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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻1号

1977年01月発行

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・18

胃隆起性病変—その2

著者: 高木国夫1

所属機関: 1癌研究会付属病院外科

ページ範囲:P.10 - P.11

文献概要

 隆起性病変の良悪性の鑑別にあたつては,従来は,良性ポリープと癌,とくに早期癌との鑑別診断や良性ポリープの癌化の点について注目ざれて来たが,最近は,隆起性病変の中に良悪性の境界病変—異型上皮—が考慮されて来ている.この異型上皮は,粘膜性病変で,正常粘膜よりやや盛り上りを示すものが多く,早期癌のIIaに,ときにI型にあたるような形態を示しているが,平坦や陥凹した粘膜にも異型上皮をみることがあるが,隆起性の異型上皮に比して稀である.組織像は,腺管構造,及び腺細胞の異型性があるが,癌といえないもので,X線,内視鏡,更に胃生検でも,早期癌との鑑別上問題となつている.
 腺腫性ポリープと異型上皮,癌との3者の関連について,隆起性病変の形態と大きさについて検討した(図①).腺腫性ポリープには,半球状,くびれのある球状で,境界が平滑であるに対し,早期癌や異型上皮は,平盤状や花壇状を示し,ときに中央がやや凹んだものもあつて,周辺が菊花状を示している.とくに,早期癌のIIaと異型上皮との兼異は,IIaでは直径2cm以上のものが多いのに反し,異型上皮では直径2cm以下のものが多く,2cm以上のものは稀である.隆起した早期癌と異型上皮では形態上の類似があつて,最終的には胃生検による外はないが,なお,早期癌と異型上皮とでは,内視鏡的所見の上で差異がみとめられる.両者の違いをより明らかにするために,色素散布法(インジゴカルミン)や染色法(メチレンブルー)により,隆起粘膜の表面の性状や周囲との境界を明瞭にすることが重要である.図②は,胃角後壁のIIaであつて,色素散布後には,結節状粘膜の集簇がみとめられ,結節が大小不同で,境界も菊花状を呈し,大きさも2cm以上である.IIa様の異型上皮のカメラ所見は,図③—aの如く,表面の結節状隆起が比較的均一であつて,図③—bは色素散布後で図③—aに比して隆起の表面や周囲との境界がより明瞭になつている.隆起の色調は,異型上皮では褪色を示すものが多く,隆起の表面にビランをみとめない.Haか異型上皮かの鑑別が困難な場合が稀でなく,図④は,胃体下部小彎の結節状隆起であるが,全体的に平たく,病巣の大きさも2cm前後であり,胃生検を行なつたが,Group IIIであつたがIIaを疑つて切除したものが,図⑤で,IIa型早期癌(m)であつた.1cm前後のIIa様異型上皮では,平盤状の隆起で褪色し,周囲との境界が明瞭にみとめられるものが多く,図⑥は幽門前庭部前壁の褪色した平盤状隆起で,胃生検でGroup IIIであつた.早期癌か異型上皮かの鑑別にあたつて,胃生検においても隆起性早期癌では6%のfalse negative例がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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