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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻3号

1977年03月発行

文献概要

特集 外科と薬剤

血管収縮剤と血管拡張剤—とくにショックの治療を中心として

著者: 早坂滉1 前仏郁夫1

所属機関: 1札幌医科大学第1外科

ページ範囲:P.323 - P.329

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はじめに
 血管収縮剤と血管拡張剤という正反対の作用を有する薬剤は両者とも外科領域において頻用されており,その適応も広範囲で多種多様である.したがつて,ここで全てを網羅することは困難であるため,外科領域における最も重篤な疾患,病態であるショックに焦点をあわせ,これら血管作動薬について考察を加えたい.
 ショックという生体のホメオスターシスを一挙に破滅に導く病態が起こると,きわめて複雑な生体反応があらわれ,その治療に困難を感ずることがしばしばみられる.ショックで臨床上もつとも目につく症状は低血圧であるが,単に血圧を昇圧剤で是正しても必ずしも奏効しないことは近年とくに強調されている.むしろ焦点は微少循環系の異常や代謝異常の改善におかれていることは周知のとおりである.しかし,微少循環系異常とくに末梢循環障害による組織の低酸素状態を改善する日的で用いられる血管拡張剤も血流量増加は統計学的に著明に増加しているとはいえず,血管作動薬のみでショックを治療しようとすると血管収縮剤か血管拡張剤かでジレンマにおちいる1).このジレンマは血管作動薬が作用する交感神経支配域,すなわち動脈系(resistant vessels)と静脈系(capacitant vessels)および心での作用機序の総合的結論が得られていないためと,α,β受容体刺激あるいは遮断作用の重複が明瞭でないためである.しかし,4者の重複に対しての一応の目安としては図1のように示されている2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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