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特集 非癌性乳腺疾患の外科
乳腺葉状嚢胞肉腫
著者: 深見敦夫1 今田敏夫1 坂元吾偉2
所属機関: 1癌研究会付属病院外科 2癌研究会付属病院研究所病理
ページ範囲:P.575 - P.581
文献購入ページに移動この疾患はJohannes Müller (1838)によつてはじめてcystosarcoma phyllodesの名称で報告された.肉腫の概念は,悪性を意味して通常使用されているため,誤解と混乱を招くが,Müllerは巨大な腫瘍といつた意味で使用したもので,良性の経過をとるものと考えていた.現在までに本症に対し50を越える多くの名称が与えられており,その中には,本腫瘍の概念により適切と思われるものも多いが,著者等は,慣用されている葉状?胞肉腫,悪性のものは悪性葉状嚢胞肉腫の名称を用うることとする.この疾患の概念,発生,組織学的特徴,治療法など,未だ解明されない部分も多い.その大きな原因の1つは,本症が比較的稀で,遭遇する機会の少ないことと関係がある.とくに本邦における報告例は少ない.しかし,Müller以来140年を経過し,次第にその知見も増加し,概念も変化をとげて来ている.Lee and Pack(1931)16)は自験の6例を加えた111例について報告し,その中に組織学的に悪性とみられる症例を記載した.この1例は本症に悪性例のあるという最初の報告であつた.その後White (1940)32)は,対側乳房,前縦隔と肺へ転移した症例を報告した.Kessinger (1972)14)は,自験例1例を含めて,66例の転移性の本症を英文文献で集計し,本症の悪性例についての知見の増加に貢献している.本腫瘍の診断は,現在組織学的所見からなされるが,とくに良性と悪性の鑑別は,治療方針を立てる上からも重要な問題である.しかし,Treves andSunderland (1951)30),Lester and Stout (1954)17),Norris and Taylor (1967)23)等によつて指摘されているが,この腫瘍の組織学的な悪性所見と転移を起こす生物学的な悪性度との問のくい違いは,なお最終的な結論を得ていない.
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