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特集 逆流性食道炎
術後逆流性食道炎とその対策—姑息的治療法の限界と外科的治療
著者: 石川義信1 福島松郎1 加固紀夫1 角田秀雄1 川口忠彦1 福田昌1
所属機関: 1弘前大学医学部第1外科
ページ範囲:P.1113 - P.1119
文献購入ページに移動術後逆流性食道炎は噴門における食道への逆流防止機構が手術的操作によつて障害され,胃・腸内容液が食道に逆流することが原因で生ずる一種の医原性疾患である.術後長期にわたる頑固な胸やけ,胸骨後の疼痛,狭窄感,胃腸液の逆流等を主症状とし,強度の食事摂取不良から悪液質に陥ることもある.その防止策に関して,手術術式の改良,工夫,対症療法等には著者1-4)らを含め,多種の研究があり,それなりの成果は上がつているが,一方において,術前術後管理等の進歩により,一般外科施設でも,食道,噴門,全胃癌等の切除術が広く行なわれるようになり,手術成績も向上し,長期生存例が得られるようになつた結果,この併発症例も少なくない.
紙面の関係上,全編を掲載するのは省略するが,1965年より1976年までの12年間に逆流性食道炎に関する研究論文,学会抄録等を著者らが渉猟し得た範囲内では,本邦で58編,欧米で39編あつた.これを前期(1965〜1968年),中期(1969〜1972年),後期(1973〜1976年)に分けて報告内容を検討すると,本邦では前期13編,中期26編,後期19編で大差なく,欧米でも同様である.ただ本邦においては術後逆流性食道炎の研究が殆んどであるのに対し,欧米では食道裂孔ヘルニアに起因するものが圧倒的に多いのが特徴的である.研究内容は両者共,手術術式に関するものが40%前後で最も多い.これを逆にみれば,逆流性食道炎の手術術式が多方面から研究,工夫されているにも拘わらず,未だ特定の術式が確立されていないことを物語ることにもなる.下部食道,噴門切除および胃全摘術後の再建術式や食道裂孔ヘルニアの外科治療の多様性を考えれば当然のことかもしれない(表1).逆流性食道炎に対する対症療法や外科的治療に関する報告は多くないが,ここでは編集者から与えられたテーマである術後逆流性食道炎に対する対症療法の治療限界と外科的治療について述べる.
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