文献詳細
臨床研究
死体腎移植術後早期の管理と経過
著者: 落合武徳1 雨宮浩1 渡辺一男1 宮島哲也1 坂本薫1 林良輔1 佐藤博1 岩崎洋治2 横山健郎3 柏原英彦3 大森耕一郎3
所属機関: 1千葉大学医学部第2外科 2筑波大学臨床医学系外科 3国立佐倉療養所外科
ページ範囲:P.1309 - P.1313
文献概要
腎移植は1975年1月までにアメリカのNIHに登録された症例数が23,000例を超え1),わが国においても1976年6月末までに679例を数えた.諸外国をみるとオーストラリヤでは腎移植手術のほとんどが,カナダでは85%,アメリカでは65%が死体から腎の提供をうけて移植する死体腎移植であるのに比べて1),日本で行なわれた死体腎移植の総数は74例で,これは腎移植総数のわずか11%である.日本では脳死の状態で移植のために臓器を摘出することに対して社会的に抵抗があり,アメリカで行なわれているようなbeating heartの状態での腎臓摘出ができない.そのために移植腎がacutetubular necrosis(ATN)となって移植後の腎機能の発現が遅延する症例が多い.ATNのために移植腎から利尿の得られない時期の術後管理は,移植直後から利尿の得られる生体腎移植の場合とは異なつた配慮が要求されるし,ATNの少ないアメリカなどの死体腎移植よりも管理がむずかしい.われわれが最近10年間に行なつた42例の死体腎移植の経験からATNのために腎機能が低下している術後早期の管理の問題点について検討した.
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