウムの使用について

著者: 林輝義 ,   鮫島恭彦 ,   脇慎治 ,   武藤良弘 ,   石垣実弘 ,   内村正幸 ,   室久敏三郎

ページ範囲:P.965 - P.968

はじめに
 腹部外科手術後の管理は,術前の腸管清掃の程度に大きく左右されることは周知のことである.術前腸管糞便の清掃が不十分の為に,術後に糞石による閉塞や腹部膨満,その結果縫合不全を誘発するに至ることもある.
 近年注腸二重造影法の手技が改善され,広く普及されつつある.特にその中でBrown法による前処置の効果がすぐれて大きいことがX線による二重造影像のみでなく,内視鏡の前処置としても効果のあることが証明されている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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