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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻11号

1977年11月発行

特集 Biopsyの再検討

臨床病理よりみた生検の問題点

著者: 須知泰山1

所属機関: 1愛知県がんセンター病院臨床検査部

ページ範囲:P.1403 - P.1409

文献概要

はじめに
 私に課せられた命題は病理側からみた「生検の問題点」を論ずることである.生検という言葉も人によつてかなり意味する内容に幅があることに気づく.普通はある病変の病理組織診断を主たる目的として組織,臓器の一部を切除し,診断を下すことであると思うけれども,胃など臓器のかなり大きな部分を治療の目的で摘出したものについての病理診断をも,剖検診断に対する言葉として「プローベをみる」というようないい方で含めている人々(病理側に多い)もいるし,近頃ではまた針などで採取した試料を細胞診的あるいは血液形態学的に診断することをも生検に含ませる人もいる.皮膚の小病変の場合のように,診断と治療を兼ねる場合もあるので明確な基準は決め難いけれども,ここでは生検を一応最初に述べたような意味に解したいと思う.
 その生検は元来病理学の基本的観察法である病理組織学の手法及びその上に築かれた膨大な「病理学」の知識を日常診療活動の中での診断手段の一つとして活用することである.従つて生検により得られた組織片がある程度小さいものが多いという制約はあるにせよ,そこにみられる所見に対して病変の形態的変化に関する知識はすべて利用することができるわけであるから,生検の目的は単に外科的疾患に限らず各科の領域における疾患の診断にとつて大へん重要なものとなつている.種々の内科的肝疾患,腎疾患における肝や腎の針生検が診断及び病態把握に対して如何に重要であるかという点などは広く認識されているところである.ただあらゆる疾患の中で,癌は最も形態学的な疾患であるので,癌に関連する診療活動の中に生検が最もよく利用され,かつ最も重要な役割を果していることは疑いなく,まして後述する(凍結標本による)迅速診断はほとんどそのために行なわれるといつても過言ではない.それ故本稿では癌を中心とする主として外科的疾患に重点を置いて生検の問題点を論ずることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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