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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻1号

1977年01月発行

文献概要

特集 人工肛門のAfter Care

人工肛門after careの実際—腸洗浄法と自然排便法

著者: 牧野永城1 葛西猛1

所属機関: 1聖路加国際病院外科

ページ範囲:P.51 - P.55

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はじめに
 ここでは人工肛門といつてもileostomyおよび横行結腸または上行結腸などにつくられたものは,排便条件が異なるので除き,左側結腸に造設された人工肛門に限つて話をすすめる.従来人工肛門造設をうけた患者は,術後の排便処理の方法として,ただ人工肛門に集便の装具を当てるだけで,いつ出てくるかわからない便をその装具にうけるだけであつた.このようにして人工肛門をもつ患者が社会復帰した場合,案外平気で一向苦にしない人もあつた反面,人知れぬ心労を重ねている人も多かつたことは種々の調査の上でも明らかである1,2).そのうちでも最も苦労していることは,不規則に起こる漏便と排ガスと,それに伴つて生ずる便臭や排ガスの音である.社会的に職業上集団の中で仕事をする人に特にこの悩みは著しい."手術は成功した,退院まで運べばよい,あとは自分でやりなさい",というのが極端にいえば従来のやり方だつたのだが,たとえ癌だけ治しても,人間としての失地回復ができなかつたら本当に治したとはいえまい.
 しかし将来はともかく,今日完全な括約機能をもつた人工肛門をつくる方法は知られていない.現在つくりうる人工肛門という制約の中で,その欠点を取り除くため,可能な最良の管理法を考えて患者に教える他はない.近年徐々にではあるが,人工肛門のrehabilitationに対するそのような考慮が少しずつ払われるようになってきた.英米ではかなり以前からこの方面での努力がみられるが,わが国ではその点かなりの遅れがあつたことは否めない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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