文献詳細
臨床報告
トロトラストによる肝癌の1症例
著者: 有本重也1 勝田仁康1 川嶋寛昭1 田伏俊作1 高山勇1 上山庸弘1 西川正一1 上山健弘1 内藤行雄1 山本富一2 永井清和2
所属機関: 1和歌山赤十字病院外科 2和歌山県立医科大学第2病理
ページ範囲:P.1227 - P.1231
文献概要
二酸化トリウム(ThO2)を主成分とする造影剤,「トロトラスト」(以下「ト」と略す)は,本邦では1930年から1943年項まで主に肝脾造影,血管撮影に頻繁に使用された。しかし本剤の放射線障害が指摘され,その使用が中止されて以来も多数の障害例が報告され,当時注入を受けた患者の予後調査も行なわれている.今日では放射性物質の人体に及ぼす影響の研究資料としてこれら症例の放射線障害と発癌との関係が重視されている.最近著者らは,35年前「ト」注入を受けた患者に肝癌を合併した1例を経験したので報告し若干の文献的考察を加える.
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