icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科32巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

特集 外科と薬剤

抗生物質—抗生物質の選び方

著者: 由良二郎 ,   石川周 ,   高岡哲郎 ,   土井孝司 ,   恵美奈実 ,   鈴木芳太郎 ,   鈴木一也 ,   品川長夫 ,   柴田清人

ページ範囲:P.297 - P.301

はじめに
 外科領域における感染症特に術後感染の変貌には著しいものがある.その起炎菌をみると,弱毒のグラム陰性桿菌であるPseudomonas,Klebsi—ellaをはじめとし,ごく最近ではSerratiaもその分離頻度が増加してきており,それらがさらには多く抗生剤に耐性であることと相俟つて大きな問題となつてきている.この原因の一つとして新しい抗生剤の使用による耐性菌の出現が考えられるが,近年の総合的な医学の進歩により外科手術の対象範囲が拡大され,感染に対する防御能力の低下せる宿主にも手術が施行される場合が多くなつてきたことが最大の原因と考えられる.近年問題となる術後感染をみると,宿主側の因子を検討しないで感染症の治療について論ずることは不可能となつてきている.
 外科領域では特に手術との関連において化学療法がなされる場合が多いが,ここでは外科領域における抗生剤投与について基礎的な考え方を中心にして.手術との関連において宿主側の因子の一つとして血清補体価をもとり上げ,われわれの見解を述べてみたい.

抗生物質—大量投与と濫用の問題

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.303 - P.307

はじめに
 医薬品の生産は年々増加し,その使用が濫用気味であることが指摘されている.
 確かに,一人の患者に10種類以上の薬剤を投与し,保険請求の病名が4つも5つもついている例は決して珍しくはない.

抗生物質—予防的使用の功罪

著者: 加藤繁次

ページ範囲:P.309 - P.313

はじめに
 化学療法剤が,外科的感染症の発症を予防せんとして,多くの施設で投与されているが,化学療法剤の予防的投与は,はたして有効なのかという疑問がある.また一方化学療法剤の投与による耐性菌の出現,それに伴う菌交代現象や,院内感染の問題,副作用の問題などがもち上がり,化学療法剤の濫用を厳に慎しまなければならない時代となつている.

鎮痛・鎮痙・鎮静剤

著者: 長浜遠

ページ範囲:P.315 - P.321

はじめに
 医学の歴史はそのまま疼痛との戦いであり,副作用のない鎮痛剤の開発は人類が如何にしても克服せねばならない宿命的課題であるといえる.とくに手術を治療手段とする外科の歴史は麻酔を含め,疼痛対策の歴史であり重要な問題でもある.麻酔学の進歩により外科学が急速に進歩した事実は明白である.すなわち手術中の患者の苦痛と危険はとり除かれ,現今のごとく胃癌に対する拡大根治手術など手術侵襲の大きい手術が増加しているが,手術後の苦痛の除去に関してはいまだ一定した方法は確立されていないのが現状である.痛みとはどのような現象であろうか,古くから解剖,生理,心理の面からの研究があるが,いまだ未解決の問題が多い.痛みは不愉快な感覚で生体に異常が起これば警告反応として生体に有利なものともなるし,また痛みによつて肺拡張不全,血圧上昇,頻脈,発汗ひいてはショックなどの有害な面も持ち合せている.疼痛の発生に関しては古くから唱えられている特殊伝導説(specificity theory)つまり神経自山終末で感じられたインパルスが脊髄後根から視床に至り,シナップスをつくり脳皮質の感覚域にいき,痛みを感じるという説で,AδおよびC線維が痛みに関与した神経線維で前者は初痛,刺痛として表現され,皮膚に多く分布し局在性が明確であり消失も早い.後者は無髄神経で遅く始まり長く持続し,内臓血管に多く分布し,灼熱痛や内臓痛などを伝えるという.またパターン説(pattern theory)は痛みを伝える特定な神経線維はなく種々の刺激が集まり,脳である強さの刺激パターンをつくると,はじめて痛みとして感じるという説や,1962年にMelzackらの提唱したgate control theory,つまり太い神経線維Aδの刺激はインパルスが脊髄に入るのに抑制的に働き,細いC線維の刺激は促進的に働くという説などがある.何れの説でもすべてを説明出来ない.痛みを感じる神経は温覚をも司るのでその解釈はさらに面倒となるわけである.痛みの原因も圧迫,切断,熱,電気などの物理的刺激のほかに,最近組織に内因する特定の化学物質Hist-amine, Acetylcholine, Serotonin, BradykininおよびSubstance Pその他が条件因子であるとの研究が盛んとなり,疼痛のしくみの本態はもつと明らかになるであろう.このように痛みの仕組みも複雑であるが,部位,環境,精神状態によつても痛みの感じ方は違うであろうし,女性は男性より痛みに対して強いなど,痛みのとらえ方も容易でないわけで,解決すべき多くの問題を含んでいる.外科領域における疼痛対策は手術に関係する疼痛(人工的疼痛)と手術に関係のない疼痛に分けられる.前者のうち手術中の疼痛は麻酔により解決できるので手術後疼痛が主であり,これに骨膜,腱,筋,筋膜,四肢痛,神経痛など手術に関係のない疼痛が問題となる.そこで日常使つている鎮痛・鎮痙・鎮静剤について述べ,さらに手術後疼痛対策の特殊な方法について記述することにする.

血管収縮剤と血管拡張剤—とくにショックの治療を中心として

著者: 早坂滉 ,   前仏郁夫

ページ範囲:P.323 - P.329

はじめに
 血管収縮剤と血管拡張剤という正反対の作用を有する薬剤は両者とも外科領域において頻用されており,その適応も広範囲で多種多様である.したがつて,ここで全てを網羅することは困難であるため,外科領域における最も重篤な疾患,病態であるショックに焦点をあわせ,これら血管作動薬について考察を加えたい.
 ショックという生体のホメオスターシスを一挙に破滅に導く病態が起こると,きわめて複雑な生体反応があらわれ,その治療に困難を感ずることがしばしばみられる.ショックで臨床上もつとも目につく症状は低血圧であるが,単に血圧を昇圧剤で是正しても必ずしも奏効しないことは近年とくに強調されている.むしろ焦点は微少循環系の異常や代謝異常の改善におかれていることは周知のとおりである.しかし,微少循環系異常とくに末梢循環障害による組織の低酸素状態を改善する日的で用いられる血管拡張剤も血流量増加は統計学的に著明に増加しているとはいえず,血管作動薬のみでショックを治療しようとすると血管収縮剤か血管拡張剤かでジレンマにおちいる1).このジレンマは血管作動薬が作用する交感神経支配域,すなわち動脈系(resistant vessels)と静脈系(capacitant vessels)および心での作用機序の総合的結論が得られていないためと,α,β受容体刺激あるいは遮断作用の重複が明瞭でないためである.しかし,4者の重複に対しての一応の目安としては図1のように示されている2)

強心剤と利尿剤—腹部外科と関連させて

著者: 林四郎 ,   小山省三

ページ範囲:P.331 - P.335

はじめに
 手術の安全性を高めるためには正しい手術の適応,適確な手術手技,麻酔の実施とともに,術前から術中,術後にかけてのきめ細かい管理技術の修得が何よりも必要であり,しかも今日のように以前には手術の実施が躊躇されていた老人にも,必要な手術が積極的に行なわれている現状をながめると,poor risk患者に対する術前,術後の管理にも外科医として最大の努力を払わなければならないことはあえて多言を要しないであろう.もちろん手術の実施にあたつて,手術の対象となる臓器病変を除いて,患者の状態が良好であるのにこしたことはないが,緊急手術の場合には図1のような心拡張と鬱血性心不全状態の下でも手術を実施しなければならないし,また待期的手術の場合でもできるだけ早い時期に心・腎不全状態から脱却させるような工夫と努力を外科医にも求められる.もちろんこのような患者の治療には内科医の協力,助言も必要であるが,24時間を通して,ベッドサイドで過ごす外科医も強心剤や利尿剤の進歩,特徴,その使用法に通じていることも大切である.本誌31巻11号に術後の急性機能不全に関する特集がのせられているが,この特集のなかの心不全1)や腎不全2)などの治療にも直接関係深い強心剤と利尿剤について現状を概説したい.

止血剤と抗血栓療法

著者: 村上文夫 ,   大城孟

ページ範囲:P.337 - P.344

手術に伴う止血機構の変化
 外科手術に際し,毛細血管からの出血はいちいち結紮しなくても自然に止つてしまう.これは毛細血管,血小板,血液凝固の3者の機能の協同作用の結果,強固なフィブリン栓子が血管の損傷部位を完全に閉ざしてしまうからである.そして生体内で血液凝固反応が起こる結果,血小板,プロトロンビン,フィブリノゲンなどいくつかの凝固因子が消費せられ,血液中より減少する.虫垂切除程度の比較的軽い手術ではこれらの凝固因子の減少もさほど著明ではないが,乳房切断術や胃切除術程度の手術になると,減少の程度はかなり著しい.但し多くの場合減少は正常範囲内にとどまるが,術中出血量が多くて大量の輸液や保存血輸血を行なつた場合には,希釈の影響が加わるため正常以下の値を示すこともある.またこのような生体内血液凝固という現象に拮抗して,多くの場合線維素溶解(線溶)現象が起こり,血栓の発生を防止するが,通常その程度は止血機構を妨げるほど強いものではない.
 このような変化に引き続き,生体恒常性維持機橘の一環として,消費された血液凝固因子のすみやかな産生が起こる.血小板やフィブリノゲンなどは術後24時間にしてすでに術前値に復し,以後はかえつて術前値を凌駕するにいたる.そのピークは各因子により若下異なるが(おおよそ5〜10日目),凝固因子の増加は術後1〜3週目まで持続し,とくに血小板は数の増加のみならず個々の血小板の機能の増強がこれに伴う.また抗線溶活性の増強やアンチトロンビンIIIの減少などもこれと前後して起こつてくる.すなわち,止血機構は手術後の一時期に血液凝周性亢進hypercoagulabilityを示し,血栓を誘発し易い状態にあるということができ,事実術後血栓症(左腸骨大腿静脈に好発する)のほとんどはこの時期に発生している.

ステロイド—ショック時を中心に

著者: 岡田和夫

ページ範囲:P.345 - P.353

はじめに
 薬効の判定が客観的パラメーターに基づいて比較的容易に行なえる薬剤と必ずしも容易でない薬剤とがある.外科領域でのステロイドの使用はショック治療が中心になるが,移植における免疫反応抑制(immune suppression)や脳外傷などでの脳浮腫対策での効果ほどこのステロイドのショック時の効果の判定は明確に行なえない.
 ショック時にステロイドをどういう効果を期待して投与しているかでいろいろの意見があるが,これは動物実験での成績と臨床成績との間にギャップがあつたのも一因であろう.しかしステロイドを臨床で使用し治療成績が向上したと感じる人が臨床の第一線で増えて来ているのも事実である.これが動物実験のショック・モデルについてのステロイドの作用機序の研究を促進させる誘因にもなり,ひいてはショックの病態生理の研究を循環面から代謝面,免疫面など広い分野に押し拡げた鍵にもなつたと思う.

カラーグラフ 消化管内視鏡シリーズ・20

十二指腸乳頭部癌

著者: 大井至 ,   佐久間隆

ページ範囲:P.294 - P.295

 十二指腸乳頭部癌は,独特な症状を呈することが多く,また手術成績も良好であるため以前から注目を浴びてきた.十二指腸乳頭は膵管と胆管の共通の開口部であり,この部位の癌腫はいわゆる膨大部粘膜だけではなく,乳頭を覆う十二指腸粘膜,膵符上皮,総胆管末端上皮などからも発生すると考えられる.このため,乳頭部癌は,膨大部癌,膨大部領域癌,総胆管末端癌など色々の名称で呼ばれてきた.われわれは内視鏡の立場からこの部位の癌腫を十二指腸乳頭部癌として一括して取扱い,それを内視鏡像の特徴より4型に分類している.
 乳頭部癌の内視鏡的特徴は,乳頭部に限局した腫瘍であるの一言につきる.乳頭自体が腫瘍であり,乳頭の構造は破壊され,潰瘍形成やビランをみる.膵頭部癌とは異なり,乳頭部以外の十二指腸粘膜の伸展が良好であることも特徴的である.

追悼

大槻菊男先生

著者: 木本誠二 ,   石川浩一 ,   林田健男

ページ範囲:P.355 - P.359

大槻先生の思い出  慈父に接する心地
 謹んで大槻菊男先生の御逝去をお悼み申上げます.私は先生の直系の門下生ではありませんので,外科については学生時代を除いて直接教えを受けたことはありませんが,教室なり私個人のことなどでは何かと先生の御教導を頂きました.その意味で私にとつてはやはり大槻先生は私の師であり,直系の塩田,都築,福田三先生亡きあと,今また最後の師と仰ぐ大槻先生が亡くなられたことは,言い知れぬ寂しさが身に迫るのであります.
 先生は青山徹蔵先生の後任として東大分院の助教授から転任され,たまたま塩田先生の後任となられて間もない都築先生と並んで,大槻・都築両外科の時代が長く続きました.弁説爽やかですべての面で華麗な都築先生に対し,大槻先生の誠に穏やかでじみなお人柄は正に対照的でした.戦後都築先生がパージで退職されてから暫くの間,第二外科の教室は大槻先生と助教授であつた私とで講座分担を命ぜられ,その間何彼と御指示を頂きました.まだ40歳にもならない若い私に,大教室を纒めることは容易でなく,福田先生が着任されるまでの間を何とか無事に切抜けられたのも,陰に陽に力添えを頂いた大槻先生のお蔭だと思つております.

外科教育を考える・3

—対談—外科卒後教育—トレーニングを受けた立場から

著者: 木村壮介 ,   坂本昌義

ページ範囲:P.361 - P.370

 大学病院にその多くを依存せざるを得ない我が国外科卒後教育の現況下にあつていわゆる米国のレジデント制に慣つて独自のプログラムを有し実績をあげているいくつかの市中病院がある.また社会的ニードとしての医師養成と,それに呼応する新設医科大学の誕生などで,数年先の現勢図も大きく塗り変えられようとしている.
 日本の外科医の将来像を考えるにあたり,弊誌では,市井にあり着実にその歩みを始めているそれら病院群の1つ,三井記念病院の外科卒後研修の在り方と,その依拠するところを"外科教育を考える"として2回に亘り掲載してきた.このレポートに対し多くの反響が寄せられ外科のみならず医学全領域が,この問題に対する関心と期待を隠さない.

講座

ハリ麻酔—⑪ハリ麻酔の理論的背景

著者: 神山守人

ページ範囲:P.371 - P.372

 ハリ麻酔に関する学説は大きくわけて4つに区別できる.
 その1つは古来の経絡説であり,もう1つは神経生理学的な考え方,および体液説に基づくもの,さらにもう1つは精神心理学的なメカニズムとしての解説である.

臨床研究

完全静注栄養法とその合併症

著者: 藤田忠義 ,   松本義信 ,   太田威彦

ページ範囲:P.373 - P.377

はじめに
 完全静注栄養法(complete intravenous feeding)の適応が拡大されるにつれて,その合併症も無視できない問題である.数年前より経中心静脈高カロリー輸液法(hyper-almentätion)における手技,管理面に基因する合併症の報告が散見され,すでに成書にも紹介されているが,完全静注栄養法の治療をうけた患者が疾病の治癒後に完全静注栄養法の影響と考えられる疾病,すなわち,合併症に罹患したという報告はあまり見当たらない.著者らは過去数年間,主に末梢静脈より完全静注栄養法を行なつているが,過去5年間に219例の完全静注栄養法を施行し,そのうち41症例に経中心静脈高カロリー輸液法を1971〜1976年にかけて本邦およびスウェーデンの施設において行ない,経中心静脈高カロリー輸液法施行後に代謝異常をきたしたと思われる症例を観察した,著者らは完全静注栄養法の合併症という問題に注目し,症例を改めて出来るだけ詳細に検索した結果,機能上の合併症というものを数例経験したので紹介する.

外傷性血管損傷の検討

著者: 浅井康文 ,   須田義雄 ,   高橋延勝 ,   前仏郁夫 ,   小松作蔵 ,   和田寿郎

ページ範囲:P.379 - P.384

はじめに
 交通機関の急激な発達とともに,外傷事故は増加の一途を辿つている.
 二次病院の性格をもつ当科でも,多重外傷が増加し,治療も複雑化している1)

急性虫垂炎のX線診断—144例の検討

著者: 多田信平 ,   新谷陽一郎 ,   木野雅夫 ,   南条光夫 ,   原田潤太 ,   兼平千裕 ,   関谷透 ,   久保田進 ,   高山誠 ,   阿武泉 ,   黒田敏道 ,   河井啓三 ,   中村紀夫 ,   山口金吾

ページ範囲:P.385 - P.389

はじめに
 急性腹症の原因には各種炎症,臓器の破裂および閉塞,血行障害などがあるが,そのうち炎症,特に急性虫垂炎の占める位置は大きく,綿貫18)によると急性虫垂炎は救急外来を訪れる腹部急性疾患の過半数を占めるという.
 急性虫垂炎のX線診断については種々の所見が記載され,多くの報告がなされている.もとより急性腹症においては緊急手術の必要の有無を決定する外科医の豊富な経験が要求されるわけであるが8),それにはX線診断領域からの寄与も必要と思われる.一般には急性虫垂炎においては,その所見の非特異性,臨床診断の容易さもあつて,腹部単純撮影は軽視されがちである.今回144例の急性虫垂炎症例のX線検査をreviewする機会を得たので,各所見の出現率と特異性を考慮した有所見率を分析し考察を加えた.

高カロリー輸液による細菌感染の管理

著者: 真島吉也 ,   樋口道雄 ,   宮司勝 ,   永野耕士 ,   伊藤健次郎 ,   小越章平 ,   桜庭康悦 ,   坪井秀一 ,   碓井貞仁 ,   竹内英世 ,   武藤護彦 ,   川村宏 ,   原輝彦 ,   平島毅 ,   佐藤博 ,   小林章男

ページ範囲:P.393 - P.398

はじめに
 経中心静脈高カロリー輸液が日常,外科治療の一環としての確固たる地位をしめつっある現状であるが,本法がさらに安全に施行されるためには長期間カテーテル留置にまつわる細菌感染の問題が解決されなければならない.高カロリー輸液時の細菌感染症発生率は,施設により大きな差が見られるが1-4,14),この差はおそらく管理体制の違い,すなわち,輸液の調整,カテーテル管理,ミリポア・メンブラン・フィルターの使用の有無,およびスタッフの経験の差などによるところが大であろう.千葉大学附属病院では1971年来,Dudrick らの方法に準拠した高カロリー輸液16)が行なわれて来たが,主としてこの任にあたつた第1および第2外科では,それぞれ独自の管理体制のもとに本法を施行し,1975年5月初めにそれぞれ250例および173例に達した.この間の細菌感染症発生例は少ないが,今回それぞれの教室で行なわれた高カロリー輸液時の細菌感染に関する研究成績をまとめる機会を得たので報告する.

臨床報告

原発性アルドステロン症の2例

著者: 岡田昭紀 ,   林淳治 ,   村瀬恭一 ,   広瀬光男 ,   稲田潔 ,   鎌倉充夫

ページ範囲:P.399 - P.403

はじめに
 二次性高血圧症として外科的治療の対象となるものには大動脈縮窄症,腎動脈狭窄症などの血管疾患が主であるが,特異なものとして内分泌性のものがある.われわれは内分泌学的検査が容易になつた今日でも,なお比較的まれな原発性アルドステロン症に起因する高血圧症例2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

胆嚢の良性隆起性病変について

著者: 瀬藤晃一 ,   植松清 ,   五百蔵昭夫 ,   藤田茂夫 ,   西尾幸男 ,   杉原順一 ,   羽田淳一 ,   宮村忍

ページ範囲:P.405 - P.409

はじめに
 胆嚢の良性腫瘍は比較的稀なものであるが,最近われわれは腺腫による胆嚢ポリープの1例を経験した.また,相前後して胆嚢にポリープ様の隆起性病変を認め,肉眼的に胆嚢癌を疑ったが,組織学的検索の結果,炎症性ポリープ様病変であった2症例を経験したので,胆嚢の隆起性病変について考察を加えて報告したい.

内視鏡的拡張術による術後食道空腸吻合部狭窄の2治験例

著者: 田村仁信 ,   長田功 ,   尾形正方 ,   金杉和男 ,   萩原優 ,   山田洋介 ,   得平卓彦 ,   渡辺弘 ,   草刈幸次

ページ範囲:P.411 - P.413

はじめに
 消化管手術後の吻合部狭窄は外科医にとつて最も難渋する術後合併症の1つであり,その治療も簡単ではない.特に胃全摘後の食道空腸吻合部狭窄に対する治療としては,従来ブジーによる拡張術や種々の再手術等が行なわれてきた.
 このたびわれわれは内視鏡をもちいて,直視下に狭窄部に自家製バルーンを安全確実に挿入する方法を考案し,2例の胃全摘後の食道空腸吻合部狭窄の拡張に予期した以上の結果をえたので報告する.

妊娠に合併した絞扼性横隔膜ヘルニアの1例

著者: 佐野彰 ,   富田良照 ,   名知光博 ,   村瀬恭一 ,   広瀬光男

ページ範囲:P.415 - P.419

はじめに
 近年交通災害をはじめとする災害外傷の増加に伴い,外傷性横隔膜ヘルニアの報告が多くみられる.これらのうちには慢性に経過し,受傷後十数年の無症状期を経て発症するものもあり,またなかには外傷の既往がなく,怒責等を誘因として突然発症するものもみられる.最近われわれは妊娠に合併した外傷歴のない左横隔膜弓隆部の絞扼性ヘルニアの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?