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特集 進行胃癌の化学療法
手術麻酔侵襲下の術後化学療法の問題点—とくに肝障害について
著者: 中島聡総1 田中一成1 近森正幸1
所属機関: 1癌研究会附属病院外科
ページ範囲:P.1167 - P.1173
文献購入ページに移動今日,臨床的に利用されている制癌剤は腫瘍に対して特異的な親和性を有する訳ではないから,正常組織への作用が副作用という形で問題になつてくる1).外科領域に化学療法が導入され,手術と併用する補助的療法の一つとなつてから既に久しいが,ここでも副作用は不可避的な問題として,臨床医を悩ませている2,3).化学療法による副作用は正常組織でも特に細胞分裂の盛んな骨髄,消化管上皮,毛根,爪などに現われることが多いが,代謝中枢である肝臓や排泄経路にあたる腎臓への影響も考えられる4).癌研外科では1961年以来,胃癌の治癒手術症例の術後に,種々の化学療法を施行し,再発の予防に努めている.しかし手術および麻酔侵襲下にある術直後から化学療法を施行すると,内科領域の化学療法において認められる副作用の他に,術後化学療法に特徴的な副作用,とくに肝障害がかなり高頻度に発現することがある5).こうした術後化学療法に伴う肝障害はかなり観察されているも拘らず,石川ら2)の報告を除いて,十分な検討がなされておらず,安全な化学療法を施行するためにも,対策が急がれていた.
当科では非治癒手術や再発症例に対して,手術から2週間以上経過して施行した化学療法においては,肝障害がきわめて少ないことを観察し5),1974年以降は胃癌の術後化学療法はすべて手術から2週間以上経過してから開始するようにした.その結果,肝障害は対照群と同程度にまで減少したので,その詳細を報告し,あわせて副作用をめぐる補助化学療法の問題点について2,3言及したい.
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