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文献詳細

雑誌文献

臨床外科32巻8号

1977年08月発行

文献概要

特集 上部消化管大量出血

上部消化管出血の非観血的止血法

著者: 竹本忠良1 榊信広1

所属機関: 1山口大学医学部第1内科

ページ範囲:P.1005 - P.1011

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はじめに
 突如としてはじまる上部消化管からの大量出血に対して,いまのところ非観血的療法は無効のことがしばしばで,頼りになるものではないが,さりとて外科的治療といえども完全に満足できるものはない.と最初から書きはじめると,あるいは消化器外科医からなにを生意気なとお叱りをうけるかもしれない.しかし,上部消化管大量出血例においては全身状態不良で,心,肺,腎などに慢性疾患があつたり,あるいは重症糖尿病に罹患していたりする高年者であることが決して少なくない.また最近急速に関心がたかまつている急性胃・十二指腸潰瘍(ストレス潰瘍)では上部消化管大量出血で発症する以前に火傷とか中枢神経系のひどい外傷をうけているものもしばしばあるわけである.ややふるい文献であるが,Hallら1),Fosterら2),Kirtleyら3)によれば,ストレス潰瘍の30〜95%という高い入院死亡率が,現在の外科治療が決して満足できるものでないことを端的に物語つている4).大量出血を起こしたストレス潰瘍を早期に積極的に手術するという傾向もみられるが,はたしてそれがもつとも良い治療法なのかどうか明々白々な成績はないようである.Menguyら5)のように,衰弱した多発性のストレス胃潰瘍患者に全摘に近い手術を行なつて,再出血例がなく,死亡率も20%であるという報告もあるが,この数字は低すぎるという批判もある4).迷切+幽門形成術では死亡率はもつと低いが,15%あるいはそれ以上に再出血があるという4). このような理由で上部消化管出血を遅くさせたりストップさせる非外科的な方法が多年にわたつていろいろ試みられてきた.安全で効果的な非観血的止血法はとくにpoor surgical risk患者に必要である.胃冷却法にはじまり,最近では消化管内視鏡および血管造影法の発達によつて,上部消化管の大量出血の診断と治療の両面において可能性を拡大しつつある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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