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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻1号

1977年01月発行

特集 人工肛門のAfter Care

After careよりみた人工肛門造設術

著者: 安富正幸1 福原毅1 岩佐善二1 吉川守1

所属機関: 1近畿大学医学部第1外科

ページ範囲:P.13 - P.21

文献概要

はじめに
 人工肛門(artificial anus, Anus preternaturalis,künstlicher After)は結腸瘻の一種であつて,結腸内容を全部排出するものが人工肛門,腸内容の一部を排出するものが狭義の結腸瘻と分けられている.また人工肛門より排出される腸内容は糞便であつて,結腸全摘術後に作られる回腸瘻(Ileo—stomy)は厳密には人工肛門ではない.しかし今回は回腸瘻も含めて考えてみたい.
 After careからみて機能の良い人工肛門造設術を論ずる前に,人工肛門は糞便の排出が完全であるように安全かつ確実に作られるべきで,狭窄,腸管脱出,瘢痕ヘルニアなどの合併症のない人工肛門が機能のよい人工肛門の第1歩であることを忘れてはならない.次に患者の負担ができるだけ少なくなるように人工肛門の形,部位および機能などについて考慮されなければならない.まず大切なことは便の処理が容易であることである.この点では腹壁人工肛門がよく,仙骨部や会陰部は不適当である,またなるべく肛門に近い腸管に作るほど便が硬く処理が容易となる.手術の容易さ,術後腸管の陥入などの合併症が少ないことから腸間膜の長い腸管が選ばれる,実際には大部分の人工肛門がS状結腸に作られているのは,直腸に病変が多いからである.また人工肛門の位置は主切開創からなるべく離し,主切開創が便によつて汚染されないようにすること,ベルト,帯などの着衣の障害にならないよう注意することである.臍と同じ高さに作るとベルトをしめるのに不便である.また腸骨棘や肋骨弓のような突起やそけい靱帯,臍などの凹みの近くでは装具の密着がわるく,腸内容が漏れたり凹みに便が付着したりして便の処理に不都合なことが多い.肥満体の人では臍より少し上方に作つた方がよい.下腹部では突出した腹壁の陰になつて人工肛門が見えにくく,処理が不便だからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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