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臨床報告
陳旧性消化管損傷に対する自家遊離腹膜パッチの効果—実験成績と臨床1治験例
著者: 八板朗1 中村輝久1 夏田康則1 上尾裕昭1 杉町圭蔵1 井口潔1
所属機関: 1九州大学医学部第2外科
ページ範囲:P.919 - P.923
文献購入ページに移動交通外傷による腹部損傷は,非開放性で実質臓器の損傷が多いのが特徴であり,なかでもハンドル損傷では,十二指腸,膵などの後腹膜臓器の受傷が多いといわれる.かかる場合の十二指腸後壁破裂の診断はなかなか困難なことが多く,しかも24時間以内に診断して手術しなければ予後不良といわれている.
最近われわれは,ハンドル損傷による十二指腸後壁破裂と中結腸動脈根部の破綻によつて感染性の後腹膜血腫があつたにもかかわらず,2週間近く確定診断がつかないまま姑息療法に終始し,当科にて緊急手術により救命しえた1例を経験した.十二指腸破裂は術後縫合不全の危険性が高く,その対策として損傷部の補強と十二指腸内腔の減圧が要求される.われわれは数年来,食道再建時,食道胃吻合部の縫合不全防止に,吻合部の周りに自家遊離腹膜片を縫着する腹膜パッチ法1,2)を考案,約50例で効果を認めているので,この症例に対しても本法を適用したところ陳旧創にもかかわらず無事治癒させることができた.消化管の汚染陳旧創に対しても腹膜パッチが有効かどうかということは実地臨床上興味深いことと思われるので,若干の実験的検討を加えて報告する.
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